第10話
「はぁ〜…」
役所の事務所の一角で僕はため息をついていた。
今日の朝、娘に起こった出来事で頭がいっぱいなのだ。
「あの小説、どんな内容だっけな〜」
と、必死に思い出そうとする・・・腕組みをしたり、頭をかいたりしながら頭をフル回転させる。
大筋のストーリーは知っている、何せ若い時にやり込んだRPGゲームのストーリーだからだ。
しかし、細かい所までは思い出せない…
確か、砂の王国の姫が魔王に拐われて、数年後、子供が産まれるんだよな・・・
で、産まれた赤子の手には「紋章」の様なアザがあって・・・
その瞬間に、あることに気づいた。
「ゆめに刻まれた「紋章」は僕が勝手に想像したもんだ。でも待てよ、ゲームに出てくる勇者の証は全くの別物で王国の紋章とは違ったはず…」
何なのだ、あの出来事は?
僕が文系専攻だったから、こういう現象を知らないだけなのか?理系の人なら知っているのかも?
「確か、別の部署にはなるが、僕と同じ大卒の人間がいたな…そいつに聞いて見るか…?」
"その男"は地域振興課に配属されている。今は外出中とのこと。帰って来たら連絡が欲しいと伝言を頼んだ。
”その男”を待っている間に、あのRPGゲームの事を思い出していた・・・。
確かめようと思えば、あのゲームをするしかないな、今でも売ってるのか?オークションやフリマサイトで探してみるか・・・?
スマホで、ゲームの事を調べてみる。ん!このゲームリメイク版を開発している!しかもオープンワールドだと!発売は未定・・・。よくあることだ、発売時期になると延期とか・・・。でも、いいゲームを作って欲しいから延期は仕方ないか・・。
あのゲーム・・・懐かしいな。毎日夜遅くまでやったっけ?友達と攻略の情報共有やゲーム攻略本を持っている友達に借りたり、ダンジョン攻略の為に自前の地図を書いたり・・・。う~、なんだか無性にやりたくなってきた。
「イカンイカン、今はそれどころじゃない!」
両手で顔をパンパンと叩き気を引き締める。
夕方、そろそろ役所を閉める時間である。
"その男"はまだ帰って来ていない。
今日は諦めて帰ろうかと思ったら、ドタドタと走る靴音と共にやって来た男がいる。
「スミマセン、お待たせしちゃって、先輩!」
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