離婚式準備

榮樂奏多

第1話

『ねぇサラ、もしこのまま僕が死んだら、再婚する前に離婚式を上げてくれ。僕は死んでも君のことが好きだ。だから、君が他の人と再婚するとしたら、僕が君に執着しないように、離婚式を上げてくれ。そうすれば君の僕への想いが無いことになる。そして僕は君を諦めることができるだろう。』




病室のベッドに身体を預けている夫のリアムが妻のサラに言った。

リアムは24歳にして癌が見つかった。

それも進行が早く、余命半年と宣告を受け、もうすぐその時が来ようとしていた。

そんな時にリアムがそう言った。




「なんてこと言うのよ。まだ死ぬって決まった訳じゃないのに。それに私だってあなたを愛してる。離婚なんて、そんな悲しいこと言わないで。」

『サラ、、でももしものことだ。僕が死んでしまえば、君は1人になってしまうだろ。君が悲しい日々を、寂しい日々を過ごすのは、僕も嫌なんだ。』

「寂しくなんてないわ。だってあなたは死んでも私の傍にいてくれるでしょ。私からは見えないとしても、あなたと一緒にいられるならそれでいいの。それにもしもあなたが死んでしまったとして、離婚式なんてどう挙げるのよ。」

『式は僕の遺影を...』




なんて言うのは言葉だけ。

本当は私、不倫してるのよ。

ごめんなさい、リアム。

でもあなたの事を愛してることは本当よ。

あなたに癌が見つかって、余命宣告を受けた時に、1人になるのが怖くなってしまったの。

ごめんなさい、ごめんなさいリアム。




その日の夜、リアムは死んだ。

サラはリアムの病室で泣き叫んだ。

でも同時に、もう1人の愛する者との結婚が可能となった喜びもあった。

でもリアムを愛していたことも事実だ。

サラは翌日、姻族関係終了届を出した後、リアムに言われた通り離婚式をしようと、式場を借りるにはお金がかかるので、家で式をするために準備を始めた。

もう1人の愛する者、ラウールと共に。

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