第5話  こんなん出ました。

「さてと、午後も穴掘り頑張るぞ〜」

 俺は堀田岳男、穴を掘ること以外に取り柄のない男だ。


 ここ掘れワンワン犬のプリンちゃんが、ここにすんごいお宝が眠っていると言っているという言葉を信じて、昨日から掘り続けている。


「えっさ! こらさ! ほったれ、ほったれ!」


 掘っているうちに中央の石が邪魔に感じる。


(邪魔やから折ったてもいいやろ……)


 俺はついに中央の大石をぶったたいた。


 ガッキン! ガッキン!


(意外と硬いがヒビは入ったで! もう一丁や!)


 ガッキン! ポロポロ……


(おんや?)

 石の中から何かがのぞいている。


 俺は近寄ってまじまじと見てみることに……


(なんやコレ? 中に何か入っていることは間違いない。壊さんように取り出さなあかんて!)


「メアリーアンちゃーん!」

 俺はメアリーアンちゃんを大声で呼んだ。


「石の中になんかありそうなんやけど〜、取り出すのになんや良い道具はないでしょうか〜?」


 メアリーアンがひょこっと穴を覗き込む。


「この石……剥がしたいんやけど……」


「のみと槌でいいですか?」


「うん、そんな感じの奴が良いかも?」


 メアリーアンちゃーんがのみと槌を放ってよこす。

 俺は受け取らずに地面に落ちてからひろった。

(直接受け取ろうとしたら刺さるがな。)


 俺はのみと槌を使って、コンコンしながらお宝から石を剥がしていった。


(なんやコレ? 剣?)


 古くてあまり綺麗でない剣の柄の部分が姿を現した。


(宝石か何かで装飾でもされていれば高そうなのにね?)


 俺はお宝をまじまじと見つめる。


(どう見ても宝石はついていないね……)


 ぐるりと裏も確認。飾りっ気のない剣やで。


(鞘の方についてるかも? 付いてれば良いなあ)


 俺は剣の入った石をもっと掘り起こしついている石を少しずつ剥がしていく。

(結構面倒やでこれが)


 ボロい剣でもせっかく出てきたと思うと大切に掘り出してしまう。

(もしかしたら良いものかもしれんやないかい!)


 夕方までかかってやとボロっちい剣を掘り出した。


「お宝ってこれでいいのかなあ?」


 どう見ても価値が高そうに見えないおんぼろの剣をメアリーアンちゃんに渡して返事を待った。プリンちゃんが凄い宝だというのにこんなボロい剣で合っているのか?


「うーーん? これかしら?」


 メアリーアンちゃんも首を捻っている。


(違ったらもっと深くまで掘らねばならないのかも? まあ掘っても良いけどね、明日までは休みだし)


 メアリーアンちゃんが見つけたボロ剣をプリンちゃんに見せる。


 尻尾をぐるぐる回したプリンちゃんがメアリーアンの周りを回ってワンワンと吠える。

(どうやらこれで良いのかも?)


「タケオさん。プリンちゃんが言うにはこれが目的のお宝みたいです。きっと良いものに違いないので大事にしまっておきましょう。」


(やった、これで今週のお宝探しは終了じゃね?やな?)

俺はとりあえず喜んだ。もっとスンゴイお宝が出てくるのを期待していたので少し当ては外れたが、プリンちゃんの言う事だからそれで良いのだ。


(やっぱり、プリンちゃんってこんなもんだろう。剣が出てきただけ凄いよ。ほんと。何も出てこないで延々と掘り進めることを思えば上出来だ)


 あたりもそろそろ日が落ちそうだしトットと帰り支度を始めようと思ったら周りから変な奴らが近づいてくる。


(うーーーーん? アレってゴブリン?)


(ゴブリンは弱い魔物と言われているがオッチャン戦闘経験なんて無いよ! それも五匹もいる)


 メアリーアンちゃんはまだ気付いていないようでさっきの剣を調べていた。


「アンちゃん!ゴブリンだ!」

 急いだ俺は省略してアンちゃんと呼んだがメアリーアンちゃんは分かったようで周りのゴブリンを目で追った。


 俺は手に持ったシャベルを構えながら


「逃げよう! 走るんだ!」

とメアリーアンに声をかけた。


(ヤバイ! ゴブリンさんたらなんか棍棒とか錆びた包丁のようなもの持ってるじゃあないですか? 武器持参?)


(オッチャンだってシャベルという武器持ってるんやで!)

 リーチはこっちの方が長い。いざとなったらこれで戦うしかないと覚悟を決める。


 俺はメアリーアンの手を引いて走り出した。椅子とテーブルは置き去りだ。


(逃げるものは追いかけられる。これって世の中の法則でしょうか? ゴブリン達が追ってきた。まーずい。あいつら結構足が速い)


 メアリーアンちゃんの足では追いつかれるのが目に見えていた。

(仕方がない、シャベルを振り回して追い返すか?)

 

 俺は立ち止まってメアリーアンちゃんを背にゴブリン達と対峙するのだった。






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