第16話 ついに遭遇してしまった

 本日も安定のコンテナハウスを寝床として睡眠。

 勿論いつもの如く温泉を設置し、利用したのは言うまでもない。

 更に毎度の事ながら食べきれない食事を作っておくのも忘れない。


 で、翌朝?俺達は出発した。

 暫く進むと分岐があった。

 桜は何も言わないし、椿の指摘もないから適当に進んでいく。

 何かあればアドバイスなりあるはずだ。

 つまりこの分岐路はどっちへ向かっても結果的には問題ないはず。


 この間にも魔物が数体出現したが、大抵桜が先に気付くので俺が直接襲われる事はない。

 そして椿がどの魔法を使えばいいか指示を出してくれる。

 今回は何故か土の塊を飛ばせ、との事だった。

 これは一応複合魔法になる。

 土属性の魔法で握りこぶし程度の塊を作り出し、風属性の魔法で遠くに運ぶ。

 まあ俺が投げてそれを風魔法、ウィンドでより遠方へ運んでいるだけなんだがな。

 だが結果は満足だ。

 暫く進むと必ずドロップアイテムが床に落ちているからだ。

 最近は面倒なので拾って直ぐ、ストレージに入れている。

 何か特別なアイテムであれば椿あたりが指摘してくれるだろう。

 まあそんな感じで過ごすのが、最近の俺達にとっては日常なのだが遂に変化が訪れた。


 本日も何度目か忘れたが分岐を過ぎ、そろそろ下の階層へ向かう階段が見えてきそうだなあと思っていた時だ。

 つまり最後の分岐がある場所に辿り着こうとしていた時、前方から金属がぶつかり合うような音が微かに聞こえてきた気がしたんだ。

「マスター、何か音がする!」

《前方から戦闘音を確認。》

 桜と椿も気が付いたようだ。


 戦闘音・・・・つまり何かが戦っているって事だ。

 今までダンジョンでは魔物同士が戦っている場面に遭遇した事が無い。

 という事は魔物じゃない何かと魔物が戦っているって事だ。

 まさか俺達を付けていた奴等が先回りしてこうなった?

「まさかとは思うが俺達の後ろから尾行していた奴等じゃないのか?」

 俺はどっちにでもいいように聞いてみた。

「違うよマスター!今温泉中だよ、あの人達。」

 温泉中だった。

《ダンジョン攻略中のパーティーで間違いないでしょう。》

 そう言えば攻略中のパーティーがいるって聞いていたけれど、今ここを攻略中なのか。

 それとも引き返している最中なのだろうか。

 あーしかしこのままだと遭遇してしまうなあ。

 だが様子が変だ。

 叫び声に悲鳴が聞こえ、つまり冒険者側が不利な状況に感じた。

「あまりお勧めしないけれど、助けてあげたら?」

「助けるって桜、戦闘中の得物を横取りするのはご法度なんだぞ?」

 手柄やアイテムを横取りしやがって!とか後で言われ恨まれるのは勘弁願いたい。

「マスター避けて!」

《何かが飛んできています!》

 俺の前方から何かがこちらに飛んでくるのが見えた。

 咄嗟に避けようとしたが慌ててしまい盛大に転倒してしまった。

 だが結果的にはこれが幸いし、何とか避けられたようだ。

 いや、避けられてはいないな。

 俺の背中にそれがぶつかったからだ。

 だが転倒していなければもっと大変な事態になっていたに違いない。


「いてえ!何が飛んできたんだ?」

 見ると盾だった。

 そして盾を持ち上げようとしたら、何かがぶら下がっていた。

 肘から先だったが、盾を掴んだままの手だった。


 ・・・・どういう事だ?

 そして滴り落ちる血。

 俺は目の前が真っ暗になるのを感じた。

「危ないマスター!」

 さっきは助けてくれなかったが、俺が再び倒れるのを桜は防いでくれた。

 そのまま桜に抱き着いた。

「いやんマスター、誰かに見られちゃうよ?」


 カピバラに抱き着いている所を見られても、困る事はにはならないと思うんだが。

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