強欲平民による、凶悪な原作書き換え劇〜原作の物語よ、そこをどけ。ボクの物語が通る〜
エンジェルん@底辺作家
第1章強欲平民と姉さんと魔法
第1話平民になった
「お前みたいな出来損ないはここで死ね」
父親はそう冷たく告げると、突然ボクを馬から投げ飛ばした。
ボクは投げ飛ばされた勢いで山道を転げ落ちていき、大きな倒木に背中を強打したところで転がるのをやめた。
「テオ、お前はルーズ家の者にも関わらず剣術がからっきしできない。我が家の恥だ」
父親の、息子に向けるものとは到底思えない冷めた声が森に響き渡る。
「それに比べお前の弟ルーラントは剣術の才能が素晴らしい。幼少期のこの私よりも優れている。だから家督はルーラントに継がせる」
......なるほど、だからボクに死ねと。獰猛な魔物が巣食うこの森で。
ボクが住んでいる国、アーノルド皇国では、家督は長男が継ぐことになっている。ボクと弟のルーラントは1つ違い。ボクらは幼少の頃から一緒に剣術をやっているが、ボクがルーラントに勝てたことは一度もない。単純にボクには少しも剣術の才がなくて、逆にルーラントには天賦の才があったからだ。
まあ、そりゃルーラントに継がせたくなるわな。
ボクは別に悔しそうにも悲しそうにもしない。なんならボクの中にあるのは、むしろ歓喜だ。
クククッ、テオ・ルーズという男爵家長男は死んだ。
ボクは平民になったんだ!
遂に自由を手にしたんだ!
ボクは去って行く元父親の後ろ姿を見ながら、喜びに打ちしがれる。
ボクには生まれた時から前世の記憶があった。前世のボクは病弱で人生のほとんどを病室で過ごしてきた。そんな人生は当然不自由極まりないものだった。だからこそ、今世では心の底から自由を求めていたのだ。
「いてて......流石に少しは痛みを感じるか。だけど身体強化の効果は十分に試せたな」
ボクは満足しながらゆっくりと立ち上がる。
そして服中にまとわりつく落ち葉を払った。
「さてと、これからどうするか......」
右手を顎に添えて今後のことを考える。
「折角魔力が膨大にあるんだからどうにか魔法を習得したいところだな」
ボクはまだ属性魔法が習得できると信じている。
「とりあえずは、人がいる場所にまで行くとしよう......」
ボクはとりあえず適当に歩き出す。
途中魔物に出会ったら身体強化を使って全力で逃げる。今はまだ属性魔法が使えんからしゃーないしゃーない。
まあ、いつかは魔法で蹴散らすつもりだけど......。
そんな調子で進んで行くと
「なんだこれ?」
めちゃくそボロボロな廃墟を見つけた。見るからにあいつが出そうな建物だ。
......マジでやめてくれよ。
だけど2階の割れた窓からわずかに本棚が見える。もしかしたらそこに魔法書があるかもしれない。だって森の中のぼろっちぃ家。魔女が住んでたと考えるのが筋だろ?
......行くしかないよな?
ボクは冷や汗を流しながらおそるおそるドアを開ける。
「あいつがいませんように。あいつがいませんように――うおーーー!!!」
ボクの願いは通じんかった。......クソッ。
何がいたかって?
あいつに決まってるだろ。人類共通の敵、家の床を這いつくばる黒い奴が。
今ボクが開けた途端にささっと効果音が出るくらいはいた。
......ここは地獄か?
「入りたくねぇよ。でも......魔法書がありそうな気がするんだよな。違ったら放火しよう」
ボクは何やら物騒なことを言いながら入っていく。
家の中は暗いし、臭いし、蜘蛛の巣だらけ。まあ、死人がいたとしてもきっと奴らが平らげてる筈だ。
だから臆することはない......奴ら以外には。
ボクは真っ直ぐ階段を目指す。
時折足元で何かがささっと動いている気がするがガン無視だ。
......暗くてよかった。
2階に辿り着くと外から見えた例の部屋へと歩みを進める。
その部屋の目の前まで来て、大きく深呼吸する。
「すー、はー、すー、はー。よし行くか」
緊張しながらドアノブを回す。
奴の効果音だけはやめてくれてと切に願う。
ガチャリ
ささっ!
「......帰りたい」
案の定奴の効果音が鳴り響く。だけど、ここまで来たんだ。
「さっさと魔法書取って、放火してやろう」
いつの間にか放火は決定事項になっている。
「えっと、アーノルド皇国の歴史。地理。薬草図鑑。魔物図鑑。どれも違うんだよな......」
結局ここにはないのかと残念に思い、放火のために本棚の本を全て1つの場所にまとめる。すると本棚の奥に見つけた。
「うおーーーあったぞ!!!」
ボクは感極まって大声を上げる。そしてすぐさま読みたくて2階の窓から飛び降りる。
あっ、もちろん放火は忘れてない。
クククッ、奴らよ、燃え尽きろ。
ボクは燃える家を正面にして近くの切り株に腰を下ろす。そしてゆっくと魔法書の表紙をめくり始める。
「えっと、『これは世界にたった1つしかない転移魔法の魔法書である。あなたの冒険の助けになるだろう』......なんかやけにアイテム感のある語り口調だな......」
しかし、転移魔法か......便利そうでいいな!
ボクはさらにペラペラとページをめくっていく。
「!?」
ボクのページをめくるスピードはどんどん速くなっていく。そして遂には魔法書を閉じた。
「え!? 全部白紙だったんけど......っ!」
ボクはただただ呆然とする。
「......っこれだけで習得できたの?」
そう。これだけで転移魔法を習得できてしまったのだ。魔力の感覚で習得できたことがわかる。魔力の通り道が増えた感覚がしっかりとあるのだ。
「クククッ、やっぱりボクの予想は正しそうだな。早速皇都まで転移してみよう。きっとあそこなら魔道具や魔法書が山ほどある。ボクの予想を確信に変えられる」
ボクはこれからのことを考えると楽しみで自然と笑顔になった。
しかし同時にその笑顔はどこか狂気じみたようにも見えた。
少年テオは今までずっと不自由な人生を歩んできた。そして今日ついに本当の自由を手に入れたのだ。
そんな少年が作る物語は誰よりも強欲な物語。
例えこの世界がとあるゲーム世界であったとしても、全ては少年の強欲によって書き換えられるだろう。
後に起こる大戦で皇国の英雄はこんな言葉を残した。
「原作の物語よ、そこをどけ。ボクの物語が通る」
―――――――――――――――――――――
あとがき(今日だけはしっかり読んでほしいです)
こんにちは、エンジェルんです。
異世界ファンタジーを書くのは初めてです。
今作は
前世で自由に生きられなかった少年テオが強欲に生きる物語です。
その強欲さは本来死ぬ運命だった人々を救い、原作物語をぶっ壊していきます。
テオがどのくらい強欲だって?
さっきあったでしょ?
原作の物語よ、そこをどけ。ボクの物語が通る
もちろん
主人公も
ヒロインも
黒幕も
ラスボスも
テオが全員ぶっ潰します。
ただしこれだけは先に言っておきます。
第1章は導入であり、闘いシーンは少なめです。無双はちょっと待って下さい。すみません。
今作の裏テーマ
『家族愛』
これを丁寧に描きたいので話しはゆっくり進みます。そのことをどうかご了承ください。
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