第1話 宝石少女と迷子の子供
宝石少女は学生だ。
アスファルトの道を歩いて、家へ帰る。
初夏。
夏の始まりの始まり。
空気はひんやりとしていて、夕方で空が熱く見えても、あたりの空気は寒々しかった。
その日は、これから冬でも始まるのではないかと、皆が思うような気候だった。
小学校、中学校、と卒業してきた宝石少女は今は高校生。
もうじき、将来の事を考えなければならない時期だった。
だから宝石少女も、他の学生達と同じように頭を悩ませていた。
しかし、宝石少女が将来について頭を悩ませるのは、そんなに長くはなかった。
なぜなら、その道の途中に迷子の子供がいたからだ。
はだしで、そしてパジャマ。
外に出るには、あまりにも危なっかしい見た目の子供だった。
だから、宝石少女は「どうしたの?」と話しかける。
しゃがんで、腰を低くして、子供を怯えさせないように。
すると子供は、答える。
「家に怖いお化けがでたから、急いで逃げてきたの」と。
子供は家に帰りたくないと泣き出した。
宝石少女は、どうしようと悩んだ。
だから、お菓子をあげる事にした。
宝石少女は普段からお菓子を持ち歩いていたので、少し安堵した。
それは、子供のお小遣いで買えるような、十円の棒状のお菓子だった。
子供は、「ありがとうお姉ちゃん」と言って、お菓子を食べ始める。
気が紛れて、落ち着いた頃合いを見計らい、宝石少女は子供に尋ねる。
どうして、家に帰りたくないの?
と。
すると、子供は答えた。
「家に怖いお化けがでたから。入って来たんじゃなくて、突然家の中にでてきたんだ」
子供には霊感があった。
けれど、それを人に話すと気味悪がられて、遊んでくれなくなったり、嫌われたりして遠巻きにされたりする。
だから、誰にも相談できなかった。
その話を聞いた宝石少女は、大変だったね、と言って子供を抱きしめた。
そして、手のひらに宝石を生み出して、その子供に渡した。
それは願いの叶う宝石。
持っていれば、お化けを見る事がなくなるはずだと。
子供は、本当に?
と言いながらも、その宝石を手にとる。
そして、本当かどうかわからないけれど、綺麗だから欲しいといった。
子供は正直だった。
宝石少女は苦笑して、あげるよただで。
という。
子供は、先ほどまでの暗い顔から一転して、喜びながら家へ帰っていった。
その日から、子供は家の中で「怖いお化け」を見る事がなくなったという。
だからもう、家から飛び出して外にでてくる事もなくなった。
子供と宝石少女があったのは、これきりだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます