『お宝探し、しませんか?』 ダメダメおっさんが、超絶美少女と仲良くなっても良いじゃないか。俺ってそこはかとなく良い男かもしれません

米糠

第1話 お宝探し、しませんか?

「私と一緒にお宝探し、しませんか?」


 仕事帰りの道端で、突然俺の前に現れた絶世の美少女は、ニッコリ笑ってそう言った。


 歳の頃は16〜7だろうか?

 金髪ロングのサラサラヘアー、吸い込まれそうな紺碧の瞳にスラリと伸びる長い足、どう見ても俺に縁があるような人種とは思えない。


「はい? なんですかー?」


 俺は意味もわからず聞き返す。何かの勘違いか人違いに違いない。


「失礼しました。わたしはメアリーアン十六歳、トレジャーハンターをしています。この子は相棒のプリンちゃん、可愛いでしょう?」


 彼女は足元に視線を向ける。


 俺はつられて視線の先を追った。そこには小さな可愛いワンコがいた。


(可愛い! モフモフやん!)

 白い毛玉のような生き物は俺を見るなり「ワン!」と可愛く挨拶してくれた。頭も良いらしい。

(なんやねん、そのつぶらな瞳は、俺は胸をズキューンと撃ち抜かれたで!)


「めっちゃ可愛いやん! この子はどこの子〜? 触って良い〜?」

 俺は思わずモフモフワンコに手を伸ばす。


 だがその手は即座にピシャリと払われた。


「ダメです! プリンちゃんは私だけのものですから」


 叩かれた手をブラブラと振る俺。

(ピシャリと断られてしもうたで、あーん。まあいいや)

 

 俺はプリンちゃんをモフモフするのを諦めて目の前に現れた美少女の方に視線を向ける。


「俺になんのようでしょう? ……てか,どうして俺に声をかけたの?」


 俺は目の前の美少女に二つの疑問をぶつけた。


「えっと〜、プリンちゃんが〜、プリンちゃんがあなただって教えてくれたから」

 美少女がもじもじしながら訳の分からないことを言う。


(プリンちゃんが俺だと教えてくれた……? 全く意味がわからん。何が俺なんだ?)


「プリンちゃんはここ掘れワンワン犬なの、何処にお宝があるか教えてくれるのよ」


(ここ掘れワンワン犬? ……聞いたことのない単語が飛び出したな? この子頭おかしいのでは?)


「プリンちゃんにトレジャーハンターのパートナーを教えてって聞いたらあなたを見てワンワンて……教えてくれたのよ」


 つまりこのモフモフ犬が俺を指名したということらしい。


「それで俺に君と一緒にトレジャーハンターをやってくれと言うわけなのね?」


 金髪美少女がニッコリ笑ってこくりと頷く。


(かわいーじゃねーか馬鹿野郎! こんな可愛い子にお願いされて断れる男はいるはずがない)

 俺はロリコンではないが、ちょっとだけならそれも良いかもと考える。


「おほん!」

 俺は一つ咳払いをしてから話し始める。


「俺は堀田岳男、クマタニ組勤務三十歳、妻なし、財産なし、恋愛経験なし、のナイナイ尽くし。十五歳からトンネルを掘り続け、穴を掘ること十五年、掘ること以外は何もできない穴掘り男だが,そんな俺でいいのか?」


(初めから正直に言っておいた方が良いだろう。後で騙されたとか言われても困るからな)

 ちなみに、クマタニ組は、トンネルを掘るのを生業とする老舗企業だ。そしてここはウルテマ国の中堅都市トルネコである。


 おれは、偉そうに胸を張る。どう考えても自慢できるものは何も持ち合わせていないこの俺だ。舐められないように態度ぐらい偉そうにしているしかなかろう。


(なんだなんだ、金髪美少女が俺を崇めるような瞳で見ているじゃないか?)


「やっぱりプリンちゃんは凄いわ! トレジャーハンターは穴が掘れないとできないもの!」


(いや、それだけじゃあできないのでは?)


 金髪美少女が俺の手を握ってじっと俺の目を見つめる。


(やめて、見つめないで、おっちゃん見つめられると顔が赤くなっちゃうよ)

 俺は紺碧の瞳から視線をずらし、顔を背ける。


「是非! 私と一緒にお宝を探しましょう!」


(この子、頭はアレかもだけど、見た目は超可愛いし休みの時くらいは付き合って宝探し……やっちゃうか?)


 美少女の誘いはなかなか断れるものではない。俺の心がフラフラと寄っていく。


(いや! いかん。俺は大人だ! この子を保護するような年齢だぞ。美少女だからではなく、危なそうだったら助けてあげるために同行するならいいかもな。こういう子と一緒にいると若返りそうだしな)


「俺は勤め人だから休日だけなら宝探し、付き合ってやっても良いけどな、だけど俺、実は頭も凄く悪いんだぞ。謎解きみたいに頭をつかうのは、ほんと無理だからな!」


「大丈夫です。頭脳労働は私の担当です、タケオさんは肉体労働をだけを担当していただければ良いので。」


「ワン!」


(今少しディスられたような気がするけど? 気のせいか?)


「そ、そうか、俺の休みは土日祝日だからな、それ以外は仕事があるから付き合えんぞ!」


(この子頭脳労働担当って、大丈夫なの? まあ良いや、こんな可愛い子と一緒にいられるだけでも超ラッキー。宝なんてどうでも良いし、見つかるわけもないけど、楽しく宝探し、適当に付き合ってやんよ)


「じゃあ今度の土日はお宝探し、お願いしますね!」

 ニッコリ笑うメアリーアンちゃん。

(おっちゃんもうメロメロです)


 かくして俺は金髪美少女メアリーアンちゃんと、休日トレジャーハンターを始めることになったのだった。




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