第39話

義兄上が書状にて降伏を促した結果、遂に蒲生は降伏した。しかしここまで苦戦させるだけ、名将だ。僕は本領を少し削るだけで許した。

「蒲生賢秀、降伏して良かった。其方には京攻めの先鋒を任ずる。兵士の狼藉や略奪がないように、監視いたせ。それは許せぬことだ。見つけたら、捕縛せよ。」

「はっ」


上様を奉じた、今川軍は観音寺城を出発して、上洛を開始した。もう邪魔をするものは細川以外いない。途中で降伏した兵士も加えて、6万以上の大軍勢は将軍家とその後ろ盾である今川家の威光を示した。全軍常備兵なのもあって、5月という田植えの時期でも普通に軍事行動を起こせるのは大きい。

「若殿、申し上げます。細川軍と先鋒の蒲生をはじめとする六角衆が接敵。現在かなり戦いが激しくなっています。」

「そうか。細川は動いたか。京に入れたくないのだろう。」

「若殿、後方にて比叡山に動きがありと。後詰めが急いで防御の準備をしています。」

「挟み撃ちか。面倒な、まあ良い。後は獅子刃軍だどうにか対処するでだろう。」

「はっ」

「危機的状況になったら教えてくれ。それまでは現地指揮官が行え。そうでないと判断が遅れるし、こちらからはよくわからぬ。僧だというのは気にするな。武器を持っている時点で武士と同じだ。」

「はっ」

「彦五郎はすごいな。このような状況に焦らぬとは。余は鍛錬はしているといえど初めての戦場だ。暗殺危機は切り抜けてきたが、戦さにはなれぬ。」

「慣れて気分のいいものではありませんよ。某も平和であることが嬉しいですし少しでも自軍の被害を減らしたいから、こうして新たな武器の開発を行なっているのです。」

「余も頑張らなければな。軍事行動はせぬにしろ、諸国の戦乱を減らす必要がある。」

「はっ」

細川軍は寄せ集めだが、な。

「由比正純、こちらへ。」

「はっ、」

「赤備えを率いて細川軍と比叡山にそれぞれ奇襲をかけよ。」

「はっ」

「義兄上、これで戦況は我ら有利に変わるかと。」

そして日が暮れるぐらいの頃、細川軍を打ち破ったとの報告があった。しかし晴元は逃したそうだ。比叡山に関しては無事殲滅して、包囲をするように命じた。まあ何もするつもりはないが。仏様に祟られたくはないからな。

「藤林長門守おるか、」

「はっ」

「細川晴元を追ってくれ。このようなことに関しては伊賀が1番長けているであろう。頼んだぞ。」

「はっ、若殿が下さった信頼に負けぬ働きをしましょう。」

しかしこれでは今日中に京に入るのは難しい。1日野営して、明日は絶対に入ろう。早くしなければ三好が何をするかわからない。三好は信用できるわけではないからな。






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