第437話 皆の探索

 取り敢えず、安全確認を済ませたので、皆を喚び戻す。エアリー達がこっちに来たタイミングで、玉藻ちゃん達も帰ってきた。


『ふむ。無事なようじゃな』

「うん。何とか反動もなかったから。まぁ、森は破壊しちゃったけど……」

『五十メートル程抉れていますね』

「えっ……そんな深い? 他の人が来ないと良いなぁ……何かあるかもって思われるかもしれないし……」


 ゲーム内であんな跡を見たら、中に何かが隠されているかもしれないと勘違いする可能性がある。せっかくの探索型イベントなのに、ここで時間を使わせてしまうのは申し訳ないなと思ってしまう。


「まぁ、いいや。エアリー、この周辺に怪しい場所はある?」

『ここから感じるのは、山の中にある洞窟とこの山の奥にある湖くらいでしょうか。森の中と地面の下は、ラウネとソイルに調べて貰わないと詳しい事は分からないかと』

「だね。フェンリル、小さめの狼になって、周辺を捜索してくれる? なるべく人に見られないようにね。出て来るモンスターは倒しちゃって良いから」

『ああ、分かった』

『わっちも蜘蛛達を使って調べてみんす』

「うん。ありがとう」


 胡蝶さんが、子蜘蛛達を出して調査させる。セイちゃんには慣れてきたけど、胡蝶さんの子蜘蛛達が大量に出て来るのは、全く慣れない。

 後は、フラムとライをソイルとラウネと交代させる。そして、二人に改めて調べて貰う。


『地面の中は……何も……ないよ……』

『森の中も怪しい場所はないの』

「そっか。じゃあ、ラウネはレインと交代ね」

『うんなの』


 山の奥に湖があるというエアリーの話から、湖の中を調べた方が良いので、レインを喚び出す。


「近くに湖があるみらいなんだけど、レインは何か分かる?」

『うん。大きめの湖があるよ。山の向こう側の麓』

「じゃあ、山に面しているって事?」

『うん』


 山自体が高いので、私の感知範囲では感じ取る事は出来なかった。でも、本当に近くにあるみたい。


『こっちでも確認出来んした』


 胡蝶さんも湖を確認出来たみたい。蜘蛛のネットワークは、本当に凄い。


「それじゃあ、山を下りながら洞窟を調べつつ、湖に向かおうか」

『うむ。では、行くのじゃ』


 そう言って、玉藻ちゃんが尻尾で私を抱える。正直、若干疲れていたから有り難い。でも、それは玉藻ちゃんも同じはず。


「玉藻ちゃん、私自分で歩くよ?」

『大丈夫じゃ。妾は、まだ元気なくらいじゃからのう』


 玉藻ちゃんはそう言って笑うので、お言葉に甘えさせて貰うことにした。皆で山を下りながら、洞窟を調べて回る。採掘ポイントがいくつかあるのと、宝箱を三つも見つける事が出来た。でも、今回は血瓶は出ず、【魔剣】【適応】【睡眠】のスキルの書を手に入れた。【適応】はアカリにあげるとして、【魔剣】は【聖剣】の逆のスキルだと思うので、【暗黒魔法才能】が消される可能性もあるので、一旦取らないでおく。【睡眠】の方は取っても問題なさそうなので収得しておいた。


────────────────────


【睡眠】:睡眠中HPとMPの自然回復力が上昇する。控えでも効果を発揮する。


────────────────────


 正直、ゲーム内で睡眠をとる事自体がないので、あまり使う事がないスキルだ。このイベントでは睡眠をとった方が良いので、イベントの中だったら育てやすいかな。なので、洞窟のある場所が終わったタイミングで、玉藻ちゃんの尻尾の中で眠らせて貰った。正直、自然回復力は馬鹿みたいにあるから、特に意味はないのだけどね。

 ぐっすりと五時間くらい眠っていたらしく、時間帯が夕方近くになっていた。既に湖近くにあるセーフティーエリアにいて、玉藻ちゃんの尻尾の中で丸くなっていたみたい。周囲にいるのが、胡蝶さんだけなので、皆はそれぞれで動いているみたい。


『起きんしたか。調べた限りでは、湖の他に怪しい場所はありんせん』

「そうですか……じゃあ、湖の中を調べてみないと」

『それは、今紅葉とレインがやっておるのじゃ。そろそろ帰ってくるころだと思うのじゃ。それまでは、休んでいると良いぞ』

「は~い」


 玉藻ちゃんの尻尾に再び包まれながら待っていると、レインと紅葉さんが帰ってきた。紅葉さんがびしょびしょだったので、焚き火を作りつつ、フェンリルにもやった人力ドライヤーで服を乾かしていく。


『ありがとうございます』

「いえ、レインの面倒を見てくれてありがとうございます。それで、レイン、何かあった?」

『うん。結構奥まで続いてたよ。これがあった』


 そう言って、レインから血瓶を渡された。


「えっ!? 宝箱を開けられたの!?」

『うん。開けられた』


 私と似たような感じで、鍵を作って開けたって事かな。それでも結構危険な事をしたというのに変わりはない。


「罠があるかもしれないから、気を付けないと駄目だよ?」

『うん!』


 元気の良い返事をしているけど、ちゃんと分かっているのかな。まぁ、伝わっていると信じよう。レインから貰った血瓶は、天翼の血瓶という名前だった。そのまま蓋を開けようとして、この場に紅葉さんがいることを思い出し、ちらっと見て確認する。すると、紅葉さんも頷いてくれたので、許可を得たと判断し血を飲んだ。身体が軽くなるような清涼感のある血だった。まぁ、正確に言えば、清涼感のある不味い血なのだけど。


「何か、このイベントで沢山の血を飲んだ気がする……イベントが終わったら、スキルも確認してみないと。他に何かあった?」

『ううん。宝箱だけ』

『潜ってみましたが、モンスターもおらず、平穏な湖でした。レインさんのおっしゃる通り、宝箱のあった洞窟以外は何もありません』

「そっかぁ……それじゃあ、湖も越えて、さらに向こうに行ってみるかな。エアリー達は?」

『清と一緒にハクが起きるまでの間探索をしておるのじゃ。そちらもそろそろ帰ってくると思うのじゃ』


 それから十分くらい待っていると、エアリー達と一緒にフェンリルも帰ってきた。


「フェンリルも一緒にいたんだ」


 フェンリルの首を撫でてあげる。それでフェンリルが喜ぶ訳ではなく、私がもふりたいだけだ。


『ああ、一通り森の中を調べてきた。全体とはいかないがな。湖の更に奥に大きな割れ目があった。ここから歩いて二時間程の場所だ。それまでは森が続いている。金属の竜がいたが、そこまで危険ではないだろう』

「……それって、全身に銃が付いてる?」

『そうだな』


 絶対にヘビーアームドドラゴンだ。アイテム欄を見てみると、ヘビーアームドドラゴンの素材が入っているので、フェンリルが倒したみたい。それに他にも大量の素材が入っている。廃都市エリアで手に入る素材は、しばらくは困らないと思う。


「二時間か。エアリー達は何か見つけた?」

『森の中、地面の下には、何もありません。それが分かったくらいです』

「寧ろ、良い情報だよ。これで、フェンリルが見つけた割れ目に向かえるからね。それじゃあ、五時間くらい休憩にして、夜に出発しようか」


 皆の休憩時間も必要と考えて、もう五時間休む事にした。睡眠のレベル上げをしたいという事もあったけどね。フェンリルに寄り掛かりつつ、玉藻ちゃんの尻尾を掛け布団にして、また眠りにつく。

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