第17話「ゼス一行、近衛隊長と一緒に門番ンタン改め悪魔アイバキップと戦うのこと。(前)」

「魔力無き近衛隊長よ、貴様を喰らってその魂を魔王陛下に捧げてくれようぞ!」

 ンタン改め悪魔アイバキップ。ンタンの地味な顔に反して、その容姿はいかにも悪魔といった様相で、すなわち派手であった。

「ちっ、お前ら!戦えるか?」

 ゼス達に戦えるかと問うロベンテ。それに対して、

「当然です!」

「ええ!」

と答える、ゼスとクヴィェチナ。今までの鬱憤晴らさんとばかりに発したその返事は、非常に元気のよいものであった。……だが。

「フン、ガキどもに何ができる!"これでもくらえ"!」

 悪魔アイバキップはこれまでにゼスやクヴィェチナが見たことのない魔法を放った。無理もない、その魔法の系統は彼達の学んできた魔法の系統とは全く異なるものであったからだ。一方で近衛隊長は一応見たことがあったのか、

「ちぃっ、厄介な魔法を使いやがる!」

と怒鳴るのだった。

「知ってるんですか、あの魔法を!」

「ああ、坊主も嬢ちゃんも、おそらく多少は魔法を使えるんだろうが、あの悪魔が使う魔法はおおよそ人間には使えない魔法だ、だが、あの魔法の欠点はな……」

 と、突如として悪魔アイバキップにとびかかるロベンテ。

「外した時に絶望的な隙ができるんだよ!」

「ちぃっ、まさかかの術をくらって生きている奴がいるとはな!」

「生憎だが、師匠はその術で俺を庇ってやられたんだよ!」

 ごろごろともみ合うロベンテとアイバキップ。悪魔といえども、殴り合いになると筋肉がものを言う。そして、その悪魔は幸運にして、そこまで筋肉の強い悪魔ではなかった。そして、

「とどめだっ!」

 ロベンテの剣がアイバキップを貫く!

「ぐおおおおおっ!!」

「やったぁ!」

「ふふっ、さすがロベンテさんね」

 思わず、歓声を上げるゼスとクヴィェチナ。

「!

 離れろ!」

「「えっ」」

「なーんちゃって、な。

 ……さすがに今のは痛かった。人間にしてはよくやったと誉めてやろう。お前も師匠の後を追うがよい!」

 アイバキップによる痛恨の一撃がロベンテを襲った!

「ぐふっ!?」

 今の一撃で、ロベンテは2,3回バウンドしてごろごろと転がった。

「「ロベンテさんっ!」」

「お前らっ、今のうちに逃げろっ!」

 見た目ほど大した怪我ではないのかゼスとクヴィェチナの身を案じるロベンテ。それに対して、

「で、でも……」

「行こう、クヴィちゃん」

戸惑うクヴィェチナと頷くゼス。そう、ゼスはゼンゴウの腕前からロベンテが何を言いたいかわかったようだ。それは……。

「ゼスっ!?」

「今のうちに、兵士の皆さんを呼んでくるんだ」

 ……そう、ロベンテとてただ二人を逃がすわけではなかった。彼の勝算は、まだ破れてはいなかった。

「……ロベンテさん、死なないでね!」

「ふふっ、俺を誰だと思ってる!」



 一方、ヤセガエル亭では。

「お嬢ちゃん!そんな体調でうろつくと危ないよ!」

「でも、みんな戦っているのに……」

 宿の外に出ようとするルーチェを引き留めるヤセガエル亭亭主。確かに、ルーチェの肌はまだ雪のように白く、髪の色も戻り切っておらず、今の状態で行っても足手まといになるのは明らかだった。と、その時である。

「……亭主さん、王宮の周りっていつもあんな感じなんですか?」

「ん?なんのことだい?……確かに、妙だね」

 王宮の周りが妙に騒がしい。それは通常、あまり見られない光景であった。

「……まさか!」

 乙女の勘なのか、何かを感じ取ったルーチェ。一方で、

「あいつがいる以上、みんなそう簡単にくたばるもんかい、かのン・キリの雷光がくたばるようなら、この国もおしまいだよ!」

と、豪快に笑う亭主。確かに、ロベンテほどの腕前の人間が王宮で敵の手にかかって討ち死にするようならば、王族の死もまた確定的であったからだ。

「ううっ……」

「そんなにみんなが心配なら、今は治療に専念することだ。幸いにして、魔力は戻ってきつつある。だから休むんだ!」

 そして、真剣な眼差しに戻りルーチェを部屋に戻す亭主。それはロベンテとの約束でもあったし、傍から見て今の彼女はいかにも危なっかしかった。

「…………」

 渋々、といった様子で部屋へと戻るルーチェ。だが、彼女の瞳の炎は、まだ燃え尽きてはいなかった……。

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