魂をミッケ!
海野わたる
折り紙の月その1
牛刀はフレッシュな苺を切った後のように、滑らかな血液を滴り落として尾を作った。柄を握る手は筋肉を硬直させている。
貫かれて強く引き切られた胸は、コットン100パーセントの柔らかい肌着に鮮烈な赤色を滲ませている。同じように僕の背中にも汗が噴き出ていた。以前なら既に晩飯を丸ごと吐き出していただろうが、好奇心が僕の中を圧倒していたのだろう。
まだ胸も膨らんでいない、十二歳の女の子は瞼を閉じて穏やかに、眠っているとさえ思えるほどだった。長く弧を描くまつ毛と、化粧を覚えていない、若さを表す肌は卵のように美しかった。
しかし全員の注目はそこにはなく、隣りの男の死体をのぞき込んでいた。
どうなった、とそこにいる誰もが口にしたかったが、だれも発するだけの勇気を持たなかった。
途端に男の方の死体の人差し指が痙攣したように動いた。死体の男は全身を鞭のようにしならせて跳ね上がり、僕の喉を握った。殺される、そう思う間もなく、気道からの酸素を断たれた身体は機能を停止した。
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