第18話 告白なんて聞いてない!

 この遊園地はジェットコースターなどの激しめなアトラクションが人気なため、ゆっくり回るだけの夕方の観覧車はもちろんガラガラで待ち時間なんてあるはずもなく、乗り場の受付おじさんも半分寝ながら案内してた。何かあると危ないので起きて接客して欲しいところだ。


俺と二号ちゃんの乗るゴンドラはゆっくりと登っていき地上から少しずつ離れていく。二号ちゃんの顔はどこか少し寂しそうで、少し触るだけで割れて壊れてしまいそうな悲しげな表情だった。


「二号ちゃん、今日は付き合ってくれてありがとうな、俺ひっさしぶりに遊園地来たけど楽しかった」


 俺がかけれるのは『何かあったのか』と問う言葉でも『大丈夫か?』と心配する言葉でもなく素直な今の俺の気持ちを表した『感謝』の言葉だ。


「神無さん」

今まで黙っていた二号ちゃんが急に口を開いた。


「ウチ、神無さんが好きです。」


「一緒にゲームをやってくれてウチが無理言ってもついてきてくれて、ちょっと面倒な子って思うかもしれんけど、ウチは神無さんの隣が一番安心する。だからっ…!」


 俺は二号ちゃんを優しく抱きしめる。これが今俺ができる最大の愛情表現。


「ありがとう、俺も二号ちゃんの隣にいてやりたい、ゲームなら俺もいくらでも相手してやるしこれからも『友達』でいてくれないか?」


「ウチも神無さん隣にいたい、絶対離れたくないわ…」


そう声を震わせる二号ちゃんの両手が強く俺のシャツを握っているのが感触でわかった。

 

 いつの間にかゴンドラは頂上まで回ってきていて。遊園地の近くにある大きな湖がよく見えてとても地獄の手前とは思えない綺麗な景色だ。


「見て、湖だ綺麗だな」


「神無さんこっち向いてください」


 次の瞬間俺が感じたのは二号ちゃんのロボットとは思えない精巧に作られたまつ毛の束と唇の柔らかな感触だった。


「!?」


「うふふ、これで神無さんはウチのものになった」


語尾に♡がつきそうな甘ったるい声で二号ちゃんが嬉しそうに自身の唇を指でなぞる。


「こりゃまずいな…」


ゴンドラが徐々に地上に近づくが長い沈黙が続いた。俺の心の中にはもしこの場面を地獄庁の誰かに見られていたら…という恐怖が渦巻いていた。


◇ ◇ ◇


—————「んで、そんなことがあって二号ちゃんは神無さんにメロメロと…よし!めっちゃいい結果!」


黒夢ロボは満足そうに謎の書類でできたタワーを見ながら俺に向かってサムズアップする。


「ぜんっぜんいい結果じゃないです!だってこの子、昨日深夜に俺の家までストーカーしてきたんですよ!?」


「二号ちゃん?それは流石にやめとこ?てかここから勝手に出ないでね?」


「いやや〜!ウチは神無さんに変な虫がつくのを無償で防いであげてるんや!」


二号ちゃんは俺の足に引っ付きながら猫が威嚇するようにシャーッと声を上げる。


「うーん…これは本当にどうしようかな〜?」


流石の黒夢ロボも真剣な顔になって考えている。

明日から俺も仕事なのに本当にまずい。俺の休日は大きな不安を残して終わりを迎えた。

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