ずる賢い創作術
キタハラ
はじめに、あなたの小説は他人が読むものです。
世の中にはたくさんの小説の書き方の本があり、ということは、世の中にはたくさん小説を書きたい人もいる。もしかして、読みたい人よりも多いのかもしれない。
いまはカクヨムなどでいくらでも自作を発表できる。リワードでお金を稼ぐこともできるし、出版している作家よりも儲けている人もたくさんいるでしょう。
でもやはり、みんな小説を出版したい。デビューしたい。たしかに、一冊でも出していたら、「小説家です」と胸を張って言える。周りの人々が驚く顔が見たい。見返してやりたい、自分がそんな才能がある、と自慢したい人なんてたくさんいる。
「いえいえ、わたしは自分の書いた面白い作品をみんなに読んでもらいたいのです」
素晴らしいと思います。であるなら、どうしたらいいのでしょうか?
まず考えてみたいのは、なんのために書くか、です。
自分のため。
もちろん結構。
誰かを見返してやりたい
うんうん、あるよね。
趣味で
いいと思います。
友達に文章上手いから小説家になれるって言われた
いいお友達を持ちました。
書かなくちゃ死んじゃう
嘘でしょ(笑)。でもそのくらいの気持ちはあってもいいね。
以上の例はあくまで「自分」のために書いている。初めはだいたいの人がそこからスタートします。思い当たりませんか。もちろんそれでいいです。金儲けしたい、大いに結構。山本一力さんも小説を書いて借金を返済しようとしたらしいし、しかもできたらしいし。
最初は自分、でも、最終的に、読むのは他人だということだけは覚えておいたほうがいいかもしれません。
つまり、他人のために書かれた、あるいは他人が面白いと思えるものを書かなくてはいけない。自分の好きなものを書き殴ったとしても、頭の隅っこに置いておいた方がいい。
他人のため、まずすべきことは、文章の質をあげることです。きちんと読者が理解できる・イメージできるように書いたほうがいい。わからなかったとしても、なんとなく気になるもの、読まずにいられない文章を書けばいい。書籍になったものはまずそこをクリアしています。
なにも考えずにできてしまう人もいれば、修練を積まなければいけない人もいる。そして書き続けるということはずっと意識的でいなくてはならない。
まずは単行本一冊分、十万文字を、書き上げるだけでなく、ブラッシュアップさせないといけない。その能力を養い続けなくてはならない。
よくネットで「自分のために書きました」と宣言して発表されたものがたくさんあります。二次創作で、推しやカップルへの愛を書いた、とかね。あるいは青春の衝動とか怒りとか絶望をぶちまけました、とか。
他人のために書いてはいないと宣言している。でも、読まれるものと読まれないものがある。
その差は、他人が共感できる何か普遍的なものがあるかないか、なのかもしれません。人の心を動かすっていうのは大変なことです。
ただ闇雲に書いても、他人は読んでくれません。そもそもウェブで読んでくれるって、しかもいいねがたくさんついて、広がっていく、というのは奇跡です。編集者の目に留まる、というのもかなり低い確率です。これもほぼ奇跡です。「拾い上げ」がたくさんあるように錯覚してますが、カクヨムの膨大な登録者のうち、年に数名しかいない。
「あの人はそうだった」
たしかに。でも、あの人とあなたは違います。
いろいろなサイトに載せてみて、「ここはPVがとれる」「ここはだめ」などあるかもしれません。
そんな戦略を練るのも楽しい。でも、いまはそれ以前の話をしています。そしてそれが一番重要なことに思います。
僕は十年くらい小説家志望だったんですが、その間、さんざんいろんな噂話やうまくやる方法、業界のゴシップを収集してきました。当たり前でしょう。だって小説家になりたいんだもん。自ずと目や耳に入ってくるし、無意識にアンテナを立てていたのです。
だいたい嘘ですけど。
なのでネットで「うまい話」を聞いたとしても信じないほうがいいです。むしろネット見ない方が健康的です。
小説の書き方も、起承転結とか序破急とかハリウッドの脚本術に神話がどうこう、とさまざま読んできました。実際見よう見まねでやったりしました。それはわりと効果もあったと思います。
そして、自分の小説の弱点はどこだろう、プロの人と何が違うのだろうと考えてきました。ヒントを求めるために大学に入学したし、小説講座を受けたりもしました。いろんなやりかたがある。
自分にフィットするやり方が見つかれば、最高です。でも、なかなか見つからない。他人のやり方はあくまで他人に合ったものだからです。
僕は2023年夏の時点で4冊の本(文庫化合わせると5冊)出しました。その程度の新人気分の小説家です。あとからデビューした人がどんどん出しているというのに筆が遅くて大変恥ずかしく思っています。
そんな人間が、これから小説の書き方を書こうとしている。かなり乱暴です。そんなことより新作を書いたり、プロットを担当に提出したほうがいいに決まっています。
でもよくわからない人、何者かわからない人がああだこうだと書いては時折SNSで話題になるので、まあ許されるのではないか。小説執筆の合間に軽く。
これから綴っていくやり方は、僕に合ったやり方です。だからあなたには合わないかもしれない。なので軽い気持ちで、「ふーん」なんて読み飛ばしていただくだけの軽い読み物として捉えてください。
大まかに、雑談的なもの、具体的に簡単に小説を「作る」方法、いまから書こうとしている人への提案をこれから書いていきます。
以前、あるところで、創作の授業を受け持ったことがあります。そこで伝えてきたことを、改めて、書いておこうと思います。そして、実際に自分がやっていることでもあります。
真似てみてもうまくいく保証はありません。こんなんじゃ書けないよ、と呆れたのなら、忘れてください。結局小説は、自分の踊り方でやるしかないのです。
でも、少しだけ頭がすっきりしてくれたなら、それ以上の喜びはありません。
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