第8話 PvP大会3位入賞への道のり

 約3年前のVRMMORPG BulletS初回版は『シューティングアシストシステム』の『バレットサークル』と『バレットライン』がない仕様だったけど、半年後の『Ver.2』から実装された。

 シューティングアシストシステムの基本仕様は『SA○AGG○』とほぼ同じらしいけど違うところはONとOFFが切り替えられ、バレットラインは射撃側にも見える仕様になっているから曳光弾は不要だ。

 ゲーム名も『VRMMORPG BulletS II』と変わりプレイヤーもだいぶ増えてきた。オレを含めた初回版からやってる連中は今まで通りのVRMMORPG BulletSとか、ただ単にBulletSと呼んでるけど。

 オレは、最初のうちはシューティングアシストなんて使ったら腕が鈍るんじゃないかと思っていたけど、そんなことはなくレイドでのヒット率が上がった。

 バレットサークルは『着弾予測円』だから『サークル内のいずれかの位置に着弾する』だし、バレットラインは『弾道予測線』で敵がどこから狙っているかが見えるんで、回避行動しラインを逆手にとって撃てば倒せるから、アシストシステムばかり使っていた。


 これはいける? そう、これなら待ちに待ったリリース6ヶ月記念のVRMMORPG BulletS RECOILつまり、PvP大会に出場できる。

 VRMMORPG BulletSは基本、他プレイヤーに対する攻撃はできないようになっている。プレイヤー自身がPvPを行うことを選択し、メニューで『PvPON』にした場合に限って戦闘フィールド外でのPvPが可能となる。マップ上に自分自身が『PvPOK』と表示され、同じくPvPONにした他プレイヤーへの攻撃が可能となる。

 大会のエントリー基準はプレイヤーレベルが100以上、二人から六人までのチーム。

 予戦で16組まで絞られて、8キロメートル四方の本戦専用フィールドにランダムに転送され、PvPを行う。

 オレもシューメイもレベルは120を越しているのでエントリー可能だ。

 英明にペアで出ようと伝えると「たまにレイドで組むカイとユーサクはどうするんだ?」と怪訝顔。

「うん、レイド戦とはちがうPvPだから、息の合った英明とだけ組みたいんだ」

「ん〜でも二人だとどっちかがやられたらそれ以上の戦闘は厳しいんじゃないか? それに俺PvPはちょっと……」と渋る。

 オレもあんだけPvPやりたいと言ってはいたけど、実はあまり自信がないのは英明には内緒だ。だけどここで引き下がったらせっかく待っていたPvP大会に出られない。

「オレ、PvP大会に出るためにこのVRMMORPG BulletS始めたんだけどな〜」

「ん〜そういえば一番最初、そんなこと言ってたな……忍は言い出したら聞かないからなぁ」

「リーダーはオレがやるからさ〜。もしオレが先にヤられたら自動で英明がリーダーに繰り上がるしさぁ。そしたら10分スキャンのマップも使えるようになるし……」

「しょ〜がない、二人で出るか!」

 なんとか英明を説得してエントリーした。

 二週間後の予戦が始まる土曜日の20時が待ち遠しい!



 が……結果は散々で、予戦落ち。あっけなく狙撃され瞬殺。

 痛さは100分の1に設定されているとはいえ、かなり痛い。通常『痛覚』は無効になっているけどVRMMORPG BulletS RECOILだからなのかな?

 シューメイも同じようなもんだった。

 敗因はアシストシステム仕様の無理解だった。

 レイドと同じようにアシストシステムを頼りにしたため、逆に敵に自分の居場所が丸見えになったのが敗因だ。トリガーに指をかけている間、バレットラインは出続ける。

 当たり前だけどレイド戦と戦い方が違うんだ。

 単独でダイブしているとき、普段からもっとPvPしていりゃ良かった――。

 最適解はアシストシステムは使用するんだけど、射撃制度を上げるためバレットサークルを安定させ、トリガーに指をかけている時間――バレットラインが見える時間を短くして撃つ訓練しかない。

 訓練は命中率を上げ、速射する事に専念。ニーリングやプローンポジションでサークルを安定させライン照射時間を短く。



 それから半年後、第2回VRMMORPG BulletS RECOILの開催が決まった。

 前回のミスをこの半年間の訓練で修正したから、今度こそは予戦を通過してやる……このときレベルは140だった。

 エントリーの事を英明に話すと、今回はあっさり引き受けた。前回の瞬殺が悔しかったんだろうな。

 オレみたいに普段訓練はしてなさそうだけど、戦術理解は高く本番に強いから安心はしているし接近戦に持ち込めば勝率は上がる。

 エントリーしたプレイヤー数も増えたけど、大丈夫! オレたちならいける!


 結果、なんとか予戦は通過。その一戦目、近距離にいた二人をそれぞれが一人ずつ倒したけど、残りのチームメイトにやられて敗退。四人のチームだった。

 10分ごとにマップ上に表示されるのはチーム名とリーダーの居場所だけだから、人数まで把握できず残りのプレイヤーにやられてしまった。

 次回は周囲に隠れている敵にも気をつけないと……なんか本当に実戦に近いな。



 その後の半年間、オレは単独でPvPを幾度となく行い、開催が恒例となった第3回VRMMORPG BulletS RECOILを迎えた。

 二人ともレベルは160。もうこの頃は英明の方からエントリーしようぜ! と言い出してくるようになった。やっぱり本当に『三度の飯よりゲーム好き』なヤツだなぁ。

 今回も予戦を通過し本戦に進んだ。

 前回の本戦一戦目で敗退した事を教訓に、戦略は本戦の戦闘フィールドに転送されるまでの10分間にチーム名と人数を頭に叩き込み、マップ上に表示されるチーム名から人数を把握し、付近の敵から倒す。

 訓練通り射撃制度を上げられ、こちらからはライン照射時間を短くし、逆に相手側のラインを目標に撃ち込みと回避行動の連続……。

 およそ2時間の戦闘後、3チームに残ることができた。

 オレはここで気が緩んだのか、10分前には見当たらなかった敵に真後ろから撃たれ、シューメイも善戦したようだったけど敗退。

 油断した! しかし謎だ……相手はどうやってこっちの居場所を掴めたんだ?

 で、でも! 3回目の参加で3位! これは賞金獲得圏内だ。

 そしたらついに……あの夢が叶う!

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る