7湯目 湯田中渋温泉を目指して
ということで、次の土曜日。
二手に分かれて、目的地に向かうことになった。何気に、温泉ツーリング同好会としては、こういうケースは初だった。
1年生組の二人は、午前6時22分発の電車に乗り、塩山から甲府、松本、長野、信州中野を経由し、11時36分に湯田中に着く予定で出発。
一方、私と花音ちゃんは。
少し遅れて、7時に待ち合わせ。
この時期、日の出が4時台とかなり早いが、私たちは後輩たちに合わせて、少し遅めに出発となった。
待ち合わせ場所に使っている、いつものコンビニに行くと。
「どうも」
相変わらず、不機嫌な猫のような目をして、黒いライダースジャケットを着た、花音ちゃんが、愛車のホンダ CBR250RRを眺めながら缶コーヒーを飲んでいた。
渋い、というかおっさんくさい、と思いながらも私は挨拶をかわし、出発となる。
当然、先頭は私より速い花音ちゃんに譲るが。
念の為に、釘を刺しておいた。
「速く進みすぎないように」
と。
ルートは、国道20号、甲州街道から国道152号を抜けるコースが一番近い。
のだが、今回は時間もあるので、あえて別ルートを進むことを私は提案した。
そのコースとは、あえて幹線道路の甲州街道を使わず、裏ルートとも言える国道140号や県道を進み、
そのまま国道140号を進み、長野県佐久市に入り、県道を伝って、
約4時間半。休憩を入れると5時間はかかるルートだった。
「かったるいですね。高速使ったら3時間で着きますよ。いや、私なら2時間で着きます」
と、豪語していた花音ちゃんをなだめるため、私が用意した言葉は、
「行き当たりばったりも旅の醍醐味だよ。速ければいいというもんじゃない」
だった。
渋々ながらも納得してくれた花音ちゃんを先頭にして、出発。
実際、この選んだルートは割と快適だった。
何しろ国際20号、甲州街道は「混む」。場所によっては片側2車線になるが、交通量の絶対量が多いから、いつもどこかの信号機で詰まっていることが多い。
ところが、裏ルートの国道140号や県道は、交通量自体が少ないから、一部は混んだとしても、全体的に見れば、「流れている」ことが多い。
このルートで正解だった。
実際、常に最速を狙っているような花音ちゃんの性格から考えると、甲州街道なんて、イライラするだろうから。
そのイライラが私にも伝わると、こっちまでいたたまれなくなる。
旅は順調だった。
出発から1時間半後。
山梨県
右手には雄大な八ヶ岳連峰が見えていた。
花音ちゃんには、先程立ち寄った道の駅にらさきで、あらかじめ伝えておいた。
「
と。
その清泉寮。
そこは、高原の牧場的な雰囲気の場所で、ソフトクリームが美味しいことで知られている。
バイクでのツーリングに欠かせないもの。それは甘い物、つまりソフトクリーム。
私は彼女と共にこれを食することを狙ったのだ。
その清里。
かつて80年代のバブルの頃は、東京から観光客が押し寄せたと言われているが。もはや見る影もないほど寂れていた。
だが、清泉寮自体はやっていた。
そこで、私たちは休憩を取ることになったのだ。一応、ここも山梨県北杜市。だが、山一つ越えるともう長野県になる。
標高1400メートルに位置する、高原のリゾート、清里。
夏には少し早いが、涼しい風が吹いていた。
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