かっこいいとカワイイ
天良みーや
第1話 かっこいい女の子は噂の…?
「あ、
放課後、私は1人学校の玄関から出ようとしていた。
この子は1年生の子で、たまにお菓子を作っては私に渡してくる。毎回顔を真っ赤にして渡してくるもので、可愛らしいななんて思いながら受け取っていた。
「あぁ、ありがとう。また大事に食べておくよ。お礼と言っちゃなんだけど、ちょっとスマホ貸してくれない?」
「……? どうぞ」
私はスマホを取ると女の子の肩をぐっと引き寄せカメラのシャッターボタンを押す。
「はい、ありがとう」
「……!」
1年生にスマホを返すとその子は興奮した様子でスマホの画面を見つめていた。
「じゃあね、またお菓子作ってくれたら嬉しいな」
「はい! また作ってきます! 今日より沢山!」
私はその場を離れて帰路に着く。
……あの子、いつもお菓子を作ってくれるけど前に恋愛感情は無いって言ってたな。あそこまで顔を赤くされると私が勘違いしてしまうだろう。
この前話しているのを聞いてしまったけど、私は「推し」らしい。こんなにも推し活に忠実なのはいいことだ。
「あ、あやちゃん!! 一緒に帰ろ!」
「えー
なにやら後ろが騒がしい。……だいたい予想はつくけど。
「まぁまぁみんな落ち着いて? ね。仲良くみんなで帰ろ?」
あの子は
姫咲さんの人気は私と同じくらいだろう。いや、それ以上か。
「さて、早く家に帰ろう」
今日は出かけなきゃ行けない。
◆◆◆
「ただいまー!」
「あーおかえり
この人は姉の
「そう、てか見て! またお菓子もらった〜」
「え、また? いいな分けろ〜」
「言われなくてもあげるって、とりあえず今は出かける為の準備してくる〜」
「へいへーい、いってら〜」
私は駆け足で階段をのぼった。部屋に着くと鏡の前に座ってメイク道具を持ってくる。
メイクをして、髪を巻く。かわいい服を着て……よし、今日はこれで出かけよう!
そう、私天谷美咲は学校ではかっこいい女子を演じているだけで可愛いものが大好き! かっこいいのを演じているのはあの子、姫咲さんとキャラが被らないようにするため……。
でもこの時だけは好きなものを全身に身にまとって生活できるから幸せだ。この格好で街を歩いたり買い物したりするのが好き。
「さて、行くか!」
◆◆◆
放課後に来るといつも日が落ちかけだ。でもこれがまた空がきれいで好き。
「ねぇお姉さん」
女の人の声がした。
「良かったら一緒にカフェ行かない?」
振り向くとそこにはショート髪のかっこいい女の人がいた。これはナンパ……と言えるのだろうか。
でもちょっと……タイプかもしれない、この人。
「……あの、」
「もうそろそろ日落ちそうだからこんなところに一人でいちゃダメだよ〜ほらほら、着いてきて?」
「え、そんな申し訳ない……」
「いいからいいから、奢ったげる。おいで」
そう言うとお姉さんは私の腕を掴んでカフェまで連れていった。
このお姉さん、かっこいいけど強引すぎる。
◆◆◆
「それで、何の用ですか……?」
「まず連絡先、交換しよ?」
明らかに手順がおかしいだろう。
怪しいと思いつつも何故か信用できるような気がして私はスマホを取りだした。
「あ、いいんだ。やさし〜。はい、QRコード見せて」
私はQRコードの画面を開くとお姉さんに見せる。
『ヒメサキさんと友達になりました』
……ヒメサキ。姫咲……。いや、違うか。見た目全然違うし、あったとしても家族の誰かかもしれない。
「……え、え、まって美咲って……。ね、ねぇ学校どこ通ってるの?」
「白沢……」
それを聞いて明らかに動揺している。
もしかして、この人……
「姫咲彩夏……!?」
「天谷美咲……!?」
2人ともハッキリしたのか口を揃えてお互いの名前を叫んだ。急に大声を出したことにびっくりした他のお客さんたちの視線が痛い。
「あ、ごめんなさい……」
私は周りの人に謝りながらお辞儀をする。
「……まさか、あなたが天谷さんだったなんて……。どうしたの? その格好」
「こっちのセリフだよ……。姫咲さんこんなかっこいいなんて、ちょっと意外……」
「そっちもね、天谷さんがこんなにかわいい女の子だったなんてびっくり」
そんなこと言われたら照れる。かっこいいも嬉しいけど、可愛いって言われるのは何倍も嬉しい。
「ていうか姫咲さん、キャラ違うよね……?」
「……あーー、まぁ、なんて言うか……演技だし。天谷さんも演技でしょ?」
「そう、だけど……」
「学校での天谷さんはかっこいい系女子って感じだけど、今の天谷さんは大人しめな性格してていいね。人見知り?」
「学校ではなんとか頑張ってるけど、一応……」
なんか素の姫咲さんは強引な感じがする。あのほわほわとした学校での印象とは大違いだ。学校一かわいい女の子が、こんなかっこいい女の人に……。凄いな。やっぱりタイプかもしれない。
「んー? さっき私の事タイプかもって思ったでしょ」
「え、なんで……」
「あ、鎌かけたら引っかかった。そっか〜、あのイケメン女子だった天谷さんは私みたいなのがタイプなんだぁ……」
姫咲さんはニヤニヤとした表情で私を見てくる。ほんとにあの姫咲さんなんだろうか。キャラが違いすぎて疑えてきた。
「逆に、姫咲さんは私のことがタイプだと思ったから声掛けたんじゃないの?」
「痛いとこ突くな〜、まぁ否定は出来ないんだけど。正直めっちゃタイプだった。可愛すぎてこんな子が世界にいたのか……! ってレベル」
「そんなに……!?」
どうやら私は姫咲さんのどつぼにハマったらしい。
「ねぇ天谷さん、私たち付き合ってみない?」
なにを言い出すのかと思えばとんでもない発言に私は「え……!?」と声を上げる。
またもや大声を出してしまって周りにペコペコと頭を下げた。
「ど、どういうこと……?」
「どうもこうもないよ、付き合うの。恋人同士になるってこと。私一目惚れしたの初めてでこんなに好きになったのも初めてなの。……お願い」
「〜〜っ、確かに私も姫咲さんのことは好きだけど……」
「じゃあ決まりね! 付き合お!」
「え、えっ、え!?」
やっぱりこの人強引すぎるよ……。
「お会計しにいこ。帰らないでね」
◆◆◆
「はぁ〜暗いね〜。もう暗いし私ん家泊まる?」
「え?」
「本気にさせちゃった? じょーだんじょーだん」
姫咲さんの言うことすることが突拍子もないことばかりで頭が追いつかない。ほんとに振り回されてばかりだ……。
「明日学校だしね。代わりに明日一緒に登校しよ?」
「……うん、分かった」
「じゃあ付き合った記念のツーショ撮らせて」
姫咲さんは私の肩を抱き寄せてにっこり笑うとシャッターのボタンを押す。撮れた、と思って離れようとすると今度は姫咲さんに抱きしめられたと思った瞬間、唇に柔らかいものが触れ、それと同時にカメラの音がした。
「ありがと、後で送っとく。じゃあね〜」
私は大きく手を振る姫咲さんをぼーっと見つめながら唇に触れたものの正体に気づく。体が熱くなるのを全身で感じながら顔を赤くしているとスマホの通知がなる。姫咲さんからだ。
そこには2人カメラ目線で写る写真ともうひとつ……姫咲さんと私がキスをしている写真があった。
「調子狂う……何これ……」
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