第2話

もう、タイトルは覚えていないが、俺が転生してしまったこのゲームは魔法がある世界での学園を舞台にしたRPGだった。


特徴としてはキャラとの会話での選択肢にどう答えるか、やクエストの達成状況などで物語が変わるマルチストーリ性というところにある。


要はノベルゲーにRPG要素を足したものである。


そして、俺が転生してしまったアルカ・バーナードとはいわゆる主人公へのかませ犬。お邪魔キャラだ。


ルート次第では敵組織の幹部として登場することもあるが、主人公に明確に敵対したルートでは必ず殺されている。


ではそれ以外のルートではどうなのかというと、序盤のルート分岐イベントである初学年最後の決闘に敗れ、学園を退学している。


つまり、このアルカ・バーナードというキャラクターは死ぬか学校を中退するかの二択しかないのである。


まあ実家が貴族なら学校を中退しても一生引きこもって遊べそうなものだが残念ながらそうはいかない。


内の両親はこの世界の貴族の中では優しい方だがさすがに穀潰しを養ってくれるほど優しくはない。


つまり俺がまともに生きるには原作のストーリーを改変しなくてはならない。


まず変えられる点は決闘に負けないこと。


これが一番シンプルだ。


懸念点は俺が主人公に勝てるまで強くなれるかというところだが、このアルカ君、かませ犬の割にはかなり強い。


作中では才能にかまけて努力をしなかった怠惰で嫌味な奴なのだがそのくせしてまあ強い。


決闘イベントでは序盤のくせに終盤でも通用するようなスキルを使ってくるし、

一部のルートではラスボスにも匹敵する程の力を得ている。


だから、強さに関しては正直あまり心配していない。


むしろ前世では存在しなかった魔法やスキルを使うのが楽しみなくらいだ。


それにゲーム内でのアルカはあくまで才能だけでそれほどの力を持っていたのだ。


おそらく才能だけなら主人公にも勝る程だろう。


その才能をひたすらに磨けばどうなるのか?


もしかしたらギミック無しでは倒せなかった"裏ボス"さえも真っ向から叩き潰せるほどに強くなれるかもしれない。


それほどまでのポテンシャルを、このアルカ・バーナードという男は持っているのだ。


閑話休題


二つ目の候補、これは更に簡単だ。


傲慢な振る舞いをしなければいい。


そもそも彼が落ちぶれる原因は自分より下のものを見下して嫌味な発言をしていたことが発端に当たる。


普段からずっとこのような言動をしていたせいで彼は周りの人物から嫌われており、主人公にはなにかと馬鹿にしてくる、実力だけはある嫌な奴として目の敵にされる。


そう、つまりは他人を馬鹿にするような言動を慎めばいいだけの話。


それだけでまともな人生を送れるのだ。


ゲーム内のアルカはなんともったいないことをしたのだろう。


まあ、これだけの才能を持って生まれたのならそんな性格になるのも分からなくもないが…。


ともかく、俺がちゃんとした人生を送るには思ったよりもハードルが低いということが分かったとこで、一番大事なことを確認しよう。


それはつまるところ、この世界はゲームなのか?ということ。


もし全てがゲームのシナリオ通りに世界が動くようになっているのなら色々な努力も全て無駄になってしまう。


まあ、しかし三年間生きてきたがその答えはNOだと言える。


人と会話すればゲームのNPCのように同じことしか話さない、なんてことはない。


更に、それよりも大きな、動かぬ証拠がある。


今、俺の手からは火が出ている。


まだ、小さく弱々しいが確かに存在している。


「はは、は…。やった…!やったぞ!これで"証明"ができる…!あはははは!」


ゲーム内のアルカは闇と水の魔法しか使えなかった。


これは敵としてのステータスという意味だけではなく、設定としても魔法の属性全てに適性があるが、一切努力をしなかったため最も適性のある闇と水しか使えないという文言がある。


つまり、もしこの世界がゲームならば俺は闇と水以外の属性の魔法は使えないし、使えるよう努力することもできないはずだ。


しかし、俺は火属性の魔法を使えるように努力できたし、今現在使うことができている。


つまりこの世界はゲームではなく、あくまでゲームの世界をベースにした現実。


ストーリーは変えることができる!


「あははははは!はははははははは!」


嬉しくて笑いが止まらない!


フィリルとの約束を無視してでも火属性の練習をした甲斐があった!


お陰で確信が持てたよ。


「おれはもっとつよくなれ…」


「アルカ?慣れない内から一人で魔法の練習、それも一番適性のある水か闇じゃないなんて…何度言い聞かせれば分かるんですかねー?」


「る…?」


「あなたはまだ三歳児なんですよ!何回私に危ないって言わせれば気が済むんですか!」


「うげぇ…、フィリル。なんでここが…」


おかしい、俺は絶対に見つからないように隠れたはずなのになぜバレたんだ…。


「うげぇ、じゃないです。あのですねー、前にも教えましたけどあなたの魔力はかなり大きいんです。姿を隠したって魔力を隠さなきゃ意味がないですよ」


「いや、まえにおしえてもらったほうほうでかくしてたんだけど…」


「ああ、あれですか。あんな初歩の闇魔法であなたの魔力を隠しきれるわけがないでしょう。」


「え、なにそれ?そんなけっかんがあるってきいてないんだけど?そんなだいじなことをおしえないなんてきょうししっかくじゃない?」


「じゃあ、勝手に約束を破るあなたは生徒失格ですね。そもそも魔力の隠し方を教えろなんて、バレないように魔法の練習がしたいっていう魂胆が透けて見えるんですよ。ですので私はテストした訳です。あなたが約束を守るかどうか」


「ひどい!せいとをしんじないなんて!このおにきょうし!」


「そもそもあなた、これで約束を破ったの何回目でしたっけ?あなたは前科のある詐欺師に金をあずけられますか?分かったならお仕置きの時間です」


俺はなにも言い返せなかったので無言で【ダークボール】を放つ。


「む…全く、何するんですか。いきなり人に向かって魔法を撃つなんていい度胸じゃないですか。確かにあなたの無詠唱での行使には目を見張るものがありますが、所詮はその程度。さあ、観念して下さ…い?あれ、どこへ?」


バカめ!それはただの目くらましだよ!


俺はお仕置きから逃げるために全力で逃げた。





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