平等で不平等な死神
@rakuraru
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薄暗くどんよりとした雨雲が空を覆う中、アルシェはひたすら震える身体を片腕で握り締める。
味方陣地から砲声が鳴るたびに体がビクッと震え、並んでいる兵士たちは皆暗い顔をしている。
「着剣!」
他の兵士たちの着ている軍服とは違い、少し高級そうな士官服を身に纏った男の指示に従うべく腰に下げた短剣を銃口の下に着ける。中には手が震え短剣を落とす者も居る。
懐中時計で時間を確認していた士官服の男が懐中時計をしまい、細く短い銀色のホイッスルと拳銃を取り出す。
嗚呼、いよいよ始まるんせすね。
やはりこの瞬間はいつまで経っても慣れることができません。
手が震え始めたため、銃を落とさないようにぎゅっと握りしめる。
「おい、そんな震えるなよ。安心しろ。俺がついている」
そんなアルシェに話しかけるのはヨハン。
この戦場で唯一の友人であり一番大切な……。
「わ、分かっています! あなたに言われるまでもありません! 私はただ……」
「安心しろ。お前は俺の背中についていけばいい」
そう言いながらヨハンはアルシェのヘルメットを撫でる。
「……」
「お、そろそろ始まるな。それじゃあお互い生き残ろうぜ!」
「……はい。この地獄から共に……」
そんな会話を突撃前にしたのを覚えています。
アルシェは荒れた戦場を死んだような目で見ながら、1人呆然と立ち尽くす。
戦闘の音はもうしない。本当に戦争は終わったのだ。両国はついに戦争という行為を諦めたのだ。
その日、四年の年月をかけて戦争はようやく終わりを迎えたのだった。
「一体なんのための戦争だったんですか……」
アルシェの言葉だけがポツリと戦場に残された。
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