34湯目 北信州
道の駅はくしゅうで、1年生組二人に花音ちゃんが注意をするという出来事があった後、再度出発。今度は極端に1年生が速く進み、私が大きく引き離されることはなかった。
まもなく「新国界橋」という橋を越えると、長野県に入る。
道の駅信州
長野県は、南北に長い独特の形状をしているが、この長さゆえに、北部と南部ではまったく気候が違う。
つまり、北信州では雪が降っても、南信州では愛知県に近いため、温暖なのだ。
山梨県から国道20号で入る場合も、同じく中央高速道路で入る場合も、必ず通る場所がある。
諏訪だ。
諏訪地方、諏訪湖。つまりそこを通って迂回して南下、あるいは北上するしかない。特に南信州経由で岐阜県や愛知県に行く場合、この南アルプスと呼ばれる巨大な山が邪魔をして、真っ直ぐに行けないのが特徴だ。
人は、その歴史を通して、「山に挑んで」きて、山にトンネルを掘って、自然に打ち勝ったようにも見えるが、21世紀になっても、いまだに克服できない山が存在する。
南アルプスの山は、峻厳で、過去に何度もトンネル工事をしたのに、その度に崩れて工事が中断になったところもあるという。まさに自然の脅威だった。
ともかく、私たちは今回、北に向かう。
諏訪湖までは国道20号が続き、そこから
そのまま真っ直ぐ行くと、国宝で有名な松本城がある、北信州の中心都市、松本市に入る。
だが、私たちは国道から外れた、とある道の駅に立ち寄った。
道の駅今井恵みの里。
「うわっ。山がめっちゃ綺麗!」
思わず叫んでいたのは、美来ちゃん。
ここからは、すでに「北アルプス」に変わっているが、雪をかぶった雄大な山々が存在感を示すかのように立ちはだかっていた。
長野県と言えば、この「山」がある意味、名物で、どこにいても雄大な山が見える。
登山家にとって、憧れの地でもあるからだ。
「そうですねー」
こっちはこっちで、マイペースなのどかちゃんがお茶を飲んでいた。
しかも、
「くっしゅ」
何やら可愛らしいくしゃみがしたと思ったら、美来ちゃんだった。
「寒いっすね」
「だから言ったじゃない。その格好で寒くないの、って」
出発時に私が言ったことを思い出して、聞いてみる。
実際、北信州は標高が高い。
標高が1000メートルも高くなると、それこそ東京と北海道くらいの気温差があることもおかしくないのだ。
つまり、10月中旬という「秋」の時期の信州をナメてはいけない。
ということを諭すと、美来ちゃんは渋々ながらも、
「わかりました。ほんなら、のどか、上着貸して」
と、すぐさま相棒の彼女に頼っていた。
「いいですよー。どうせそんなことだろうと思ってましたし」
こっちはこっちで、抜け目ないというか、友達の体調の予測までしていたか、と思うと油断ならない。
少し休んで出発となった。
残りは1時間程度。
あっという間に、到着した中房温泉。
そこは、文字通り「山の中にある秘境」の温泉地だった。
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