誘われた遊び ほぐれた緊張
凪風ゆられ
遊び
「勉強なんてしてねーで、こっちであそぼーぜ!」
声のする方へ目をやると、同じクラスの男子たちが机を囲んで消しゴムで遊んでいた。
少し思案した後、僕は断った。
「そっか。んじゃまた誘うわ!」
彼は友人たちの遊びに戻り、僕は英語の勉強に戻った。
今の自分に遊んでいる暇はない。志望校に受かるには、たくさん勉強して知識を得てテストでよりよい結果を残さなければなかった。
気を緩めていい時間なんて存在しないんだ。
──だと言うのに、彼は何度も僕を誘ってきた。
その度にやんわりと断っていたのだが、だんだんと面倒になっていき態度で分からせることにした。
遊んでいるなか一人嫌な態度を取っていれば、次から話し掛けられることはないだろう。
彼らが遊んでいたのは消しピンというものらしい。
自分の消しゴムを指で飛ばして、他の消しゴムを机の上から落とす。
なんと単純なことだろうか。
変な態度など取らずに圧勝してしまえばいいのだ。
完膚なきまでに叩き潰すつもりだった。
しかし僕の消しゴムは思うように飛んで行かず、逆に相手に飛ばされてしまった。
再戦を繰り返すこと四戦目。授業の始まりのチャイムが鳴り響く。
結局目的は果てすことができなかった。
だけど、なんだか心が少し軽くなったような気がする。
張りつめていた何かが徐々に緩んでいくように。
僕はその日を境に、休み時間はよく彼と遊ぶようになった。
***
十年ぶりに彼から連絡がきた。
内容は相談に乗ってほしいとのこと。
いつの日かのお礼ができると思った僕はすぐさま返事をした。
久しぶりに会った彼はずいぶんと痩せていて、顔色も健康とは遠い感じだった。
肝心の相談内容と言うと、仕事の意識が四六時中抜けないせいで、体と精神の疲労が限界に近いということらしい。
今の彼は肉体もそうだが、心も廃れ切っている。
ならば楽しいと思えることをして、笑って、嫌なことから解放させるのが一番だ。
彼が教えてくれたことのように。
「それじゃあさ、一旦寝よう」
「その後でたくさん遊ぼう! 仕事のことは終わったら考えればいいさ」
誘われた遊び ほぐれた緊張 凪風ゆられ @yugara24
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます