第19話 ゴーゴー・ウェスト!

 今日は仕事(会社)が休みだったため、リトルカブでプチツーリング(2回目)にチャレンジした。


 行き先は、当初全く何も決めていなかった。東に行けば山の高台、西へ行けば古本屋といったスタート地点に住んでいたため、どちらへ進むかは気分次第――ということで、どうせ行くなら少しぐらい目的があった方が良いかと思い、古本屋を目指して西へ進むことにした。西遊記ではないが「ゴーゴー・ウェスト!」である。


 少し前までは結構きつかった日差しが、すっかり秋のそれに変わっていた。田んぼのあぜのあちらこちらに咲くヒガンバナの赤を眺めながら、のんびりと田舎道を走る。ヒガンバナリコリスと言えば、昨年放映されていたアニメが面白かったなぁ。2期の放映が決定していたけれども、一体いつになるんだろうか。


 平日だったこともあり、休日に比べると車の通行量は少なかった。それでも原付であるためスピードが出せず、後ろから追い抜いていく車を気にしながらの走行。これは結構気を遣う、原付の辛いところだ。


 30分ほど走った辺りで、とある分岐路に突き当たった。片方を進めば当初の目的地である古本屋へ、もう片方へと進めば、とある道の駅へと向かう。


 ここで気分が変わり、目的地を道の駅へと変更した。その道の駅は時々バイクや車のミーティングに使われる、これまで車では何度も行ったことがある場所だった。古本と他人のバイクを天秤にかけ、どちらを見たいかと考えた結果、後者に天秤が傾いたわけだ。


 山間さんかんを走るため、やはり上り坂はリトルカブにとって荷が重い。というか、僕の体重が重い。2速ギアでエンジンを唸らせながらゆっくりと進むリトルカブ。少々ストレスを感じなくはないが、これでも自転車で同じ坂を上るよりははるかに楽なのだから文句は言えない。


 家を出てから約1時間弱で、目的の道の駅に到着した。平日だったため台数は少なかったが、それでも結構な数のバイクが駐車場に止まっている。半分以上は大型二輪で、原付のバイクは僕のリトルカブのみ。まるで場違いだったが、気にしたら負けだ。


 自動販売機でコーラを買い、他人様のバイクを眺めながら一息つく。そしてコーラを飲み終えると、再びリトルカブへとまたがって家路へ――我ながら、一体ここへ何をしに来たのだか。


 とは言え、来たからには帰らなければならず、道の駅そのものにはこれといって用事もなかった。そしてこの行動パターンから、自分はバイクでの旅を楽しむタイプではなく、バイクの運転そのものを楽しむタイプなのだろうと再確認した。


 そういった意味では、やはり僕にとってはアメリカンやツアラーなどのタイプよりも、ネイキッドやレーサーレプリカ、モタードのようなタイプのバイクが性に合っているのかも知れない。そして、住んでいる場所が田舎の山の中なので、わざわざ遠出をしなくても、近所の峠道を走っているぐらいでちょうど良いのかも。今後のリトルカブとの付き合い方の参考にしよう。


 また、道中では道の水はけを良くするための「グルービング工法」が施された道を走ったが、ここをバイクで走るのはめちゃくちゃ危ないと思った。というのも、このグルービング工法、要は道に縦溝を掘ってあるのだが、この上をバイクで走ると前後のタイヤのグリップが安定せず、それぞれのタイヤが左右にぶれる。


 車で走っている時には全く気にもならなかったものが、バイクで走っている時にはこんなにも危険なものだとは思わなかった。山間部の道の陰になる部分など、雪が降ったら凍結しやすいような場所に多い道だが、僕がバイクに求める「本質」と合わせて、また一つ新しいことをリトルカブから教わった。


 これからどんな新しいことを教わるのか、また少しリトルカブへの期待が高まった。

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