進みゆく街

ボウガ

第1話

 ある男が、スラムの老人に絡んでいる。イケイケで、いかにも半グレのような見た目。

「なんで機械改造しないんだあ?」

 今より進んだ未来で肉体の機械化が普通に行われる未来。どんな貧乏人にも、政府が機械化を無償で提供した。だがそれを拒むものもいたのだ。

「オメエは国から無性で提供されるものを拒んでいる!!そしてより厳しい労働を拒んでいるんだ!!」

 おじいさんを殴り始める男。

「そりゃ、提供をうけたらうけたで、文句をいわれるからじゃ」

「だれに」

「あんさんみたいな、やっかみでいちゃもんつけてくるやつだ」

「この!!」

 より一層怒り、なぐりつける男。


「お兄さん、その辺にしたらどうかな?」

 その背後からサラリーマン風の華奢な男が話しかける。

「あんだおめえ!!」

「その辺にしておいたほうがいいよ、きっと」

「うるせえ!!」

 振り払って殴り続ける男、そして男は老人の奇妙な言動に気づいた。

「……あんた……怖いものないのかい」

「??ああ」

「怖い者、あんたの後ろにいるよ」

 彼が振り返る、すると先ほどのサラリーマンのその後ろに、筋骨隆々な男たちがたっていた。サラリーマンがいう。

「キミは知らないと思うけど、僕らもスラム出身なんだ、仕事に苦労してね、君よりきっとあくどい商売していると思うよ、僕らのシマで、欲も好き勝手してくれたねえ」

 男は、そのマフィアたちに裏路地につれていかれ、身ぐるみはがされてぼろぼろにされた。すべてが終わると老人がマフィアたちにいった。

「すまないねえ」

「いいんだよ、おじいちゃん、お爺ちゃんのように病気持ちで体が弱い人は機械化の手術に耐えられないからね、こまったらまたいつでも電話をしてね」

 いつの時代にも、事情をわきまえず立場の弱い人間に不平をぶつけるものがいる。けれど彼らがもし一枚岩で、厚い人間関係を作っていたら、これはそんなIFのお話。

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進みゆく街 ボウガ @yumieimaru

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