ここではないどこかで「食べて、祈って、恋をして」(前編)

 さて、しょうもない老害(とは思いたくないけど!)の過去話も終わったところで、改めて始めていきましょう。読んでくれた方も、4回分飛ばしてこられたみなさんも、どうもです。

 このエッセイではいくつかの提案やアイデア、なんとなくのワークショップ的なものをしながら、最終的に自力で小説を書き上げるところまで持っていきたいと考えています。


 さて、みなさんは一人暮らしを始めたときのあの気持ちを覚えていますか? 新しい生活が始まるわくわく、未知の世界に対する恐れ、そして、なんだかやっぱ戻りたいな〜と後ろ髪引かれる感じ。お母さんがまるでこの世の別れみたいに泣いたに日は!

 いや、うちの親はどっちかといえば「早よでてけ」って感じでしたけど。まあ、いいか。


 新しい環境、新しい出来事、突然起こった事件、明るみになってしまった真実、いつも変わらないと思っていたら、ドラマが起きてしまった。そう、物語って、自発的でも、そんな目に遭遇なんてしたくなかろうとも、起きてしまったなにかからスタートし、終結へと向かうことになります。

 なので、最初から事件発生! だろうと、じわじわとなにかが……なんて流れであろうと、とにかく最初に「起」となるもの、あるいは「起」が起こった事情から始まるものです。


 異世界転生しちゃった!→からのサバイバル!

 いきたくもないところに嫁入りした!→からの溺愛!(すごい)

 なんだか知らんけどメンバーとして集められた!→からのデスゲーム


 ということです。わかりやすく言えば。まあ上記の新しい出来事(「日常」から足を踏み出してしまった)の主人公、僕が読んだ限り、わりと楽にその状況を受け入れるんですけど。正直そこが納得いかない部分でもあるのですが。ジャンル的に屈託は邪魔なんでしょう。あるいはあれよあれよと悩む暇がない。←これはかなりいいと思います。

 正直世界観をくどくど並べられると、読む気がちょっと失せますので、あくまで事件のなかで語られていくのがいいと思います。趣味の問題かもしれません。

 べつに謎は謎のまま、わかんないものはわかるまで置いておいてもいいような。

 いまの読者は初期設定をインプットしてから楽しむというか、RPGのチュートリアル的なものが必要なのかもしれません。あまり僕は書きませんけど、たまに読むと非常にいろいろ考えさせられて、頭を動かすのにいいです。

 その書き込んだ設定、本当に全部物語のなかで回収できる&使いこなせるのだろうか……とちょっとゾクゾクするものもあるし。尾田栄一郎とかなら活かせるんだろうけど……。


 平田オリザさんの『演劇入門』(講談社現代新書)は、読めば戯曲が書けちゃう! くらいに素晴らしい本(僕含め何人もそんな人がいます)なのですが、

『ロミオとジュリエット』は二人が死んだところが事件なのではなく、二人が出会ってしまったところが最大の事件だ。

 というようなことを書かれていました。

 そうです、出会ってさえいなけりゃ、あんなすったもんだの大騒ぎ、なんて起こらなかったのですから。死者はだすわ自分たちも死ぬわ。ローティーンの恋の情熱(しかも短期間!)はすごいですね。

 ラストに見せ場、を設けるためにはと策を練るけれど、実は冒頭の事件の発生こそが、重要なのです。

 マーベル作品でよくある、最初の事件がまさか後半、別の大きな事件が明るみになる、みたいな展開も、やはり最初でドキドキしなくては、最後まで人は観ないでしょう。あれはもうキャラがきちんとできているからファンは観るより他ない、というのもありますが。僕もなんやかや観ているし。

 DCの課題はバットマンとスーパーマン以外をどう扱うかだよな〜。

 横道に今日は逸れ続けていますね。なんとなく本題に触れにくい部分があるのかも。


 さて、主人公は大小関係なく、最初に事件があります。それは「移動」でも「出会い」でも構いません。犬を拾った、とか、いつもはガン無視しているのに、電車で立っていたお年寄りに席を譲ったとか(いつもしましょう)。

 あなたの人生と同じように、さまざまな新しい局面に立つのです。歳をとるとなかなかないですけど、若い頃なんて毎日なにか事件が起きていたような気がします。

 それは、初めてのことがたくさんあって、新鮮だったからなのでしょう(このへんに青春もののヒントがあったりなかったり)。

 その事件に遭遇したことで、主人公は「ものの見方」や気持ちが変わるかもしれません。そう、「環境」が「自身の変化」も起こすのです。

 実家に暮らしていた自分と一人暮らしの自分がちょっと違うみたいに。帰ってみると、かつて暮らした場所が実はちょっと変かも、と思えてきたり。

 その感覚、実は小説を書く上でヒントになるのです!



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