赤飯を河原で炊く。キミたちは強かに生きる。そして閃光、この身果てようと。
鮎河蛍石
滂沱号泣! 君も河原で赤飯を炊けばいいじゃない!
2023年その年の夏はとりわけ暑い夏だった。
特に近畿の最高気温は京都と大阪がしのぎを削り、その日の列島最酷暑ポイントの座をワイドショーの天気予報で奪い合う。
一方そのころ鈴鹿峠のお膝元、東海道は土山宿の道の駅にて一人の男が怪しげな支度を行っていた。
祝わねば————
男の思考はその一点に尽きた。
右手にアタッシュケース。左手に七輪。背には背嚢。
そんな重装備かかえた一見にも百閒にも、兎角奇妙で怪しい風体の男が田村川は畔に立つ。
□ □ □ □ □
SNSそれは人生と社会の縮図だ。
プラットホームによってユーザー色に特色がある。
Xと名を変えたそのSNSは
わたくし鮎川蛍石もXユーザーだ。
嗜む程度にプライベートな奇行の記録をツイートしたり、スペースで見境なく人と絡みて揉めにけり。
「ややっ! TLから若人の
□ □ □ □ □
ジェイソンがアホのジョックを八つ裂きにするとき振るうサイズ感の巻き割り用マチェーテの峰で、大きな炭を適度な大きさに砕く。
ガスコンロで砕いた炭に火を熾し七輪に火を入れる。
市販の赤飯セット(2合)と水310CCをメスティンに入れ30分待ったものを七輪にかける。
メスティンが吹きこぼれてきたら重しを乗せ、七輪の火力を搾る。
吹きこぼれがなくなり、メスティンから音が聞こえなくなったら、蒸らしたタオルで逆さにひっくり返したメスティンを包み10~20分放置。
以上が赤飯を炭火で炊く方法だ。
書く分には簡単だが、設営から撤収までに約2時間かかった。
近隣住人にワンチャン警察を呼ばれ叱られる危険を感じつつの野外クッキングであった。
背骨を駆け巡るスリルの感覚がたまらないアウトドアであった。
□ □ □ □ □
赤飯を炊く事。
それは古来より我が国に伝わるポピュラーな寿ぎの儀式である。
材料の小豆は単体でも魔除けのアイテムだ。
そして栄養価の高い米と炊くことで無病息災の願をかける。
小豆の紅、もち米の白。
紅白が混ざり合う赤飯の色に、陰陽思想の構図を見る。
森羅万象。陰と陽の混ざり合った対極的なバランスの中に私たちは生きている。
男と女。女と女。男と男。それらに留まらない性と性がぶつかり合い混ざったり離れたりして社会を形成する。
私は一人田舎の片隅で暮れなずむ夕日を背に思うのだ。
世に生まれ出たすべての生に賛美と祝福有れと。
二合の炊き立て赤飯を掻っ込みながら祈った。
みんなそれぞれ勝手に幸せを掴みやがれと。
この塩味はゴマ塩かそれとも—————。
□ □ □ □ □
カップル成立おめでとうございます!
以上をもって祝辞といたします。
赤飯を河原で炊く。キミたちは強かに生きる。そして閃光、この身果てようと。 鮎河蛍石 @aomisora
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