05 膨大な遺書の数に圧倒される

 以前に「大刀洗平和記念館に行った」と書いた。特攻隊、といって世間的に有名なのは鹿児島県の知覧だけれども。

 実は(わたしも昨年、大刀洗に行くまで全然知らなかったのだが)福岡県大刀洗町にあった教習場の分校が“知覧基地”なのだった。大刀洗飛行場で飛行技術を学んだ若い人たちが知覧基地に配置されてのち、沖縄方面へ飛び立つことになる。一時期は大刀洗から特攻機が飛び立つこともあったという。


 靖國神社「遊就館」には知覧特攻基地だけではなく、硫黄島の激戦時にお亡くなりになった栗林さんやバロン市川さんの遺品なども数多い。特に栗林さんがアメリカに滞在していらした際に娘さんに宛てた絵手紙の実物や「花嫁人形」などは「圧巻」のひと言に尽きる。


 知覧特攻平和記念館にある遺影などは、あくまでも「知覧基地」から散華された方々関連に特化されたもの。当たり前か。

 ショーケースの中に展示されている手紙だけではなかった。ケースの下には幾つもの引き出しがある。手をかけると、そこにも特攻兵たちの手紙が保管してあった。

 ……とても一日で見切れる数量ではありませんでした。

 それと。

「人生を変えたいなら知覧に行け」との言葉があるが、正直それは言い過ぎだろうと思う。だが自分には、真っ向から否定できない。したいとも思わない。

 だって、それは。

 日本全国から(特に知覧基地に配置されたあとに特攻された若い人は東京都からの招集が多い)来られた特攻隊員だけではなく、彼らの家族の思いまで否定してしまうことになってしまうから。




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