第58話
次の日、僕は御所に向かった。帝に会うためだ。京に来た時は必ず帝に謁見している気がする。それに帝は僕を気に入ってくれているようだ。大変嬉しいことだ。いつも通り公家に先導されながら、帝の元に行った。今日は僕より格上ではなかったが、前一緒に蹴鞠をやって仲良くなった人だ。たまに文を書き合うほどだ。久我道方殿は同じ源氏として僕の遠い親戚でもあるしな。
「源朝臣氏真、よく来たな。面をあげよ。」
「はっ」
「其方の父も参ると聞いたぞ。」
「はっ」
「会ったことがないから楽しみだ。」
「帝、恐れながら今日は何故、某を呼ばれたのですか。」
「何も用はない。ただ其方に会いたかっただけだ。しかし、あの小さかった義藤が結婚するとは。時が経つのが早いのう。其方も16か。」
「はっ」
「初めて会った時は13であったな。まだ幼さが強かったが今や少しずつ大人の顔立ちだ。後背も伸びたであろう。前より背中が大きくなっておる。本当に成長が若いものは早い。方人にも合わせて見たいものだ。」
「皇太子殿下ですか?」
「そうだ。まあいずれ会えるであろう。」
「それで恐れながら帝にお願いがあるのですが。」
「なんだ?」
「はっ、我が臣にして義兄上の命により、今川家の臣下として京の治安などを守っております京都奉行の藤枝氏明に官位を授けていただきたいのです。」
「うむ、よかろう。」
「ありがたき幸せ。できれば、美濃介にしていただきたいのですが。彼の者は某の服心ですゆえ、近くに置きたいのです。現在は京を任せていますが。」
「わかった。正六位下美濃介を授けよう。後に勅使に命じさせる。」
「ありがたき幸せ。心より感謝を申し上げまする。」
「京都奉行ということは公家との交流があるであろう。それを考えたのであろう。其方らしい。他のものへの気遣いを忘れぬとは。」
「ありがたきお言葉。」
「加賀一向一揆をおさめたそうだな。」
「はっ、父上が。奴らは私利私欲に走る仏敵だ。仕方ないであろう。褒めて使わそう。」
「褒めの言葉は父上へ。」
「そうだな。会うのであったな。今川には感謝しておる。これからも幕府、朝廷、天下安寧のために励め。」
「はっ」
帝に謁見を終わった僕は、藤枝に官位を当てられて安心していた。また帝の懐の深さに感心していた。そこへある人が歩いてきた。周りの公家が道を避けているので僕も道を開けた。そこに歩いているお方が僕の目の前で止まった。
「見慣れぬものだな。名は?」
「今川彦五郎氏真にございます。」
「今川宰相か。会ってみたかったぞ。此処で会えるとは。父上に会っていると聞いてないやってきたが運が良かった。余は方仁だ。」
「皇太子殿下でしたか。何もしらず申し訳ございません。」
「気にするな。其方がしらなくて当然だ。面をあげよ。」
「はっ」
僕の目の前には少し背が低い、結構な歳になっていそうなお方がいた。
「余の部屋にて話そう。用事はないのであろう?あるならそちらを優先してくれ。」
「用事は有りませぬ。」
「それは良かった。着いてきてくれ。」
「はっ」
僕は皇太子殿下と話すことになった。それにしても驚いた。こんな偉い方と話すとは。義兄上や帝には何回もあって少し慣れているし、義兄上の前では緊張しなくなったが、皇太子殿下は高貴なお方だ。しかしそんなお方にも名が知れているとは今川も成長したと思う。三年、いや元服前だったら名前で誰かわかる人は家臣団とか領民以外いなかっただろうに。尾張を取ったことで名を上げた感じだ。
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関係ないけどSnowManデビュー4周年おめでとう!(本当に関係がなさすぎる)
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