第2話 主人公の生い立ちと日常 その2
さて、冒険者になりたての頃はまだそうでもなかったが、今の俺は武器を持って戦うのは困難を極める。
ついでに言えば魔法も低レベルの、つまり低威力しか扱えないので、魔物や魔獣・・・・まあどっちでもいいが・・・・と戦ってもまず勝てない。
当然ながらダンジョンなんて無理だ。
ダンジョン内は基本魔法が使えない。
例外は魔剣をはじめとする魔力を帯びた武器や、魔道具と魔石を触媒とした魔法だ。
これも制約があり、ダンジョンで扱える、例えば魔剣と呼ばれる魔力を帯びた武器はダンジョンで得られたものしか使えない。
魔道具もそうだ。
そして魔法はダンジョンで倒した魔物からドロップした魔石を経由して使うしかない。
回復手段はこうした魔石を用いた回復魔法と持ち込んだ薬草を含めたポーションの類、そしてダンジョンで得た回復機能のある魔道具ぐらいだ。
だがこれも大量には持ち込めない。
魔道具もいつかは壊れるし、ポーションは嵩張る。
冒険者はダンジョンの奥を攻略する時は徒党を組んで挑む、これが基本だ。
メインのパーティーと荷物を運搬するサポート役が複数。
これでも1ヶ月程度しか物資が持たないらしい。
それ以上の荷物を運搬するのは物理的に厳しいからだ。
食べ物も腐る上に、火や水も有限だ。
火は燃料の問題がある。
薪を持ち込むか魔石だが、魔石にも限りがある。
当然ながら俺みたいなのとパーティーを組む物好きは皆無だ。
で、俺はどうしているかって言うとポーションを作るのに必要な薬草を採取したり、時にはダンジョン入り口付近の岩場でよく見かける苔を採取したりする。
苔は採取時に特殊な容器へ密閉し、使う時に取り出せば暫く光ってくれる。
因みにダンジョン周辺は基本魔物や魔獣は出ない。
正確には魔物は出るが、他の冒険者が冒険者ギルドからの依頼で徹底的に駆除しているから出ないんだ。
そして俺達が住んでいる街とダンジョンの間には草原が広がっているが・・・・まあ徒歩で2時間程度という距離なんだが・・・・やはり冒険者が周囲に出現する魔物を駆除しているので、俺のようにまともに戦えない連中も安心して採取できるんだ。
・・・・
・・・
・・
・
その日はやってきた。
俺は冒険者ギルドでヒカリ苔が不足気味という情報を得、本日の採取はダンジョン付近で、と決め絶賛採取中だったりする。
そして数時間後、そろそろ街へ戻る時間になったので採取を終え、帰路につこうと歩き出したのだが、戻るにはダンジョンの出入り口付近を通る必要があり、俺はダンジョン出入口の前に来た。
その時運悪く、ダンジョンに挑んだはいいが思ったような結果が得られず荒れている冒険者に出くわしてしまった。
まあ知っている奴なんだが兎に角気性が荒い。
そしてすぐに手を出してくる。
俺はなるべく気付かれないように歩いていたんだが、目についてしまったようだ。
「おいそこのデブ野郎!」
俺は無視しようとしたが・・・・そいつは俺の想像以上に素早く近づいてきたので、避ける事も出来ず捕まってしまった。
「な、なんすか?」
「今無視しただろう!ブタのくせに!」
うわ、いつも以上に荒れているなあ。
「い、いえ、無視なんて・・・・」
「ガ―――――――!ブタのくせに人の言葉を喋んな!」
因みに俺はダンジョンに入る予定は無かったので、魔力を遮断するアイテムは身につけていない。
殆ど魔力経路が閉じてしまっている俺だが、そんな俺でも微量の魔力を帯びている。
当然ながらダンジョンの入り口にこのまま向かえば悲惨な目に遭う。
だがこいつは俺を躊躇なくダンジョンの入り口に突き飛ばしやがった!
もうね、俺160センチで体重は80キロだけどね、相手は190センチはあるし100キロは優に超えている巨漢だ。
筋骨隆々たる人物で、俺なんかあっという間に吹き飛ばされたね。
当然ながら俺はダンジョン入り口の視えない壁に激突、その瞬間体中に激痛が走って・・・・前にも一度経験した事があるが・・・・とても耐えられるような痛みじゃない!
俺はすぐさま入り口から離れようとしたが、その時背後に何かがぶつかった。
そう、あいつが俺目掛けて何かをぶつけてきやがったんだ!
そのせいで俺は再び壁に激突。
見えない壁による衝撃と、背中に当たった何かの痛みで身体が動かない!
うわ!皮膚が焼けている!煙まで・・・・このまま死ぬのか俺?
俺氏大ピンチ!因みに俺氏の背中には何かが押し付けられており、それをやっているのは魔法で、だ。
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