第4話「ゼス一行、パーティーを組み旅立つのこと。(中)」

「ところで、ルーチェちゃんは何で回復魔法が使えるんだっけ?」

「父が神官で、幼いころから仕込まれまして」

「そういえば、神官様ってなんで回復魔法が使えるのかしら?血筋?」

「いえ、神官という職業は古来より、対象と話し込むために回復魔法に必要な概念の共感性に富む者が多かったので、そもそも神官という職業自体が回復魔法と相性の良い訓練を積んでいまして……」

 と、とたんに口数が多くなるルーチェと名乗った少女。それに対し、

「ふーん……」

とよくわからない者によくある生返事をするゼス。一方で、

「ししょー、そういうのは教えてくれなかったわね……」

不満げに呟くクヴィェチナ。彼女自身、魔法にある程度の自信はあったのか、「そういった」魔法を教えてくれなかった師に何か思うところがあったようだ。

「ししょー?」

「うん、ゲヘゲラーデン師匠。凄腕の魔導士だったらしいんだけど、いつからか村で養生しているみたい」

「ああ、クヴィェチナさんはゲヘゲラーデン様に魔法を習ってらしたんですね?」

 ルーチェも、ゲヘゲラーデンの凄さは知っているらしく「様」付けで反応した。まあ、彼女の場合は誰に対しても丁寧に接することが多いのだが。

「うん、こいつも一応教わってるらしいんだけど、サッパリみたい」

「さっぱり?」

 そうなんですか?と言いたげなルーチェに対して、

「……」

沈黙するゼス。それは、認めたくなかったからだが、事実上の肯定と言えた。

「だから、クヴィェチナさんとパーティーを組んだのですか?」

「ああ、うん、そうだよ」

「はあ、私はてっきり……」

「「てっきり?」」

 思いの外、声がハモる二人。それを聞いてルーチェは奇妙な気持ちになったのか、

「いえ、それよりも、早速旅立ちますか?」

と、提案のふりをしてごまかすのだった。

「それはまずいんじゃないかしら」

「僕も、そう思う」

 だが、二人してその提案を退ける。なぜならば……。

「?」

「ええとね、ルーチェ。ここから王宮までって歩いて何時間かかるかわかる?」

「ざっと、40分といったところでしょうか」

「それは、あの森を抜けたらの話ね。普通は迂回するから、80~100分はかかるわ」

 あの森。通称「くらやみの森」と称されるそこは、魔物の楽園とでもいうべき場所であった。

「あら」

「あんな森を抜けるのは、僕らがやっていいことじゃない、もっと強い人間のやることさ。もう昼は過ぎてるから、明日でもいいんじゃないかな」

「……それも、そうですね」

「第一、宿って夜になると急に高くなるのよ?」

「そうなんですか?」

「……ルーチェちゃんは、世間知らずなんだね……」

「ご、ごめんなさい」

「いや、別に謝ることじゃないと思うけど……。

 それで、今日はそれぞれの家に泊まるとして、親にも報告した方がいいよね?」

「それも、そうね。パパは反対するかもしれないけど、ししょーの言いつけならば、逆らえないもんね♪」

「はは……」

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