第29話 古代語
俺が声を掛けたのが余程驚いたのか、全員固まっている。
そもそも手紙を置いてあったんだ。
俺が居るってわかっているはずなんだが。
注:ティモの後を追っていたパーティーは、今までティモと遭遇しないようにしていたので、まさか本人が翌日まだこの場にいるとは思ってもいない。
注2:女性だけのパーティーメンバーはティモに助けられたが、その時に受けた治療方法を思い出し、助けてもらった事に関しては感謝しているが、方法が方法だっただけに今更ながら大いに恥ずかしく思っていた。
「なあ、折角新たな食材や調理器具をかばんに入れていたのに誰も調理をしないのか?」
俺はもう一度声を掛けた。
「ひゃ、ひゃい!た、ただいまひたひまひゅ!」
・・・・何言ってんのか分からない。
俺はどうかしてしまったのだろうか?
「しょ、少々お待ちを・・・・いえ、全力で調べます!」
何か知らんが皆慌てだしたぞ。
それなりに時間はあったはず。
だが手紙を見て固まっている女性がいるな。
サポートがメインの女性だろうか。
きっと地上では魔法メインの戦い方をするタイプだ。
手紙を手にし、こっちにやってくるようだ。
「その、貴殿はティモという名だと聞きましたが、今後はティモ殿と呼んでも?」
「ああ、別に何でもいいさ。それより折角手紙に色々書いたんだが、どうして何もしていないんだ?」
すると相手は微妙な顔をした。
「その、私共は大変無知なものですからこの字を読み解く事、全員叶いませんでした。」
「ええ?こんな簡単な文字、誰でも読み書きできるはずだが。俺なんて子供の頃には読み書きぐらいできたぞ?」
「その、ごめんなさい!私達には古代語は無理でした。」
古代語?何言ってんだよこんなの普通の字じゃねえか。
注:この時ティモは前世の記憶が自身にある事を失念しており、この世界で一般的に利用されている文字と違い、日本語で記載してしまっていたのだが未だ気付いていない。
俺が知的そうに見える女性・・・・知性を感じる雰囲気なんだな・・・・と話していると、やってきましたえっと名前はなんだったっけ?
《レナーテですよ。》
そうだった。
こういう時椿の存在は有り難い。
《それとマスター、前世の記憶を取り戻していますが、今その記憶とティモとして活動した記憶が混ざり、知識も妙な事になっているようですね。例えば字です。マスターが書いた字ですが、この世界で古代語と呼ばれていますね。》
「え?普通の日本語じゃないか!」
「わあ!そのごめんなさい!何か気の障る事が?」
しまった!椿に返答するつもりがこの場には人が居たんだった!
今まで椿と意思疎通を図る時、周囲に俺と桜以外は居なかったから声を出しても問題なかったんだった!
「あ、ああその済まない。俺にはサポートしてくれる存在がいてな。脳内に語り掛けてくれるんだが、こうして声を出して返答すると俺自身が分かり易くてな。それと少し確認したいのだが、俺の書いた字は古代語と呼ばれているのか?」
「は、はい。はるか昔に高度な文明がこの世界に干渉し、その時に居合わせた人々に文字を教えたそうですが、その時教えられた文字は古代語と言われているのですわ。」
よくわからんが、昔から別の世界と接触する機会があったのだろうか。
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