可愛い子と踊る遊ぶ眠る

狐照

可愛い子と出会う

侵略行為をしないと生きている実感が湧かない血族に生まれたから、俺は昨日も今日も未来もずっと、生物を殺してる。


瞳から光が失せてく瞬間が俺はたまらく好きだ。

だけど、血族からはいちいちすんなってよく叱られた。

一より多くをって、もうしつこい。

あんまりにもしつこく言い含めようとするから俺は、血族をマウンティングすることにした。

全員、踏みつけた。

背中の骨を折ってあげた。

そうしたらもう誰も俺に文句言わなくなったので、俺は安心してひとりひとつ二つを大事に奪えるようになった。


一個の星を侵略して人型生物を絶滅させて、別の星へと移ってまた侵略して絶滅させて。

そうやって侵略絶滅行為を成功させ続けたもんだから、俺たち血族は慢心した。

んで、とある星で、結構な痛手を負ったのだ。

結構死んだ。

結構削がれた。

今も虐められている。

俺はそれを横目に、一人の青年と楽しく遊んでいる。

俺のお気に入りの子。

何度殺しても生き返って、俺と遊んでくれる可愛い子。

この星の、英雄のひとりだ。


血族が結構やられてしまった要因は、この星に英雄十傑なる者が居たからだ。

そもそもこの星の住人は全員戦闘民だったのだ。

戦うことに慣れていた。

だってモンスターってやつ?それがそのへんウロウロしてるんだもん。

そりゃあみんな戦闘民族になるよね。

しかもそのモンスターの中でも強い個体が進化して、リーダー化してチーム組んだりもするらしい。

厄介な力を持った個体がいっぱいいる世界。

なのに生き残ってしかも文明まで発達してる。

そりゃあ、慢心してた血族じゃあ勝てないさ。


情が無いのかお前はと頭領から怒られたけど、そもそも俺にお前らは情があるのか?と聞き返したら、ぐっと喉を詰まらせたからそれが正解。

俺、お前らがどーなってもいいし、お前らも俺がどーなってもいいんだろ?

そう問うとみんなの眼の色が肯定してくれたので、俺は好きにすることにした。

んで、好きにしてたら、英雄十傑と出会ったのだ。

十傑と言うからには十人居て、英雄と言うからにはまあまあ強かった。

なんで十なのかなーと喧嘩しながら考えて、ああ、所持してる大層な武器に選ばれたってことなんだなって理解した。

だって武器、めっちゃ固いんだもん。

壊れない玩具、さいこーって思った。

ものすごく楽しかった。

でも、結局全員背中の骨を折ってあげた。

ひとりだけ、特別に可愛がった。

それが、俺の可愛い子。

真っすぐで心が強くてみんなを気遣って優しい子。

自分が辛くてもいいって子。


戦闘民族だから、魔術?魔法?ってのが発達してて、蘇りの魔法ってのがあるそうだ。

それは英雄の武器に備わってる唯一の魔法らしくって、十人みんな後で蘇るんだって。

可愛い子が教えてくれた。

馬乗りになって首絞めて聞き出したんだけどね。


「ねぇ、約束しないか?」


「…なに…を…だ…」


何度も落として気付けたから、可愛い子の意識は朦朧だ。

口の端から涎垂らして、目も真っ赤。

弱ってるのに、瞳の色強く輝いてて、ああ可愛い。


俺は頬をなでなでした。


「君の命ずっと俺にくれるなら、俺は君以外、もらわない」


弱弱しい息。

色々痛いんだろうなぁ、顔色悪い。


なのに。

可愛い子。


「わかった…くれて、やるから…」


俺に、くれるって、言ってくれた。

同意だ。

嬉しい。

すごく、嬉しい。


俺は可愛い子の頭を撫でて「約束、だよ?」念押ししてから首を絞めてあげた。

舌を突き出して目を見開いて俺を見て、ああ、可愛い。

絶命の瞬間まで消えぬ光の煌めきは、なにもにも代えがたい。

俺は夢中で首を絞め、殺してあげた。





それから何度も、可愛い子を殺した。

色んな殺し方で、可愛がった。

あっさり。

じっくり。


それでもこわれない心が可愛くて可愛くて、俺はもう夢中になった。

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