美形しか入れない学校になぜか入れた俺。ブス認定されて冷遇されてますが、どうにかラブコメをしてみせます。

わをん

第1話 共演NG顔面な俺がモテる方法


 「高校には入れば、ラブコメのような輝かしい青い春が訪れる」

 

 高校入学前、誰もがそんな期待を胸のうちに秘めていたのではないだろうか。


 一癖も二癖もあるクラスメートたちがいて、隣の席には現役アイドルがいて妙に好かれている、転校生は美少女で先生にその子の学校案内をまかさせれる、何かのきっかけで変な部活に入ることになったり……


 口癖が「もっと平穏な学園生活を送りたい」となるくらい、奇想天外きそうてんがいの事件に巻き込まれるのだ。


 そんないそがしくも、楽しい学園生活が高校に入れば訪れる。


 小学生の頃からのトップラブコメりーだーの俺は、言うまでもなくそんな確信を持って日々を過ごしていた。


 脳内ラブコメ畑だった中学二年生のある日。


 俺はネットで「ラブコメのような高校生活」とワードを打ち込み調べていた。


 他のみんながどのようなラブコメ高校生活をしているのか調査したかったのだ。その時の俺は、書き込んでいる誰よりも一番ラブコメみたいな生活を送ってやる、と息巻いていたりもしていた。


 しかし、そこに書き込まれていた内容は俺の想像していたものとは違った。


 『ラブコメはフィクション。現実ではラブコメみたいなことは起きない』


 それが調べて最初、俺が見た文だった。


 ある人が「ラブコメみたいな恋愛は高校に入ればできますか?」と質問し、それのベストアンサーになっていた人の答え。


 俺は見た直後、訳がわからなかった。こいつは何を言っているんだ、そう思った。


 ラブコメは現実でも当然起こり得るものだと確信していた俺にとって、それを否定する言葉がネットにあること自体想像していなかったのだ。


 俺は深い理由を知るために、青く光るその言葉をクリックした。


 すると、画面いっぱいの長文が映し出される。


『質問者さんの言う「ラブコメみたいな恋愛」っていうのが抽象的だから、美少女に何故か好かれてしまう学園生活っていう風に仮定するね。それを踏まえて言うけど、ムリです。諦めてください』


『ラブコメみたいな恋愛がしたいなんていう期待は早めに捨てた方がいい。百パーセントありえないから』


『ラブコメはあくまでフィクションだから。何もしてないのに美少女が君に惚れるわけないでしょ? 高校に一年も入れば理解できると思うよ。いや、こんなこともわからないんじゃ理解できないかな?』


長い長い否定の言葉の末、最後にはこう残されていた。


『「高校に入れば」って言ってるあたり、中学校ではできなかったのかな? それでわからないかな。高校なんて中学校の延長線上なんだから、高校に入ってもいきなり美少女にモテるとか無理無理』


 俺はそれを読んで呆然ぼうぜんとした。


 俺は中学校で全然モテなかったのだ。美少女どころか、面識のない女子から「生理的に無理」と避けられていた実績すらある。


 この人の言うことが真実ならば、中学でモテなかった俺は高校でもモテることはないってことになる。


 モテなければ、俺の夢である「ラブコメのような恋愛」は到底叶えられない。


 俺はさながら死刑宣告を受けた被告人のような気持ちに陥っていた。


 ラブコメにおいて主人公がモテるというのは前提条件、その前提が崩されてしまえば残るのは悲惨ひさんな学園生活だけ。


 俺は泣いた。


 現実のつらさに、何より俺ではラブコメのような恋愛をするには能力不足ということを悟り、悔しくて泣いてしまった。


 だが、俺は諦めなかった。諦めてしまえば、これまでの自分を否定するような気がしたからだ。


 俺は落ち込んだ心を問題解決にポジティブに取り組むことから始めた。


 (問題なのは俺がモテないことその一つのみ。その一つさえクリアすればいい)


 そう、問題は一つのみなのだ。「モテない」これだけを解決することができれば、俺はラブコメのような恋ができる。


 俺は考えた。登校中も授業中も帰ってから寝る時までずっと考えた。モテる方法を……


 やはりモテるといえば……イケメン。しかし、俺の顔は……イケメンとは言い難い。確かその避けられていた女の子にも「特に顔が生理的に無理」とか言われたはず。……泣。


 そんな怒涛に暮れていたある日、俺に天啓てんけいともいうべきひらめきが降りてきた。


 その閃きを起こしたのは、人生の教本マニュアル


 ――ラブコメだった。


 いつものように「紙タバコよりも甘い恋」略してタバコイを見ていた俺は気づいた。


 主人公がイケメンではないことに。


 ――しかし、それとは裏腹にめちゃくちゃモテる。


 何故?


 それは主人公が顔ではなく、行動がかっちょいいからであった。


 怒り狂うヤンキーに果敢かかんに挑んで、はたまた猥褻わいせつ教師の圧力に屈しずにヒロインを守り切った。助け方もスマートで品がある。


 顔じゃなく、その生き様にヒロインは次々と主人公に惚れていたのだ。


 それならば、共演NG顔面の俺も主人公の行動を真似さえすれば……………………モテる。


 俺はこの真実を見つけた瞬間、溢れ出るドーパミンによって脳が爆発した。


 幸福感と達成感が混ぜ合わさったビックバンとでも言うのだろうか。天にも昇る心地というものを初めて俺は感じていた。


 力の法則を発見したニュートンさんもきっとこんな気持ちだったのだろう、と俺はニュートンに親近感を抱きながら、すぐに自分のしでかしたことに恐怖した。


 俺は十四歳というよわいにして宇宙の真理を一つ発見した。それは間違いないだろう。公表すれば、間違いなく歴史の偉人に数えられる。


 だが問題は――――戦争。


 俺がこのことを公表してしまえば、俺の知力を手に入れようと、あらゆる国が俺を求めて戦争を起こしてしまう。


 それは絶対にダメだ。俺は戦争が大嫌いなのだ。それに、俺は自由に生きたい。死ぬまで人類のために研究とか嫌すぎる。


 俺は生涯この真理を話さないことを決めた。


 モテる方法がわかった俺は、次のステップへと移ることにした。


 次のこと、つまり場所だ。


 いくら俺がモテたところで美少女がいない場所ではラブコメが成立しない。


 俺はなんとしても美少女がいる高校に入らなければならなかった。


 俺はスマホで「美少女 高校」とさっそく調べた。


 しかし、それは悪手で――――大きな罠だった。


 ニュートンのライバルとも言われた脳をもつ俺だったが、流石に予想できなかった。


 検索画面に高校ではなく、ありとあらゆる美少女の写真が表示されるなんて……


 清楚系、ギャル系、メガネっ子、ロリ、おっぱいと幅広いラインナップに俺はすぐに写真のとりこになった。


 そのおかげで俺は片っ端から女子高校生の写真を見ることになり、足止めを食らってしまった。


 しかし、俺は投稿されていた写真を三日で見尽くし、窮地を脱することに成功した。


 罠にひっかかりながらも俺は美少女がいる高校を調べ回った。


 美少女がいることは最低条件として、他にもモテる友人キャラがいたり、可愛い転校生がきたり、そんなを求めるも、なかなか該当がいとうする高校は見つからなかった。


 行き詰まっていたある日、俺は突破口になり得る情報をついに入手した。

 

 それはクラスメート女子の話をたまたま盗み聞きしていた日のことだった。


 一人の女子が口角を上げ、嬉しそうに話すのだ。


 明智原あけちはら高校という美形しか通えない高校がある、と。


 三代王子に三代美姫、生徒会の噂などなど、とんでもなくラブコメができそうなところがある、と。


「ここだっ! ここに入れば、俺の夢は必ず叶う!」


 俺は明智腹という高校をを一目見て、そう確信し思わず声に出すほど俺は興奮していた。


 この学校に入って、俺がかっちょいい行動をしまくればメインヒロインは必ず俺の元に現れる!





 ……なんて考えていたあの時の俺に″現実″を教えても信じなかっただろう。





 明智原高校という魔の巣窟。他の高校よりもその夢を叶えるのよっぽど難しかったということを…


 


 


 













 


 


 


 


 

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