第9話
窓から差し込む日差しで目を覚ます。
ぼんやりとした意識の中でスマホに手を伸ばして時間を確認すると、まだ7時前だった。
今日は土曜日のはずだし、もう少し寝ていよう。
二度寝をすることに決めてベッドに潜り込んだ瞬間、ついさっきまで握りしめていたスマホから大音量でアラームが鳴り響く。
「ひょあっ!」
急に大音量でアラームが鳴るものだから、驚いて変な声を出してしまった。このままでは近所迷惑なので、布団から手を出し、アラームを止める。
そうだ。今日は成瀬さんと出かけるからアラームを設定しておいたのだった。アラームが鳴らなければ、危うく二度寝をするところだった。
昨日の私に感謝しながら、ベッドから抜け出して、重い瞼をこすりながら洗面所へ向かった。
顔を洗った後、フェイスタオルで顔を拭いていると、洗面所のドアが開いた音が聞こえる。フェイスタオルから顔を上げると、お母さんがなにやら驚いた顔をしてこちらを見ていた。
「おはよ。珍しく早起きね。どこか行くの?」
「別に珍しくはないでしょ。」
「そう?いつも10時くらいまで寝てるじゃない。....もしかしてデート?」
「デートじゃない。友達と遊ぶだけ」
「あの
心の底から驚いた、みたいな反応をするものだから、なんだか腹が立ってきた。私だって、普通に友達と遊ぶことくらいある....と言い返しそうになったが踏みとどまる。そういえば、最後に友達と遊んだのって、いつだっけ。
考えていると深い闇に飲みこまれそうになったので、考えるのをやめた。
「そんなにびっくりすることないじゃん」
「ごめんごめん。あ、そうそう。朝ごはんできてるから、早く来るのよ」
適当な謝罪をした後、満面の笑みを浮かべながら洗面所から立ち去っていった。なんで母親ってあんな感じなんだろう。私も母親になればわかるのかな。まあ、なる気はないしなれる気もしないんだけど。
お母さんから飛んでくる質問を適当に流しながら朝ごはんを食べた後、自分の部屋に戻り時刻を確認する。8時を過ぎたところだった。集合は10時半だったっけ。
スマホを確認すると、何件かメッセージが届いていた。
『おはよー!起きてる?』
『9時までに返信が無かったら電話するからねー!』
『......ほんとに電話しちゃうからね?』
顔は見えないけど、わたわたしながらメッセージを打っている成瀬さんのを想像してしまい、思わずクスっと笑ってしまった。
『おはよ。起きてるよ。電話はやめて』
『よかったー!起きてた。忘れられてなかった......』
『忘れてないよ。私のこと、なんだと思ってるの』
『ごめんごめん。嬉しくてつい』
『なにそれ。今準備してるから、また後でね』
『うん。また後で!』
返信をした後、着ていく服を選ぶためにクローゼットを開ける。
普段は特にこだわりもないから適当な服を選んでいたが、今日はそういうわけにもいかない。とりあえず何着か取り出して、鏡の前で確認してみる。
色々と合わせて見たが、どれもこれも納得がいかず、結局いつも着ているプルオーバーのパーカーとスキニージーンズを選んだ後、軽くメイクをする。
一通り準備が終わった後、時計を見ると、9時半を過ぎていた。集合場所の駅までは30分もあれば着くから十分に余裕があるけれど、早めに出発することに決めて玄関に向かう。
すると、待ち伏せしていたように母親がリビングから顔を出した。
「あら、もう出るの?」
「うん。まだちょっと早いんだけどね。電車が遅れるかもしれないし」
「そっかそっか。行ってらっしゃい」
そういうと、ニコニコとしながらリビングに戻っていく。
一体なんなんだ。
相変わらず母親の生態は理解不能だ。
玄関のドアを開けると、雲一つない清々しい青空が広がっていた。
今日は、楽しい一日になるといいな。
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