追放されたら破滅する運命の悪役キャラだけど、主役の勇者パーティーからいきなり追放された件~破滅フラグ回避のために奮闘したらヒロインたちにも溺愛され勇者とまで崇められたので、ついでに世界も救います~

我那覇アキラ

第一章 いきなり追放

第一話 追放まであとわずかの男、旅立つ


「おい、レイヴァンス。てめぇがいると、俺たちまで変な目で見られるじゃねえか。さっさと出て行けよ!」


 のちに勇者となるであろう光の皇子が、俺に向かって怒鳴りつける。


 おかしい、そんなわけない。

 光の皇子は心優しい青年だったはずだ。人を生まれや属性なんかで差別するようなやつじゃない。


 それがこんな……出会ってまだ一時間も経っていないのに。

 俺のことを良く分かりもしないまま、いきなり追放してくるなんて。


 追放はまずい、まずいんだ。

 勇者パーティーから追放されたら、破滅フラグが立ってしまう。


 困惑と焦りが、恐怖へとすり替わっていく。


 そんな俺に、薄笑みを浮かべながら光の皇子が近づいてくる。

 そして顔を近づけてくると、信じられないようなことを耳打ちしてきた。



 * * *



 前世では、いじめられっこだった。


 転生する直前の俺は高校生で、毎日毎日しつこい嫌がらせや暴力を受けていた。

 そんな俺でも、ゲームをやっているときは嫌なことを忘れられた。


 だけど大好きなゲームにも、嫌な記憶が残っている。

 友達に勧められたのがきっかけで購入したゲームソフトを、いじめっこたちに取り上げられたことだ。

 クリアしたあとだったのが、不幸中の幸いとも言える。


 しかしそれも束の間、不幸中の不幸が俺を襲う。

 ゲームを取られて数日後、俺は交通事故で死んでしまったのだ。


 そして俺は、異世界へと転生していた。


 しかも転生したのは、自分のよく知るゲームの中だったのだ。もっともそのことに気づいたのは、この世界に生まれ落ちて四年も経ってからだったんだけど。


 そのゲームこそが死ぬ直前にクリアし、いじめっこたちに奪われてしまったソフト「エピックファンタジア」だ。


 俺はモーティス家に、レイヴァンスという名を与えられてこの世界に生を受けた。

 レイヴァンス・モーティスといえばゲームのシナリオだと、勇者パーティー初期メンバーの一人である。

 しかし勇者の仲間であると同時に、邪悪の象徴ともされている闇属性の使い手でもあった。


 人間のために魔族と戦っているにも関わらず、闇属性というだけの理由で民から忌み嫌われ、恐れられる。そんなことが続き、嫌気がさして勇者たちの前から去っていってしまうのだ。


 しかもそのあと魔族の四天王となって、勇者たちの前に立ちふさがることになる。

 さらに裏ルートではメインルートのラスボスである邪神をも取り込み、最強の裏ボスになってしまう。そんな隠しイベントまで存在した。


 レイヴァンスはまさに、ゲーム中屈指の闇落ち破滅キャラなのだ。


 しかし裏を返せば、強さにおける才能は作中でもトップクラス。

 その才能を活かすことが出来れば、この世界で幸せになれるかもしれない。俺はそう考えた。


 本来なら勇者たちとの冒険が始まる時点では、パーティーメンバー全員がレベル1の状態からスタートする。

 だが、もしも最初から高レベルで冒険をスタートできれば、悪評さえも跳ね返せるような活躍だってできるはずだ。

 そうすればきっと、民衆からも認めてもらえる。

 そんな日が来るかもしれないよな。


 人生を逆転させるためにも、とにかく強くなろう。

 そう決意して幼少から必死に魔法を覚え、剣の腕を磨いてきた。


 そうして十六歳になり、ついに運命の日はやってきた。


 ゲーム冒頭での最初のイベント、勇者の試練への招待状が、聖王都の王族から届いたのだ。

 勇者の試練というのは、とある洞窟内の台座に刺さっている勇者の剣を引き抜くという、かなりありがちなやつ。

 剣は持ち主を選ぶとされ、選ばれた者にしか抜けない、というわけだ。


 試練を受ける資格を得たのは聖王都の第一皇子と、古より王都の王族に仕えてきた三つの名家の跡取り。

 その仕えていた名家の一つがモーティス家であり、跡取りがこの俺、レイヴァンス・モーティスである。


 とはいえ結局のところ、光属性を持つ王族の跡取り息子が真の勇者に選ばれることになるんだけどね。

 それはゲームのストーリーとして決まっていることだから仕方ないとして、大事なのはそのあとだ。


 まずは周囲からの冷たい視線があったとしても、勇者パーティーから抜けないこと。そして最後まで、彼らと冒険を共にすること。

 これが何においても最優先。


 俺にとっての本当の試練は、闇落ちルートの回避なのだ。

 人生逆転を心に誓いつつ、俺は聖王都の城へと旅立った。

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