第2話
すごく涼しい。
寒くない手前の心地よい涼しさ。
ああ、あの暑さからこの涼しさは気持ちが良い。
しかもすごく静かだ。
何かが頭を撫でてくれた。
何だろう。
そう思って目を開ける。
宝石が二つ。
宝石は、魔性を帯びて人間を狂わせるって話を何故か思い出した。
どうしてこんなに綺麗なんだろう。
そう思って手を伸ばしてしまう。
「おやおや、ふふふ」
触れた白はすごく冷たかった。
「キミ、まだこんなに熱かったんだね…気付かなくてゴメンね?」
ひんやりしたものが額を覆う。
心地好くて思わず力が抜ける。
「お水、飲む?」
そう言われてしまうと急に喉が渇いた。
思わず唾を飲み込む。
飲める唾が無かった。
「ゆっくり飲んで、ね」
竹筒の水筒に入っていた水は、とても冷たくて美味しかった。
夢中で飲んでしまう。
ちょっと詰まって咽る。
ちょっと苦しい背中を擦られ、ふふって低い笑い声。
濡れた口元を布で拭かれる。
「うん…まだ寝てなさい」
とんとんって背中を叩かれる。
そしたら意識がぶつっと途切れた。
次に目を開けると、とても綺麗な人が俺の顔を覗き込んでいた。
「起きた?気持ち悪くない?」
「はい…なんだかすごくスッキリしてます」
「それは良かった」
そう言って綺麗な人は俺の頭を撫でてくれた。
「あ…もしかして俺、階段で」
「うん、熱中症だったんじゃないかな?」
「あ、ありがとうございます」
「…ほとんどボクの責任だし、ね」
綺麗な人が変なこと言った。
暑いのが自分の責任、という風に聞こえた。
それはどういう意味なんだろうか、と問う前に、
「あの」
「うん?」
「俺、膝枕して頂いております?」
「うん。そのほうが良いかなと思ってね」
俺はゆっくり起き上がった。
駐車場の休憩所だった。
休憩所と言っても木造の手摺に囲われた、大きな傘のような屋根の下にベンチがあるっていう奴。
剥き出しだがらめちゃくちゃ暑いし虫も飛んで来るはずなのに今はすごく涼しい。
蝉の鳴き声も聞こえない。
虫も全然飛んでない。
「コラ、急に動いちゃダメだよ」
綺麗な人が俺の額に手の平を添える。
とても冷たくて気持ちが良い。
「あ、りがとうございます…」
「ねぇ」
「はい」
「キミの名前、教えて、ね?」
「俺は、
綺麗な人が俺をじっと見つめる。
もう分かっていた。
この人は。
いやこの御方は。
神様だ。
黒の御着物。
白の御身体。
悍ましいほど美しい造作。
人間ではありえない宝石じみた双眸。
左は白目に黄色が眩い。
右は黒い目玉、灰色になったり黒になったり、紫になったりしていた。
今は緑と橙を行き来している。
真っ白な御髪は艶が強すぎて眩しい。
「ボクは
凄絶な笑みだった。
身震いすら許されない程の。
俺はその瞬間、有明さんに恋をした。
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