第93話
越前平定と、その後の後処理を簡単に終わらせた僕は、そのまま京に向かった。今年は京で新年を明かすことになるだろう。
京に着くと直ぐに、義兄上に挨拶の使者を送った。まあ多分明日会うことになるだろう。どうせ明日は出仕するし。後帝にも一回は会うだろうな。そして入京の前に、僕が連れてきた部隊のうち、近衛軍を抜いた部隊は返した。そうでないと費用が嵩む。近衛軍は威厳も示せていいから連れて行く。京の民は、綺麗に整列して、僕を守る近衛軍を見て、なんか凄いと思っているようだった。儀礼専門に見えるが一様、かなりの戦闘能力は持っている。大体レベルとしては赤備えと同じだ。近衛軍の中でも洋装の時と和装の時もある。場合によって変えている。そうすることで権威を表しやすいし、その場所に似合わない服装を着ているのはなんか好きじゃない。
僕は今川家京屋敷で1日過ごすと、次の日、出仕した。すごく久しぶりだ。もう1年以上京に来ていない。2年ぶりぐらいだ。こんなことは元服してから初めてだな。それまでは毎年のように行っていたから。
「今川宰相様、お待ちしていました。上様がすぐにでも会うとのことです。」
「わかった」
義兄上は僕が出仕してすぐに家臣を連れてきて、いつもの居室に連れて行かれた。
「義兄上、お久しぶりにございます。」
「彦五郎、表をあげよ。余は気にしない。もうすぐで本物の義弟になるのだ。義兄弟の契りだけではなく、妹を通したな。わかるか?将軍の義弟という立場を。余にも弟はいるが僧門に入っている。ということは一門衆筆頭の今川家の嫡男で余の義弟である其方の立場は盤石だ。今川家とは手を取り合いたいものだからな。」
「はっ」
「めでたいこと続きだ。政子も結婚して、恭子も懐妊した。」
「義兄上、おめでとうございます。」
「口外するなよ。これは一様まだ公開されていない情報だ。流産の可能性がある。生まれるのはまだまだ先だ。」
「しかしおめでたいことには変わりません。」
「彦五郎、ありがとう。それで、越前を平定したようだな。よくやった。これで24ヵ国の守護か。余が仕向けたといえど凄いな。三好はどうするのやら。」
「某も三好についてはわかりませぬが、とりあえずは内政を頑張っていまして、外征はやっていません。」
「そうみたいだな。今、東国は平和だと聞いた。本当に良いことだ。やはり平和は良い。しかしこの平和は束の間だろう。西国では、戦いがまだ起きている。毛利達もどうなるかわからないし、播磨、摂津も然りだ。摂津では三好派と幕府派で歪みあっているみたいだ。彦五郎が注意してくれたおかげで戦いはないが。四国も戦いが起きておる。東国だけではなく、日の本を平和にしなければな。」
「はっ」
「そのためには三好の排除が不可欠だ。」
「まだ早いかと。それに今、今川家では大規模な計画などがあるので、軍は内心動かしたくありません。後、戦は疲れます。」
「わかっておる。余も彦五郎も皆、戦は嫌いだ。束の間の幸せを享受して然るべきに備える必要がある。」
「はっ」
「それに妻を置いて行くなど嫌だしな。」
「はあ?」
「まあ其方もいずれはわかる。我が妹を頼んだぞ。」
「はっ」
「婚儀を京で挙げられないのは残念だが仕方あるまい。其方と政子の間に生まれた姪や甥を見るのが楽しみだ。」
「上様、御台様が会いたいと。」
「何故だ?ゆっくりして欲しいのだが。まあ良い。会いに行こう。彦五郎もついて参れ。」
「はっ」
僕は義兄上に連れられてすごく奥まで入って行った。途中であった鍵の扉からは男性が1人もいなかった。大奥のようなものなんだろう。通りかかる女性達は礼をしながら、僕を何者なのか見定めている様子だ。そして義兄上が止まった。
「恭子、入るぞ。」
「はい」
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