袴とスカートの距離は ~和装男子に恋する男子。ライバル同士の剣道男子~
木下望太郎
第1話 袴(はかま)とスカート
とはいえ、すでによく履いてはいる。一日に二時間やそこらは。何なら今も履いている、僕らは。
たとえ肩車して
武道場にはもう、他に誰もいなかった、隣の畳敷きのスペースにいた柔道部も先に帰っていた。居残り練習につき合ってくれた、彼と僕だけがいた。その練習も終えて片づけるところだ、防具は二人とも外している。
木製の格子の向こうにある窓、蛍光灯の光を反射するガラスの向こうに見える景色は、すでに黒一色。宇宙のように隔絶された黒。
彼は踏み込んだ先で足を継ぎ、足を継ぎ。やがて
それからもう片方の手で、黒髪の荒く波打つ頭をかく。
彼は竹刀を肩にかつぐ。片手で、ばさ、と音を立て、
「まあ普段着は無理にしてもよ。やっぱり
僕もまたうなずき、眺めた。彼のつまみ上げた
いつも何かに挑んでいるような鋭い目つきは、今だけは緩められ。手にした
「うん。いいよね。美しいよね」
僕は彼を――
それからその場でくるくると回り、自らの
彼の履く
僕自身が履く
動きにつれて、ふわり、となびくその装束は、
まるで、
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