第13話 PvP大会入賞への道のり
VRMMORPG BulletSの初回版には、シューティングアシストシステムであるバレットサークルとバレットラインが未実装だったが、半年後のアップデートでVer.2から実装された。
ゲーム名もVRMMORPG BulletS IIに変わり、プレイヤー数もだいぶ増えてきた。オレを含めた初回版からのプレイヤーは、今でもVRMMORPG BulletSや、ただBulletSと呼んでいるけど。
シューティングアシストシステムの基本仕様は、他のシューティングゲームとほぼ同じだが、メニューからアシストシステムをON/OFFで切り替えられる機能が追加されている。
バレットサークルは射撃側にのみ表示される着弾予測円で、弾が当たる範囲を正確に把握できるようになり、精度の高い攻撃が可能となった。
バレットラインは着弾予測線を示すもので、他のゲームと異なり、射撃側にも表示される点が大きな特徴だ。この仕様により、プレイヤー間で戦術的な駆け引きが生まれ、ゲームの楽しさが一層高まっている。さらに、2射目以降ではトリガーに2秒以上指をかけなければバレットラインを照射しない射撃モードになる。この工夫により、さらなる戦略性が求められる設計となっている。
オレはシューティングアシストシステムのおかげで、レイドとPvPでのヒット率が上がった。
これはいける?
そう、これなら待ちに待ったリリース6ヶ月記念のVRMMORPG BulletS RECOIL、つまりPvP大会に出場できる。
大会のエントリー基準はプレイヤーレベルが100以上、2人から6人までのチーム。
予戦で16組まで絞られ、周囲8キロ四方の範囲の本戦専用フィールドに、ランダムに転送されPvPがはじまる。
オレもシューメイもレベルは120を越えているのでエントリー可能だ。
ちなみにVRMMORPG BulletSは、他のプレイヤーに対する無警告攻撃はできないようになっている。プレイヤーがメニューでPvPモードをONに選択することでPvPが可能となり、同じくONにした他のプレイヤーへの攻撃が可能となる。
PvPモードがONの状態は、マップ上のプレイヤー位置情報マーク(【▼】)が、通常は緑色なのが赤色に変わことで確認できる。
PvPでは、他のゲームと同様にHPがゼロになれば死亡判定され、3分から最大10分間はプレイできなくなる。【▼】が【DEAD】に変わるため、勝者と敗者が明確にわかる。脳、心肺、大動脈、肝臓、腎臓などへの致命的な部位への被弾は一発で死亡判定となる。
秀明にペアで出ようと伝えると「たまにレイドで組むカイとユーサクはどうするんだ?」と怪訝顔。
「うん、レイド戦とはちがうPvPだから、息の合った秀明とだけ組みたいんだ」
「でも2人だとどっちかがやられたら、それ以上の戦闘は厳しいんじゃないか? それに俺PvPはちょっと……」と渋る。
オレもあんだけPvPやりたいと言ってはいたけど、実はあまり自信がないのは秀明には内緒だ。だけどここで引き下がったらせっかく待っていたPvP大会に出られない。
「オレ、PvP大会に出るためにこのVRMMORPG BulletS始めたんだけどな〜」
「そういえば一番最初、そんなこと言ってたな……忍は言い出したら聞かないからなぁ」
「リーダーはオレがやるからさ〜 もしオレが先にヤられたら自動で秀明がリーダーに繰り上がるしさ。そしたらPvP大会中の10分ごとのマップ更新(スキャン)も使えるようになるし〜」
「しょ〜がない、2人で出るか!」
なんとか秀明を説得してエントリーした。
2週間後の予戦が始まる、土曜日の20時が待ち遠しい!
◇
初のPvP大会……結果は散々で、予戦落ち。あっけなく狙撃され瞬殺。シューメイも同じようなもんだった。
通常、痛覚は無効になっているけど、VRMMORPG BulletS RECOILでは痛覚が100分の1に設定されている。それでも、かなり痛い。
敗因はアシストシステム仕様の無理解だった。
アシストシステムに頼りすぎたせいで、敵に自分の居場所が完全にバレていた。トリガーに指をかけている間、バレットラインは照射され続ける。
その結果、対峙していた敵以外から狙撃されてしまった。
当たり前だけどレイド戦と戦い方が違うんだ。
単独でダイブしているとき、普段からもっとPvPしていりゃ良かった――
最適解は、2射目以降もトリガーに2秒以上指をかけない限りバレットラインは照射されないことを意識し、撃つ訓練をすることだ。そして、射撃精度を上げるためには、まずバレットサークルを安定させる必要がある。オレは命中率を上げるために、ニーリングやプローンポジションでサークルを安定させ、ラインを出さずに射撃することを中心に訓練してきた。
◇
半年後、第2回VRMMORPG BulletS RECOILの開催が決まった。
前回のミスをこの半年間の訓練で修正したから、今度こそは予戦を通過してやる――このときレベルは140だった。
エントリーの事を秀明に話すと、今回はあっさり引き受けた。前回の瞬殺が悔しかったんだろうな。
オレみたいに普段訓練はしてなさそうだけど、戦術理解は高く本番に強いから安心はしているし、接近戦に持ち込めば勝率は上がる。
エントリーしたプレイヤー数も増えたけど、大丈夫! オレたちならいける!
なんとか予選は通過したけど、本戦の1戦目では、近距離にいた2人をそれぞれ倒したものの、残りのメンバーにやられて敗退した。チームは4人だったんだけど、スキャンでマップ上に表示されるのはチーム名とリーダーの位置だけだから、人数までは握できず、残りのプレイヤーにやられてしまった。
次回は、周囲に隠れている敵にも気をつけないと……ほんとに実戦に近いな。
◇
大会後の半年間、オレは単独でPvPを幾度となく行い、開催が恒例となった第3回VRMMORPG BulletS RECOILを迎えた。
2人ともレベルは160。この頃には、秀明のほうから「エントリーしようぜ!」と言い出してくるようになった。本当に、3度の飯よりゲーム好きなヤツだなぁ。
予選を無事通過し、本戦に進んだ。
前回の本戦1戦目で敗退したことを教訓に、戦略は本戦の戦闘フィールドに転送されるまでの10分間にチーム名と人数を頭に叩き込み、マップ上に表示されるチーム名から人数を把握して、付近の敵から倒すことにした。
訓練通りに射撃精度を上げ、こちらからはライン照射時間を短くし、逆に相手側のラインを目標に撃ち込み、回避行動を連続で行う――
およそ2時間の戦闘後、3チームに残ることができた。
オレはここで気が緩んだのか、10分前には見当たらなかった敵に真後ろから撃たれ、シューメイも善戦したようだったけど敗退。
油断した! しかし謎だ……相手はどうやってこっちの居場所を掴めたんだ?
でも! 3回目の参加で3位! これで賞金獲得圏内だ。あの夢が叶う!
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