普通のモブはチートを持ってません!~ゲーム世界のモブ悪役に転生したんだけどチートも才能もなかったけど死にたくないから【知識】を使って頑張って強くなることにした。チートはないけど無双しないとは言ってない

にこん

第1話 悪役に転生

「おいおい、まじかよ」


俺は鏡の前に立って呟いてた。


「まさかレイナスに転生するなんてな」


起きた時からなんとなく気付いてたけどさ。

いつもと違う感覚だった。


それで気付いたんだ。


異世界に転生してるって。


で、本当に異世界なのかを確かめるために鏡の前に立ったんだけど、ばっちり異世界だった。


しかもただの異世界じゃなかった。


(ゲーム世界か。タイトルはたしか【ラストラグナロク】とかそんな感じだったな)


そのゲームに登場するレイナスというキャラに転生していた。


悪役だ。


悪役でもかっこいい悪役ならまだいいんだけど。


単刀直入に言うと、スネ〇みたいな悪役。


とにかくジャイノスという悪役の下でヘコヘコしてるだけの太鼓持ちというようなキャラ。


んで、ジャイノスの立場が悪くなったら主人公サイドに立つという、そんなキャラだった。


そんなイラッとするようなキャラなんだが、番外編とかでは活躍して意外と憎めない。


ちなみにユーザーの間では


愛称として【冷えたナス】とか【ひやなす】とか呼ばれてたりした。

由来は作中のとあるキャラがこんな呼び方をしたからだ。


まぁそんなキャラに転生したわけだ。


スネ〇と違うところがあるとすれば、割と美形なところだった。


その美形も相まって割とクズなところもあるんだが。

まぁ今は考えても仕方ないか。


「とりあえずこの先のことを考えるか」


俺の中ではかっこいい悪役にはこうあって欲しいという理想像があったりする。


それは


一に強い

二に一匹狼

三にクール


というもの。


そしてレイナスは残念ながらそこそこ顔がいい。イケメンの部類に入るだろう。

ということでレイナスには俺の理想像としてあって欲しいんだが。


レイナスをその理想にするためには俺が努力する必要があるわけだ。


「努力、するしかないな、うん。がんばって強くなろう」


自分に言い聞かせるように頷いて鏡から目を離す。


そのときだった。


コンコン。

扉がノックされ、声をかけられる。


「お坊ちゃま、入室してよろしいでしょうか?」

「(メイドかな)あぁ。いいよ」


ガチャっ。

中に入ってきたのはやはり予想した通りメイドだった。


どこか抜けたような女の子。


ボーッとしているように見える。

見た目通り眠そうな動きをして俺の横に来ると服に手をかけてきた。


ビクッ!

いきなりのこととで驚いた。


「な、な、な!なにしてんの?!」


するとキョトンとしたような顔をするメイド。


「何を、といいましても。いつもやっていることでございましょう?」


そう言ってテキパキと俺の服をひん剥いていく。


それを見て思った。


(あー。そういえばレイナスって貴族だもんな。貴族ってすげぇよな。こういうのもやってもらえるんだし)


うんうん。すごいと頷きながら俺は脱がされていった。


そうして着替えを終わらせると俺から距離を取ってぺこりと頭を下げる。


「失礼しました。なお、この後のご予定ですが可能な限り階下にお越しください。お客様がお待ちです」

「あ、あぁ」


ぺこり。

また頭を下げて部屋を出ていく。


そのときに名札が見えたが


(なるほど。あの子はシーナ、というらしいな)


覚えておこう。


それから俺はお決まりのやつをやって見ることにした。


「ステータスオープン」


呟くとウィンドウが出てきた。



名前:レイナス

レベル:3

種族:人族

年齢:10歳



というようなことがズラーっと並んでいた。

年齢から分かるが本編が始まる前の時間軸だ。


(スキルとかは無いのか。特技もなさそう、才能もないんだろうな。なるほど、そんなんならスネ〇ポジにもなるよな)


どうやらレイナスというキャラは戦闘能力に関してはまさにモブ同然らしい。


次に


「アイテムポーチ」


【現在所持しているアイテムはありません】


俺はアイテムウィンドウを閉じた。


うん。

基本的な操作、というかシステムについての確認がこれでできた。

土壇場で困ることもないだろう。


(それにしても便利だよな、このステータスシステムというものは)


なんてことを思っていると扉の向こうから声が聞こえる。


「お坊ちゃま。お客様がお待ちなんです」

「うん。今行くー」


そう叫び返して俺は急いで外に出ることにした。


廊下に出るとすぐに階段が見つかってそこを降りていく。

するとすぐに一階について、そこは玄関になっていた。


その玄関には


(あっ……こいつ)


一目見て誰か察せる奴が立っていた。


くっちゃくっちゃ。

下品にガムを噛んでいるのはジャイノスだろう。


(まさかこんなに早く会うとは。それにしてもこいつは丸いな。体型が)


そう思っていたらジャイノスの隣に立っていた父親らしき人間が口を開いた。


「君がレイナスくんだね?」

「えぇ」


俺が頷くとジャイノスパパは俺に封筒を渡してきた。


【果たし状】


ジャイノスが口を開いた。


「俺様が書いたんだぞそれは。ちゃんと読んでおくように!今度からお前は俺様の子分だからな!」


ジャイノスパパがガツンと頭を殴った。


「読んでください、だろジャイノス」


どうやら父親の方は常識人らしい。


「それに果たし状ではない。もっと言い方があるだろ?」


そう言うとぺこりと頭を下げたジャイノスパパ。


「詳しいことは君のお父さんが話してくれるだろう。そちらを当たって欲しい」


そのままジャイノスを連れて家を出て言った。

ジャイノスは憎たらしくガムをくちゃくちゃ噛みながら俺を小馬鹿にしたような顔をしていた。


そしてその顔のまま。


「じゃあなー。【冷えたナス】。ジャイノス様って呼ぶ練習しとけよwwwギャハハwww」


(ムカつくなあれ)


そう思いながら俺は父親のところに向かうことにした。

まぁ、原作を履修済みの俺ならだいたい何が起きようとしているのかは把握できるが。


父親の部屋を探して訊ねたが


「大旦那様はお忙しいようです。用件は伺っているので私からお話しますよ」


俺はシーナに話しかけられた。


そんなシーナに頷いて話を聞くことにした。


話を聞いたら大体のことが分かった。

どうやら一週間後、俺の家とジャイノスの家との親睦会があるそうだ。この二家だけじゃなく実際には他にもいくつかの家が集まるらしいが。


そこで俺とジャイノスが戦うそうだ。


そして原作の流れなら俺は負けてジャイノスの子分となる。


のだが。


(負けられんな)


俺はそう決意した。

一週間、なにができるか分からないが最善は尽くそう。


百獣の王は例え児戯じぎに等しいような事でも手を緩めず本気で取り組むものだ。


つまりは


(あいつは全力で泣かす)


ということだ。


勝負まで1週間。

やれることをやろう。



そして俺は理想の悪役となる。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る