第7話 JK四天王
五時間目の授業でスプリングセミナーについての話をして、六時間目の授業も特に問題無く無事に終わり、帰りのホームルームの時間を迎えていた。
「明後日スプリングセミナーが行なわれるので明日は学校は休みです! スプリングセミナーの準備をしっかりしておいてくださいね〜。それでは解散です、さようなら〜!」
帰りのホームルームが終わるとチカの席に、レイナが歩いてくる。
「やっほー! 一緒に帰ろー!」
「はい!」
二人が話している所にリョウコとユリもやって来た。
「良かったら僕達とも一緒に帰らない?」
「はい、喜んで!」
チカ、レイナ、リョウコ、ユリの四人で一緒に下校することとなり、皆で一緒に下駄箱の前まで移動した。
「明智さん、丹羽さん、待ちなさい!」
靴を履き替えていざ下校しようというところでチカとレイナが背後から急に誰かに呼び止められた。
「武田先生!?こ、こんにちは……」
武田に蛇のように睨まれて震えるチカだったが、どうにか声を絞りだして挨拶をした。
「こんにちはじゃないでしょう! あなた達さっきの休み時間、廊下を猛スピードで走ってましたよね。しかも私が注意しようとしたのに無視して素通りしましたよね!」
「えー、そんなことあったっけー?」
レイナは本気で覚えていないのだが、武田はその態度を煽られていると感じたのか余計にヒートアップした。
「あなた達には一度、徹底的に指導する必要があるようです。生徒指導室に来なさい!」
武田はチカとレイナの首根っこを思い切り掴むとそのままズリズリと引きずり始めた。
チカは大人しく引きずられていたが、レイナは手足をジタバタさせて抵抗を試みる。
「ちょっと待ってよ〜! さっきスプセミの話をして班員達と顔合わせしたから、流れ的にこのままスプリングセミナー編に入ると思うじゃん! なんで生徒指導なんて……」
「スプリングセミナー編ってなんですか!? ごちゃごちゃ言ってないで大人しく来なさい!」
どんなに激しく暴れても武田の腕から逃れることができないことを悟ったレイナは抵抗することをやめた。
「私達、校門の前で待ってるからゆっくり怒られてきていいわよ〜!」
二人はユリとリョウコに見送られながら生徒指導室へ連行された。
普通の教室と同じくらいの広さなのにポツンとテーブルとパイプ椅子が置かれているだけの無機質な部屋、生徒指導室へとチカとレイナはやってきた。
「とりあえず座りなさい」
武田とテーブルを挟んで反対側のパイプ椅子に二人は腰を下ろす。
二人が着席したのを確認すると武田は話を始めた。
「まずは先程の休み時間についてですが、あなた達は廊下を走って注意されたにも関わらず無視して走り続けましたね」
「本当にすみません! 授業に遅刻しそうで無我夢中で走っていたので先生に気付きませんでした。以後気をつけます!」
チカは素直に非を認めて、きちんと武田に謝罪した。
「あの時はしょーがなかったんだよ、ちゃんと反省してるから許しておくれよ〜」
それに対してレイナは軽い口調で、本当に反省しているのかどうか客観的に判断がつかない様子だ。
「今回の事だけじゃありませんよ! あなた達は入学式でおしゃべりをしていたり、眠そうに授業を聞いたり、あなた達に指導すべきことはまだまだ沢山あるんですよ!」
だんだんヒートアップしてきたのか武田の声はどんどんと大きくなっていき話すスピードも少しずつ早口になっていた。
「まぁまぁ、そんなに怒らないでよ武田っち〜」
「た、武田っちですって!?」
レイナは怒っている武田を落ち着かせるために言ったのだが、それがかえって逆効果となり武田の怒りは頂点に達した。
「丹羽さん! まずあなたは目上の人への敬意がありませんね、私にタメ口で話したり変な名前で読んだりして!そんなんじゃいつまでたっても……」
「だから〜、いったん落ち着いてよ武田っち〜」
レイナは武田の言葉を遮ると突然、椅子から立ち上がると座っている武田の目の前まで歩いていくと武田の顔をジっと見つめた。
「な、なんですか!? 人が話している途中に立ち上がるなんて何という…」
レイナは怒っている武田の頬に突然、口づけをした。
怒りで真っ赤になっていた武田の顔は更に赤くなり、赤というよりワインのような紫色になっていた。心なしか顔から湯気が出ているようにも見える。
「あっ……あぁっ……あっ……」
突然の出来事に頭が追いつかなくなっていた武田は声にならない声を上げた。
「レイナちゃん!? いきなり何をするんですか!」
近くで見ていたチカも相当狼狽している様子だ。
「と、とにかく! 今後はこのような事が無いように気をつけてください! ほら、さっさと帰ってください!」
しばらくあたふたしていた武田だったが、ようやく正気を取り戻すとチカとレイナを教室から追い出した。
お説教から解放されて生徒指導室を後にした二人はリョウコとユカと合流するために校門目指して歩いていた。
「レイナちゃんはああいうこと誰にでもするんですか?」
「ん? チカ何か怒ってる?」
レイナは鈍感なようでチカの心情が全く理解できていないようだ。
「もう! レイナちゃんは魔性の女です!」
チカはほっぺたを膨らませるとぷいっとそっぽを向くよくな動作をした。
そんな会話をしているうちに二人は校門の前まで到着した。
「チカ、レイナ! ようやくお説教が終わったのね? 一緒に帰りましょ!」
「お待たせしてすみません。待っててくれてありがとうございます!」
無事に合流した四人は家に向けて歩き始めた。
十分程歩くと四人は駅に到着した。
「じゃあ僕達は電車で帰るからここでお分かれだね」
「明後日、スプセミで会いましょう! 楽しみですね!」
「このままお別れするのも味気ないねぇ。ちょっと皆で円陣を組んでもらえる?」
「どうして円陣を組むんですか?」
「いいから、いいから!」
レイナがそう言うと、他の三人は戸惑いながらも円陣を組む。
四人で円陣を組めたのを確認するとレイナは大声で叫んだ。
「よし、JK四天王の結成式だ!」
「ちょ、ちょっと!? 何よJK四天王って?」
ユリはJK四天王という呼び名が少し恥ずかしいのか、あまり乗り気ではないようだ。
「何か格好良いですね、JK四天王!」
「うん、僕も良いと思うよ!」
「そうでしょ、そうでしょ!」
チカとリョウコからは好評なのがうれしいのか、レイナは満足気に頷く。
「もう、皆が言うなら良いわよ……JK四天王で……」
「それじゃあ行くよ! JK四天王結成だぁー!」
「おーー!」
レイナの呼びかけに応じて、他の三人も大声で叫んだ。
少女達の元気な叫び声が辺り一帯に響きわたった。
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