異世界ではなかった死後の話。

ken.ji0827

第1話






気がつくとそこはただ広がりをみせるだけの空間。よく理科の授業で見せられるような宇宙空間のそれにそっくりだと思った。目の前には一人の少年がいる。こちらを見ている。


「やっと起きた。」


そう言った。



俺はすぐにピンときた。もしかして俺は死んでここは死後の世界というやつなのだろうか?それでこのショタが案外神様とかだったりするのだろうか?

ここに来る前の記憶を頑張って思い出そうとするが、まるで夢を思い出そうとするときのように上手く行かない。

また少年が口を開く。まだ小学生くらいの見た目をした男の子だ。


「これ見て。」


少年の声と共に景色が一変し、それはどこかの部屋になった。俺は一瞬目眩のようにクラッとして、それがどっかいって意識が正常に戻るとその部屋にはホームセンターで売っていそうな赤い作業現場用のロープで首をくくった女子高生がいた。女子高生とわかったのは制服を着ていたからだった。もしかしたら中学生かもしれない、イマドキのオナゴは発育が早いからな。自分が通学時にいつも電車で乗り合わせる子のことを思い出した。その子も今目の前で首をくくって死んでいる女の子見たいな黒髪ロングで、スカートがあまり短すぎないのが特に俺は好きだった。満員電車の時にわざとその子の近くへ行って嗅ぐおそらくは駅に来るまでの自転車でかいたであろう汗の匂いと制汗剤の混ざった匂いがたまらなく俺の男根を刺激した。その汗でベタつく体に俺が体をくっつけても嫌な顔はしてなかったように思う。ある時一週間以上もオナ禁してその接触でィッてしまった時は格別なソー快感を感じたし、後日それを思い出しながら何度もオナった。俺のペニスは当たっていなかったと思う。息も殺していた。でもそうしたかったからしてしまっていたような気もする、分からない。とにかく彼女は俺の好みで、毎夜毎夜何度か盗撮したスカートの下のパンティの写真で固くなった股間をしごきながら、どうすれば彼女が自分のものになるかを考えていた。


目の前の部屋はそれなりに小綺麗にされていた。ライトなヲタだったのだろう。数体のフィギュアとラノベ、壁にはポスターなんかも貼ってある。それらは俺も知ってるものばかりだった。女の子特有のなぜだか分からないが部屋がピンクに見えるの典型的な部屋で、勉強机の上には参考書と赤本が開かれっぱなしだった。俺とさっきの少年は幽霊にでもなったのか、それを部屋の上から見下ろすような感じで見ている。俺は少年に尋ねた。


「これは一体、、、」


少年は俺の問いかけには答えずに黙って眼鏡を差し出してきた。四角い黒縁の俺がかけ慣れた眼鏡によく似ていた。かけろということなのだろうか?俺は雰囲気にしたがってそれをかける。今度はそこには見慣れた部屋が映し出されている。先程の女子高生のいた部屋と同じサイズの六畳一間、違いは机の上にあるのがデスクトップPCなことと、ポスターのキャラが裸のロリなところくらいだろうか?部屋の電球がジジッと音を立てるだけであとは静寂が流れている。

困惑する俺を少年がじっと見る。その目は薄気味が悪かった。気がつくとそこにはさらにもうひとりの少年がいた。今度は中学生くらいだろうか?学生服を来ている。〝小学生くらいの少年の方〟が言った。


「お待ちかね。」


俺は情けない声でまた質問する。


「あ、あの、これは一体?」


俺の声は震えている。それとは対照的にハキハキとした声で〝中学生くらいの少年ノ方〟が呆れ顔で言う。


「まだわかんないの?」


俺は全くわからないという風にたじろぐ。自慢じゃないが引きこもりニートの俺はクラスを大声で仕切るようなタイプの奴の声を聞いただけで萎縮して何も喋れなくなる。〝中学生くらいの少年ノ方〟がやれやれといった感じで俺の眼鏡をひっつかんで外すと、そこは先程の女子高生が首をくくった部屋で、そして彼はまるで死刑宣告を言い渡すように言った。


「これお前ね。」


俺は辛うじてへっ?という声を絞り出す。〝中学生くらいの方ノ少年〟はニヤニヤしながら説明を始めた。


「お前は一度死んでいるんだ。そしてここへ来て俺達に懇願したんだ、やっぱり死にたくないって顔面鼻水と涙でぐしゃぐしゃにしながらな。」


俺は全く状況が掴めないで返事もできずにキョトンとするしかなかった。〝中学生くらいの方ノ少年〟はしびれを切らしたようにそれも覚えてねぇのかよと言って舌打ちをする。その音と共に景色が変わり俺と少年二人は今度は川の土手にいた。そこはよく知った場所だった。大きな川が流れ、それに沿ってある土手の上と下の一本道。住宅街へ続くその土手道を覆うように二十メートル程の橋がいくつか掛けられていて、丁度今みたいに夜になるとその下はどこからも全く見えない。そこに小太りの男が寝そべるようにして腰を振っていた。男の二本の左右にはさらに女の足がスカートから健康的にその白い肌を伸ばしていた。俺はだんだん青ざめてくる。その表情をみながら嬉しそうに〝中学生くらいの方ノ少年〟が口を開く。


「そうだ、お前はいつも電車で盗撮してた女の子をつけて、彼女が塾帰りのある日レイプしたんだ。」


俺はつばをゴクリと飲む。こんな状況になっても俺の股間は少し膨らんでいた。


「やるだけやってスッキリしたお前はそのままダッシュで逃げるんだけど、警察にバレたらどうしようとか、親にバレたらどうしようって色々考えて結局部屋で首吊って死んだ訳。で死んだあと俺達に、しにだぁぐあ゛ぁりばぁぜぇぇんって泣きついてきたんだよ。」


俺のマネ(全然似てない)のわざとらしく誇張する様子はクラスで陰キャをイジる陽キャそのものに見えた。


「挙げ句俺はあの女の子が単純に好きで、それは純愛だったとか抜かしてさ。まぁ、とにかくそれで優しい優しい寛大な俺様は思った訳。そんなに好きならいっそその子として生まれ変わらせてあげようと。」


俺は全く身に覚えのない出来事を告げられ、それでも頭の何処かではそれが嘘じゃないことを感じた。


「大変だったんだぜ?その女に似た子探すの。なんせ親の遺伝子から未来を覗かなきゃなんねぇ。これは大きなカシができちまいましたなぁ、ダンナぁ?」


俺は震える声でヒーローになったつもりでその嫌なガキに言い返す。


「そ、そんなのおんなじじゃないだろ!!例え仮に俺がそんな事を頼んだとしても、これは頼んだ通りになってないじゃないか!!」


精一杯の大声で威厳を出しながら子供の間違いを指摘するみたいにそう言ったと思った。俺はなぜだかひふひふと息切れしている。〝中学生くらいの方ノ少年〟は全く動じずに、むしろ反応を楽しそうに眺めている様でさえあった。


「それがあるんだなー、お前純愛とか言ってたけどただ単に若い女に鼻伸ばしてただけだから。そこに居る奴がちゃんとお前の脳みそほじくり回してそれも確認済み。」


〝中学生くらいの方ノ少年〟はそう言ってもう一人の少年の方を指差す。彼はまだ不気味な様子でこっちをじっと見ているだけだ。俺がそんなのデタラメだと反論すると〝中学生くらいの方ノ少年〟ははぁ?と言いながらこちらを威嚇する。俺は少し狼狽えながらもいざとなれば中学生くらいなら素手でボコボコにしてやるつもりでいた。こいつはそこまで背丈もないし、別に鍛えて筋肉隆々ってわけでもなさそうだった。


「とにかくさ、お前は俺達がせっかく可愛い女の子として生まれ変わらせてやってもPC三昧のほぼ引きこもりみたいになるわけ。もったいないよねー。」


そ、それこそデタラメだ!俺は、とっくに成人してて、ちょっと挫折して部屋にこもりがちなだけで、別に将来の計画とかはちゃんと立ててた、それに、それに。


「いやー気づくべきだよねー、書く文字とかさ、見てる時に思わなかった訳?あ、これ女子の字だなーみたいな。丸っとしたの。内股で運動も出来ないし、一人で端っこでラノベばっかよんで、日焼けしたくなーい、肌白いほうがいいー、挙げ句に日焼け止めなんか塗っちゃってさー。まぁ、前世の感覚がバグで抜けなかったってのは俺たちも予想外だったけどさ、それにしても学校で一人称「俺」って(笑)、周り皆ドン引きしてたぜ?(笑)脳っておもしれぇよな、お前はあの部屋で受験勉強しながら自分はパソコンやってると思い込んでたんだよ。それじゃいけなぁーい!って勉強量増やすたびにパソコンをずっとやってる気になって、最後は躁鬱みたいになって、でまた首くくるの(爆笑)」


まるで自分の日記を読まれてるみたいに俺はどんどん恥ずかしくなって、とにかくこのガキを黙らせようと俺は殴りかかる。しかしそれは宙を切って俺はずしゃあと顔面を土手の砂に転ばせた。〝中学生くらいの方ノ少年〟はころんだ俺の上にドシッと座る、その体はまるでトラックみたいに重く俺の肋骨がポキポキっと折れる音が響いた。かれは片足をパタパタと俺の頭の上で踏み鳴らす。また瞬間移動みたいに違う場所に動く。そこはホテルの一室だった。黄色い部屋の電気が生活感のない部屋一面を照らしている。ベッドの上にはひん剥かれた制服ごと赤い紐でM字脚に縛られ、目隠し、マンコから精子を垂らしてる黒髪ロングの若い女がいた。〝中学生くらいの方ノ少年は〟俺の上からそのベッドの方に向かって歩いてく。

女は「早く犯してぇ」と猫撫で声で言っている。〝中学生くらいの方ノ少年〟はハハッと少し笑ってこちらを向いた。


「こいつはさ、お前がレイプした女の生まれ変わり。しかもなんとなくの前世の記憶付き、現実世界転生ってやつ?(笑)こっちも大変だったんだぜ。こいつはお前にレイプされたこと、親と出来立ての彼氏に申し訳ないとか思ってたらしくてそのこと誰にも言えなくて、ある日彼氏と付き合って1年記念のデート?とか言うのの帰りに電車に飛び込むの。そっちはまだチューしかしてないのにな、もったいね(笑)ま、俺ならどのみちこんなブスはゴメンだけど。」


このクソガキが彼女をブスと形容したことに怒りを覚えるが、あばら骨のあたりを抑えながらひゅーひゅー言う俺にはどうすることも出来ない。


「葬式で親とか一体何でぇぇぇ!?!?ってギャン泣き。こいつの死んだ魂にそれ見せたらさ、お前みたいにやっぱり死ななきゃ良かったァァなんて泣いてんの、いやもっと早く気付けよって感じ(笑)」


ベッドの上で女が「はぁゃぁくぅぅ」とおねだりしている。その声を出す女の頭を〝中学生くらいの方ノ少年〟は片手でスパッと切り落とした。ホテル特有の深みのある絨毯に転がりながらその頭がごろごろっと重みのある音をたてた。彼はその頭の髪の毛をひっつかみそれをこちらにボウリングのように投げてくる。俺はたまらずうわぁひいいいいと後ずさった。


「おいおい、純愛はどうしたんだよ?生まれ変わっても似た容姿にしてやったからお前の好みのはずだろー?ほら黒髪ロングだしさー。」


俺はもうなにがなんだか分からなくなってくる。

〝中学生くらいの方ノ少年〟は首から先の無くなった血の吹き出す体の肩に手をポンポンやりながらまぁ聞けよと言う。


「この女にはさ、前回と全くおんなじような人生を送らせてあげたんだ。まぁ、サービスってやつ?最初は転生そのものに戸惑ってたけどさ。いやー、こっちもだいぶ骨折れたよなー!?」


と〝中学生くらいの方ノ少年〟はもう一人の少年の方を向くが、そっちはなんの反応を見せるでもなくこっちに近づいてきて俺の目の前に転がる女子高生の頭を拾い上げた。耳の方からぐちゅぐちゅと音を立てて彼は自分の手をその頭の中に突っ込み始める。俺は小便を漏らしながら、涙目で早くこれが夢か何かで終われと必死に念じ続けていた。やっとの思いで声を絞り出す。


「お前ら何なんだよぉ、一体何で俺にこんなことするんだよぉ、、、?」


「なんでって、俺があくまで幸せなやつを見てるとムカつくからに決まってんじゃん。」

「あ、あくま、、、?」


〝中学生くらいの方ノ少年〟の顔が人間とは思えないほどいびつに歪む。


「そ、あくま!で、ちなみにそいつは天使!」


指を差す先には女子高生の頭の上部を額あたりでパックリわって中の脳みそにホテルルームにあったボールペンでなにか書いている〝小学生くらいの方ノ少年〟がいる。少年が呟く。


「元だよ、元。」


俺が目を〝中学生くらいの方ノ少年〟に戻すと彼は今度は胴体の部分から下を切り落とす。切り落とされた両脚をひっつかんでパカパカさせながらこっちに近づいてきて「前みたいにその包茎ちんこをわたしのjkまんこに入れないのぉ?」なんてナメた口調で言っているが、腰を抜かしている俺は壁際により掛かるようにそれから逃げようとする。


「こいつはさっきも言ったけど前回と同じ人生をお前との接触無しで歩んだ。またおんなじような彼氏ができてピュアなラブをするわけだ!全くうぜぇよな、俺はわかるぜお前の気持ちがさ。だから、今回特別に輪姦されるっていう分岐イベントを用意したんだ!そいつら容赦ないんだぜー、今コンビニに行ってっけどさー、写メとか動画撮って、誰かにチクったら彼氏と親とネットにコレばらまいてやるからなぁぁ、ゴルァァァみたいな脅しかけてさー、何回も輪姦すの。」


今度は〝小学生くらいの方ノ少年〟が口を開く。


「輪姦されながらこの子脳のスイッチを切っちゃったんだ。まるで冬の朝に家から出るときはすごい寒いのに少し歩いたらへっちゃらになるみたいに、輪姦されながら快楽とともにずっと彼氏のことを考えてるんだ。」


俺は過呼吸みたいに息が荒くなって、これは夢だ、覚めろ!と何度も頭を部屋の壁にぶつける。その後ろで〝中学生くらいの方ノ少年〟が手に持っていた脚をほっぽりだし、ベッドの方へ歩いていくとそこに横たわる肩から腹までの胴体の部分を見下ろしながら言った。


「これは契約の内の一つだったんだけどさ、お前との出来事を無かったことにしてやるっていう。まぁそれなりに面白いちょうさができたって俺の相方も言ってるし、良しとするか!!」


「け、契約、、、?」


俺は半分白目を剥きながらほとんど無意識の内に聞く。


「そ!、お前らにちゅーされて、ちんこ突っ込まれて汚らしくなった体を切り捨てて、さらに新しいのにしてやったの。いやー、じじい程じゃないにせよ長生きするとやっぱり俺も涙もろくなるもんだねー、うんうん、しみじみ。」


消えかける意識は辛うじて最後に高尚で哲学的問いを彼にする。


「な、なんで、お前らはこ、こんな事すふんさ、、、」


「さっきも言っただろうが、人の不幸は蜜の味!!俺は自分さえも不幸なんだぜ!?」


得意げな彼がこちらに一歩ずつ歩み寄ってくる。一歩ごとに彼の容姿は段々と大人になる。


「お前がクラスの陽キャとか思ってるこいつも、未来で事故と詐欺でホームレスになってさ、」


悲愴感を打って変わって漂わす彼の顔はどんどんヒゲモジャになり、詰まっているはずの鼻を通り越すほど酒と汗とゴミの匂いがしてくる。小声で助けてくれぇ、なんで俺だけ?ナンデオレダケ?とうわ言のように繰り返しながら最終的に俺のからだに縋り付く。〝中学生くらいの方ノ少年〟が声がどこからか、しかしはっきりと聞こえた。


「最終的にはくらーい、くらーいブルーテントの下で孤独に世の中を恨みながら死んでくんだぜ?」


ボロボロの服と黄疸色のシミだらけのシャツとダボダボの靴下、そこからはみ出す垢まみれの黒い素足。それらが俺の体を通り過ぎてどこかへ行くと〝小学生くらいの方ノ少年〟が言った。


「安心して。ここは夢の中、お前は気を失ったらこれをすべて忘れ同じ過ちを繰り返しまたここに戻ってくる。永遠に。」






エイエンニ、、、





六畳一間のPCのハードがシャーと回る部屋に昼下がりの光が差し込み、俺はまた目を覚ました。

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異世界ではなかった死後の話。 ken.ji0827 @aimaikenji

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