第65話

「今川宰相様、毛利陸奥守様をお連れしました。」

「入れ。」

僕は後ろに竹千代、傍に護衛として工藤昌豊を控えさせながらいった。幕府の書類は結構処理が大変だ。しかし僕が代行することによる義兄上がやる書類の量が減るらしい。僕しかある程度の重要度を得た書類は代行は出来ないのだと。僕は藤枝に言われたことを気をつけながら話しかけた。

「毛利陸奥守、ご苦労であった。私に会いたいとのことだが何用だ。」

「今川宰相様、初めまして。毛利陸奥守です。」

「口上は良い。本題を申せ。」

「はっ、尼子、大友との和睦を仲介してください。」

「私に対してではなく義兄上に頼んだほうが良いのではないか。」

「某は未だ上様に謁見できていませぬ。謁見するにあたって今川宰相様の口添えがあればと思いまして。今川宰相様は上様の信頼厚く、特別幕政参与という特別職に任じられていると聞きました。今川宰相様にお口添えいただければ上様も必ずややってくださると思いまして。」

「うむ、良いが、借りを作って良いのか?すきを見せたも同然だ。」

「ただでとは申しませぬ。これを」

「金は要らぬ。私は賄賂などというのは嫌いだ。借り一つで良いのなら受けよう。」

毛利はよく考えているようだった。借り一つなんて何でも使えるからなこの後、これを理由に何を要求されるかわからない。よく考えているのは名将のことだろう。此処で受けなければ、どうなるのかはわからない。此処で受ければほぼ確実になる。どちらを選ぶのやら。

「わかりました。よろしくお願いします。」

「よく決断したな。義兄上には口添えしておく。確か明日であろう?」

「はっ」

毛利は帰っていった。今日は会議だけだが。そういえば三好はなぜ参加しているんだろう。

「藤枝を呼べ。」

「はっ」

工藤が外に控えている人間になんか言ったようだ。直ぐに藤枝がやってきた。

「若殿、お呼びと聞きましたが、何か書類にありましたか?」

「いや、そうではない。単純な疑問だ。何故三好は幕府の会議に参加している?」

「はっ、三好殿は評定衆に任じられています。それ故かと。現在は奉公衆なども評定衆に任じられていて、そこでの会議が行われています。今日のもその会議の一環です。某も参加を京都奉行として許可されています。」

「そうか。其方がいるなら安心だな。余は京にいるわけではないため、わからぬこともあるはずだ。其方に教えてもらえると助かる。」

「はっ、必ずや若殿をお助けいたしまする。」

「うむ、頼んだ。」

会議結構緊張する。重要な人物も多い。それに多くは僕より年上だろう。頑張らなければ。








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