第414話 押し寄せてくる波
皆と談笑していると、十分の休憩時間が終わる。それと同時に、何が地面を揺らすような音が聞こえてきた。
「何の音?」
「何だろうね。また、スライムの津波かな?」
『違うみたいでありんす。どうやら、本当に津波のようでありんす』
「えっ!? 本当ですか!? レイン!」
『うん!』
周囲から流れ込んでくる水をレインが止める。おかげで、私達がいる場所は、水に飲まれず陸地のままになった。
「普通は、ビルの上とかに行くんじゃ……」
「まぁ、レインがいるなら止めて貰った方が良いかなって。どうせ、ビルに上がったら、向こうの有利に働くだろうしね。フラム、水を蒸発させられる?」
『この規模をか? 無理だな。一部を蒸発させる事は出来るが』
「オッケー。じゃあ、ライの方で行こう」
『……』こくり
ライが水に向かって、雷を落とし続ける。かなりの広範囲で落としているので、中にいるモンスター達はどんどんと感電死していた。
「海のモンスターが多いかな。これ海水か……海水?」
これまでのフェーズで出て来たモンスター達から、ただ海になっただけで済む訳がないと思った。海に現れる強力なモンスターと言えば、私は一体しか思い付かない。
『あっ、お姉さん。あの時のモンスターが来るよ』
「あ~、リヴァイアサンかぁ……」
【万能探知】にもリヴァイアサンの反応があった。相変わらずでかい。今はビルを避けて移動しているみたいだけど、戦闘になったら壊していくと思う。やっぱり、レインに水を止めて貰って正解だった。
「う~ん……どう戦うかな」
『相手はどのようなモンスターなのですか?』
紅葉さんが大鉈を担ぎながら訊く。
「大きな蛇みたいな竜です。水を操ってくるので、レインがいればどうにかなると思います」
『なるほど……では、まずは引っ張り出して陸地に揚げましょう。ハクちゃんなら、前に戦った際にもやっているかもしれませんが。陸に揚げてさえくだされば、私達も攻撃が出来ます』
「分かりました。じゃあ、引っ張り出してきます」
私が一人で神殺しを使うよりも、皆で叩いた方が早いのは確かだ。取り敢えず、水の中に入って泳いでいく。【海神のお守り】があるから、私は水の中で呼吸が出来る。なので、このまま囮になれば。リヴァイアサンを連れてくる事が出来るはずだ。
そう思っていると、私を見つけたリヴァイアサンが、私に向かってくる。さすがに、水のなかという事もあって、リヴァイアサンの動きは素早く、私が逃げ切れるものではなかった。
でも、私も勝算がなかったわけじゃない。口を大きく開けて、私を食べようとしてくる。その口に血で作った棒を噛ませる。つっかえ棒で噛み付けなくなったリヴァイアサンを血で縛り上げる。
水を操作して、水上と繋がるトンネルを作り、【熾天使翼】を使って全力で水上まで飛び出す。血を思いっきり引っ張って、リヴァイアサンを連れながら、レインが確保してくれている陸地へと向かっていく。ただ、思った以上にリヴァイアサンが暴れるので、血の拘束が長く保たない。陸地に連れて行くまでに解かれる可能性が高い。
でも、今この場でリヴァイアサンを引っ張る事が出来るのは、私だけじゃない。陸地まで連れてきたところで、ビルの屋上にいた胡蝶さんが次々に糸を出して、リヴァイアサンを掴む。ただ、その糸をリヴァイアサンは水を操って斬り裂いた。
それを見た胡蝶さんが、少し怒ったような表情になる。胡蝶さんは、結構プライドが高いから、こういう事があるとちょっとイラッとしてしまうみたい。
胡蝶さんがリヴァイアサンを睨み付けたかと思うと、その姿が変貌していった。着物の背中が破れて、内側から八つの足が出て来る。普段からある二つの目の他に小さな赤い眼が左右三つずつ開眼する。これは、高機動型戦闘アンドロイドとの戦いでは見せなかった姿だ。これが胡蝶さんの本気の一端って事かな。
変身した胡蝶さんが片手を空に掲げると、沈んでいないビルのあちらこちらから大量の糸が飛んでくる。どうやら、胡蝶さんの部下の蜘蛛達が待機していたみたいだ。
胡蝶さんは、その糸を巧みに操ってリヴァイアサンを縛り上げる。さっきよりも量が多いだけにしか見えないからか、リヴァイアサンは、同じように水を操って糸を切ろうとした。だけど、今回はそうはいかなかった。どれだけ切ろうとしても、一本も切れない。蜘蛛達が特殊な糸を出したというよりも、胡蝶さんが糸を支配下に置いて、極限まで強化したような感じがする。私が支配系のスキルを持っているからそう感じるのかな。
リヴァイアサンは、そのまま胡蝶さんの糸によって、陸地へと揚げられた。まだ身体の半分以上が水の中にあるから、そのまま水の中に戻ろうとしていたけど、胡蝶さんが強固に拘束しているので、陸地に出た顔周辺は、中々戻す事が出来なかった。
そこに、鬼の力を解放したであろう紅葉さんが高く跳び上がって、大鉈を叩きつける。その衝撃でリヴァイアサンの首が半分程地面に埋まった。その埋まった瞬間に胡蝶さんが更なる拘束を追加する。リヴァイアサンは、完全に陸地に拘束された。
遠くの方でビルが倒壊する音が聞こえる。リヴァイアサンの尻尾が暴れているのだ。これ以上暴れられると、こっちにも被害が出る可能性もある。私は、リヴァイアサンの身体に飛びついて、神殺しを突き刺しながら吸血する。神殺しから血を噴き出させて、内側からの攻撃もする。こういう相手なら、ただ滅多斬りにするよりも、こっちの方がダメージを稼げる。
途中、血からピリッとした味がするなと思ったら、清ちゃんがリヴァイアサンに噛み付いて毒を注入していた。毒状態になっても、そうそう死ぬ事はないから、特に気にせず吸血を続ける。
さらに、皆も次々に攻撃をしていくので、どんどんとダメージを蓄積していき、リヴァイアサンが倒れた。やっぱり、皆と一緒に戦った方が簡単に倒せた。リヴァイアサンを倒したけど、【嫉妬悪魔】と【嫉妬の大罪】を手に入れたという表示もなく、リヴァイアサン自身もすぐにポリゴンに変わった。クエストを経ていないので、収得条件を満たせていないって感じかな。
でも、吸血した状態で倒す事が出来たので、リヴァイアサンからスキルを獲る事が出来た。リヴァイアサンから得られたスキルは、【根源(水)】だった。
────────────────────
【根源(水)】:水系統のスキルの効果が上昇する。控えでも効果を発揮する。
────────────────────
また根源を手に入れる事が出来た。正直、殲滅戦のフェーズを全部クリア出来なくても、私には十分過ぎるくらいの収穫があった。ただ、さすがに、私だけ収穫があるのは申し訳ないので、最後まで全力で戦う。アカリのために素材を集めたいしね。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます