第2話 寝言は寝て言えです。

「藤咲さん一緒に帰ろ!」 


いつものように帰り支度を済ましていると彼女、藤咲由花こと由ちゃんの周りに人だかりができる。

入学式から早いもので一週間を過ぎた。それでも由ちゃんの人気は下がる事を知らない。寧ろ上がってすらいる。初めはクラスメイトだけだったこの人だかりも今では他クラス他学年と…まあ、人気なのだ。

そんな彼女と幼い時に顔見知りな俺はと言うといつも一緒の親友康ちゃんを連れ教室を後にする。


久しぶりに由ちゃんと話したいのだが、そうも言ってられない。あの人混みの中で由ちゃんに話しかけようものならあらぬ誤解、あらぬ噂を立てられてしまいかねない。俺は平凡な人生を歩みたいのだよ…


「また話しかけれなかったな」


「そうだね〜」


「放課後になると話したそうにいつもソワソワする癖に、お前はあれだなヘタレだな」


「康ちゃんはグサっと遠慮なしにブッ刺してくるよね〜」


ウッと言い心臓を抑えダメージを受けているように見せる。


「私は甘やかさないわよ!お前はやれば出来る子なのにやる気がないんだから、この機会にそれを改めることね!」


「こ、康ママ…」


そんな悪ふざけ混じりのふざけ合い。平穏。これが無くなるくらいなら俺は別に俺の中の気持ちを誤魔化したっていいんだ。


金曜日


「康ちゃ〜ん帰ろー」


いつものように後ろの席の康ちゃんに首を折り曲げ話しかける。


「うわ!お前、その中国雑技団みたいな身体の使い方するなよ。驚くし怖いわ!あと俺今日先生に呼ばれてっから先に帰ってもいいぞ」


「え〜仕方ない。康ちゃんが1人で帰るの寂しいだろうから待っててあげよう」


「へいへい、じゃ行ってくるわ」


「てら〜…さて、どうしたものか」


やる事は無い。なら、校内探検だ!いつもは学校が終わると康ちゃんとすぐに帰宅していた。学校の地形はこの一週間である程度把握してはいるが、未だ完璧ではない。


「放課後の少し寂しい感じの校内ってちょっとワクワクするんだよね〜」


放課後と言ってもまだなったばかり、人がいる。俺は少しみんなが帰るのを待つ事にした。のだが…待っていたら眠気に襲われ支えも虚しく、突っ伏し眠ってしまった。



頭を撫でられてる?いや、髪の毛を触られているかのようなくすぐったい、こそばゆい感覚に目を開ける。


「ん…?」


「あ、えっとこんな所で眠ったら風邪を引くわよ!」


「あ、由ちゃんだ。おはよう、今日も別嬪さんだね〜」


「あぅ…あ、当たり前じゃない!私は努力しているもの当然よ!」


「うんうん。友達も多くいるみたいだし心配しなくてももう大丈夫だね〜。でも俺はもう、少し、由ちゃんと、ちゃんと、話、した…」スヤァ


「へっ…ね!ちょ、ちょっと!今の!ね!もう一回!もう!起きなさーい!」


一部始終を教室の後方ドアから見ていた(聞いていた)康二は…


(おいおいおい、話し声がすると思って聞き耳&盗み見してたらとんだ掘り出しもんじゃねえかよ…ってか分かりやす)

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