第3話 休み時間
一時間目の授業をどうにか乗り切り、十分間の休憩時間が始まった。
チカはレイナはどうしているのかと思いレイナの席を見ると、爆睡している彼女の姿が目に入った。
(レイナちゃんさっきから眠そうでしたし、授業も難しくて睡魔に負けてしまったのですね……)
チカはレイナの席へ行き、爆睡しているレイナの肩をトントンと叩く。
「レイナちゃん、授業終わりましたよ!」
肩を叩かれたレイナの体はピクンと動き、しばらくするとレイナは顔を上げ目を開けた。
「う〜ん…おはよん、チカ」
「ずっと眠っていたようですが大丈夫ですか? 私のノート写します?」
「いいの? じゃあお願いしようかな〜」
チカは自分の机からノートを取り出し、レイナに渡した。ノートを借りたレイナはものすごい集中力ですばやくペンを走らせ、一分もかからず授業の内容を全て写した。その集中力を授業中に発揮すれば模範学生となれるのに実にもったいないことである。
「授業中どうしても寝ちゃうんだよねぇ。どうにかならないかな〜?」
「カフェインを摂取すると良いのではないでしょうか? 中学までとは違って高校には自動販売機がありますし、何か買いにいきましょう」
「いやぁ……ちょっとねぇ……」
チカが飲み物を買いに行くことを提案すると、レイナはなぜか渋るような表情をした。
「どうかしましたか?」
「チカ…私今月金ねンだわ」
「でしたら私が奢りますよ!」
「本当? ありがとう、愛してるよチカ!」
レイナの表情はパァッと明るくなりチカの頬にキスをした。
「え!? レイナちゃん!?」
チカの顔はりんごのように真っ赤になり、心臓の鼓動は普段の何倍も速くなった。
(高校生活始まったばかりなのに、いきなりかわいい女の子にキスされてしまいました…)
「ほらほら、休み時間終わっちゃうから自販機に行こう!」
「あっ、ちょっと待ってくださーーい!」
突然の出来事に呆気にとられて動けないチカだったがレイナがどんどん進んでいくのに気づき、慌てて追いかけた。
廊下をしばらく歩くと二人は自動販売機の前にたどり着いた。
「さぁレイナちゃん好きなのをどうぞ!」
チカは財布の中から何枚か小銭を取り出しレイナに渡した。
「カフェインの入ってるの飲み物、どんなのが良いのかなぁ〜?」
「これなんてどうでしょう、ブルーブル!眠気が吹っ飛ぶしとても美味しいですよ!」
チカは翼を授けるテレビCMで有名なエナジードリンクを指さした。毎日飲み続けたのに翼が生えないと訴訟を起こされたことがあるあの有名なエナジードリンクだ。
「んー、ブルーブルか……」
レイナはどの飲み物を買うべきか少し考え込んだ。
「この前ネットで仕入れた情報によると、エナジードリンクよりもコーヒーの方がカフェイン量が多いらしいんだよね。だからコーヒーを飲むことにするよん」
そう言うとレイナは自動販売機に小銭を投入して、缶のブラックコーヒーを購入した。
「レイナちゃんブラックコーヒー飲めるんですか!? 大人です!」
「いや、幼稚園の頃飲んで苦すぎたからそれ以来飲んでない」
「え?大丈夫なんですか?」
「大丈夫大丈夫。あの頃より大人の味覚になってるからね!」
その後チカはお気に入りのエナジードリンク、ブルーブルを購入した。
そして二人で缶で乾杯をして、飲み物を飲み始めた。
「やっぱりエナジードリンクは最高です!」
「うげぇ、コーヒー苦い! まだ克服できてなかったよん…」
レイナは一口飲んだだけでコーヒーの苦味に耐えきれずギブアップした。
すると突然、レイナはチカが持っていたエナジードリンクを自分の口へと運んだ。
「ぷはーっ! やっぱりこっちの方が美味しい!」
「えっ、ちょっとレイナちゃん!?」
「あー、ごめんごめん。私のコーヒーもちょっと飲ませてあげるからさ!」
レイナはコーヒーの缶をチカの口にぐいぐいと押しつけた。
「ほら、グイッといっちゃえ! 私と間接キスだよん!」
「え、間接キス?」
間接キスというワードにチカは戸惑っている様子だ。
「ほらほら飲んで飲んで!」
チカは半ば強引にブラックコーヒーを飲まされた。始めは苦いと思っていたがしばらくするとなぜか二口目を飲みたくなっていた。
「意外と行けますね。この苦味がなんか癖になりそうです」
「えー?ただ苦いだけじゃないのぉ?」
チカはコーヒーをぐいぐいと飲み干す。
「はぁ〜美味しかったです。ブルーブルは全部レイナちゃんにあげますよ!」
「え、本当? ありがとう、チカ大好き!」
レイナはまばゆいほどの笑顔でチカをギュッと抱きめ、頬にキスをした。
(欧米ではキスが挨拶代わりなようですし、レイナちゃんは欧米寄りの性格なのでしょうか?)
先程とは違って冷静な心理状態のチカは、レイナの生態について分析をしていた。
「やっぱりコーヒーよりエナジードリンクだね! 眠気がすっきりしたよ」
二人はカフェイン入りの飲み物を飲んだため、心なしか少し目がシャキッとしていた。
「これで次の授業も頑張れますね」
「あれ? チャイム鳴ってない?」
「あ、早く教室に戻りましょう!」
二人は教室に向けて猛ダッシュした。
「こら、廊下を走らない! あなた達はこの短期間で何回怒られれば気が済むんですか!?」
途中、生活指導担当の武田に怒られたが気にせずスルーしてダッシュを続け教室に戻った。
まだ授業担当の先生が到着する前だったので、どうにか遅刻は免れた。
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