第14話 地獄の遊園地なんて聞いてない!

「…さん!神無さん!起きてください!朝ですよ!」

「んぁ?朝?」


二号ちゃんの声で目が覚めた。朝日なんて見えやしないし、ここに住んだら時間感覚やらなんやらが狂いそうな気がする。


「そうです!今日は遊園地行くって言ったじゃないですか!」

「あぁ、そうだった…すっかり忘れてた…うぅマットレスじゃないから腰が痛い」


 昨日の夜…じゃないや、今日の深夜一時頃、ソファーに寝転んだ瞬間疲れが濁流のようにどっと押し寄せてそのままぐっすり寝てしまったようだ。


「もうう!折角の、デ、デートなんですから…!」

二号ちゃんは赤面しながらポカポカ俺の背中を叩く。

「おぉ気持ちいぃ…」

「もおおお!」


「あ、神無くん起きたんだね!えらいえらい!」


そう言いながら自室から黒夢ロボが出てきて俺の頭を撫でる。

「俺は黒夢部長の子供じゃないんですよ!?」

「まあまあ、ちょっと撫でるくらいいいじゃん?」

「まぁ…次から俺のこと撫でるの有料ですよ?」

「えぇ…!?お金取るの!?」

黒夢ロボの顔が青ざめる。いまだにロボットじゃない疑惑は全否定できない。


「冗談ですよ…」

「よかった…っていうか神無くんと二号ちゃんは今日デート行くんだよね?」

「そうですけど…?」

「突然ですが神無くんには変装をしてもらいまーす!」

「変装って…まぁしないと無条件で捕まるか…」


 数分後黒夢ロボが持ってきたのはマスクや、サングラスや帽子など

全部つければ、あら不思議、立派な不審者の完成である。


「いや、絶対何か間違えてますよこれ!」


黒夢ロボって思ったよりポンコツなのかもしれない。…って満足そうに腕を組むな!


 —————俺はそんなこんなあって今現在遊園地のゲートの前にいる。

ちなみに今の俺の服装は白シャツにカーディガンを羽織り黒いチノパンを履いているいたって平凡という感じのコーデだが、頭から上はマスクに帽子にサングラスと言ったthe不審者なので色んな意味で不自然だ。


今の現世ならマスク着用はまだわかるが、地獄には流行病は流行していないのでマスクだけでも意外と目立つ。


「神無さん!はよ行こ!」


そうやって俺の手を引いて二号ちゃんはずんずんとゲートに向かって歩く。

花柄のスカート姿、正直言って二号ちゃんはタイプではないが結構可愛いと思う。


 俺は黒夢部長からもらった入場チケットを見せる。

「こんにちは!お二人でのご来場ですね!」

「本日カップルでしたらカップルサービスができるんですけど失礼ですがお二人、ご関係は?」

「「!?」」


カップル割なんてあるのかよ…!?てかここで宣言しないといけないのか?相当な公開処刑じゃないか…?


「え、え〜と…」

チラッと周りを見ると入場ゲートには俺たち以外の客でごった返してきていた。

流石にカップルサービスは無しで行くか?


「は、はい!ウチら…カップルです!」

結構な声量で二号ちゃんは高々にカップル宣言した。

(ふぁ?!)

「ありがとうございます。それでは地獄の巡りの旅に行ってらっしゃーい!」


 そ、そういうコンセプトなのね…っていうか結構大きな声でカップル宣言したけど…

「ママー、あのふたり“かっぷる“なの?」

「あはは、そうだね〜」

純粋無垢な子供に指をさされるのって意外と心にくるものがある。


「二号ちゃん、なんかごめんな、こんな格好の男が恋人じゃなんか嫌だろ?」

二号ちゃんの方から目を逸らす。

すると二号ちゃんから突然手を握ってきた。

「わっ…私は神無さんでもいいですよ…?」


 俺の手に汗が少し滲む。二号ちゃんはロボットなので汗は出ない。

地獄の遊園地の中だが今だけは少しだけ極楽を感じている俺が確かにいた。

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