歪愛

村崎愁

第1話 歪愛

胸を焦がすほどの恋。

私には熱烈に恋焦がれている人がいる。


裏切られようが嘘をつかれようが構わない。

好きだ、愛してるなどという言葉では片付けられない。


人生や命を捧げられるものならそうしたい。

私の命であなたにかかる火の粉が掃われるならば喜んで捧げる。


毎日毎日、四六時中あなたのために呼吸をしている。

何度も裏切られた。

それで嫌うこともない。むしろ様々なあなたの表情が見れて、喜びに満ちている。


私を呼ぶ声、馬鹿にした態度、下卑た笑い。

他の人に向ける視線でさえも私のものにしたい。


あなたの中に入り込んでその目から様々なものを見たい。

その耳から声を聞き、共に言葉を発せられたらどんなに幸せだろうか。


なぜこんなにも愛してしまったのか。わからない。

最初は単純に憧れを持っていただけのはずなのに。


あなたは何もなかった私の人生に灯りをともしてくれた。

真っ暗闇の心に色を与えてくれた。


それだけでいい。

それだけで充分なはずのに、もっともっとと欲が出てしまう。

あぁ、あなたの血肉になれるのなら。


そうだ、あなたを私の中に取り込むことならばできるかもしれない。

私の中であなたは永遠に生き続ける。



気が付けば私はあなたを殺して食べていた。

あなたの顔は包丁の穴だらけ。

愛しい愛しいあなた。


全て残さずに私の中へ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

歪愛 村崎愁 @shumurasaki

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る