この世で最も恥ずかしいことは自分語り3
まさか受かるとは。大変助かったのは試験科目は創作と評論で(英語がなくてよかった!)、結果の通知を見てみると、ぎりぎり創作のほうで受かっていました。
というわけで、新天地、京都で四年過ごすことになりました。
しかしですね、同級生全員年下ってやつです。まあ、僕の精神年齢は彼らよりずっと低かったので、「年食ってるくせに全然ダメな人」ポジションで楽しく暮らせました。下級生なんて僕のこと、大嫌いだったと思います。陰口叩かれまくってたし! そもそも芸大では合評ってのがあるんですけど、そこでずけずけ文句言ってましたしね、人の作品を。あの頃僕は本当に若かった。いまは言いませんもん、よっぽどのことがない限り。
ハリー・ポッターの「名前を言ってはいけないあの方」扱いされてましたね。スリザリン呼ばわりされてたし。
ほぼ学校以外はアルバイトをしていて、かなりきつかった。よくあんな生活できたなあ、と今思うと呆れます。
授業は楽しかったです。大人になってからの学ぶと、ありがたみもわかるものですから。そして、僕は、「小説業界に就職するため」に入ったつもりでした。コネを作るって意味でなく。とにかく、自分の書く文章を、人に伝わるようにする。そのために、課題だ読書だとやっていました。
だいたいの高校からすぐに大学にやってきたみんなは、芸大の文芸コースに入った、で満足して、「作家になったら云々」と夢を語ってはいたけれど、まともに課題以外で書こうとはしなかった。
そんなもんかもしれないけれど、もったいないなあ、と思っていました。
一回生の授業で、「古今東西の名作100冊を読み、感想文を書く」という必修がありました。
単位をもらうためには最低60冊は読まなくてはならない。みんな嫌だ嫌だとごねて逃げて、卒業間近になっても単位がとれないやつもいましたけど、僕は面白かったですね。ナボコフとかドストエフスキーなんて、これがなかったら読まなかったろうし、逆に読めたことに感動しましたし。
なんとなく入ったサークル的な活動も、学びがありました。京都のカルチャーイベントを紹介するサイト運営だったのですが、そこではプレビュー記事を書くことになりました。240文字で、どんなイベントか伝えるというものです。
このエッセイみたいにだらだら書いてもいいのなら、いくらでもできるでしょうが、少ない文字で、どう内容を配置するか、編集長である編集の授業を受け持っていた小崎先生に、アカを入れてもらいました。
「言葉を重複させない」
「その情報は盛り込まなくていい、削る(イベント名や出演者、場所などは別であるので)」
などなど。四年間続けました。
とくに、文章がねじれている、というのはとにかくよく叱られました。
「ここは文章を一つにする」
「内容が別、文を分ける」
うーむ。直に編集者から文章作法を教わっていたんだな、考えてみると。インタビューをして、そのままだらだら文字にするのでなく、どう編集するか。好きなアーティストにインタビューしてもいい、ということで、当時舞台芸術学科で戯曲の授業をされていた松田正隆先生にインタビューすることもできました。演劇をやっていたとき、憧れていたので!
さて、二回生のとき、文學界の新人賞に応募したのですが、初めての投稿で予選を突破したときは、本屋で震えました。
「あ、予選突破したってことは、いちおう僕の小説は、人が読んでも通じるものなんだ」と思いました。
こりゃもしかして! なんて甘いことを考えたんですが、そこからずっと、予選突破はするものの、なかなか先にはいけない、が続くのですが。
三回生では創作のゼミを取り、そこでも「主語と述語!」と提出するたびにゼミ教官に叱られ続けました。
「こんなしょうもないもの書いちゃだめだろ!」と原稿をばさ〜っと机に放り投げられたこともあったなあ。しかし、そういうことを求めている&基本少年漫画のマインドの人間なので、なにくそとやっていました。
同じゼミにいた子が「あのときキタハラは先生に酷評されながら、歯を食いしばって睨みつけながら『はい』と頷いていた」と卒業後に言われました。
反抗しても意味はない、この目の前のゼミ教官を驚かせてやることこそが、この戦い(じゃないし!)に勝つこと、と思っていたのでしょう。
僕よりも才能があり、教官に絶賛されていた人はいたけれど、卒業してからなにもやっていない。
創作っていうのは、続けることが一番大事なのかもしれません。(続く)
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