第412話 成長の実感と大食い大会
第六フェーズが始まる。【万能探知】に引っ掛かったモンスターは、計十七体。でも、その構成が異常だった。ヘビーアームドドラゴン十体、風神、雷神、高機動型戦闘アンドロイド五体という構成だ。
「エアリーとライは、私と来て! 風神と雷神をやる! 皆は他をお願い!」
厄介さで言えば、ヘビーアームドドラゴンもかなり厄介だけど、風神雷神は、その比にならないくらい厄介だ。完全支配系スキルになったエアリーとライがいれば、厄介な攻撃を防いで攻撃出来るはずだ。
二人と一緒に風神雷神の元に向かう。雷神が、こちらに気付いて稲妻を放ってくるけど、それはライが逸らして近くのビルに当てた。風神も近づいてくる私を牽制するために、風袋から暴風を放つ。それは、エアリーが上方に逸らした。前に戦闘した時の事を覚えているからか、二人とも慣れたように対処してくれている。
おかげで、私も楽に風神に近づく事が出来た。その身体に神殺しを突き刺して、首に噛み付く。そして、【飢血】で溜め込んだ血液を解放して、風神の内側から血液で串刺しにする。全身から血液が飛び出した風神は、突き刺し、吸血、そして血液の解放。この三段階攻撃で風神のHPは残り一割まで削れる。後は、【神炎】を使って内側から燃やし尽くし倒す。
吸血をしながら倒したので、風神からスキルを手に入れた。それは、まさかの【根源(風)】だった。
根源に関しては、吸血でも獲れるみたいだ。正直色々と見たい事はあるけど、それは後回しにして雷神の方に向かう。雷神は、背中の太鼓を叩いて、空から無数の雷を降り注いで、私を攻撃してくる。その雷を、ライが束ねて受け止めた。
自身の攻撃が意味を成さないことに気付いたのか、雷神はそのまま逃げようとする。それに対して、エアリーが風の刃で、雷神が乗っている雲を斬り裂いた。空を飛べなくなった雷神は、そのまま落ちていく。その途中で神殺しの血を解放して血の斬撃として飛ばす。HPの三割を削って、そのまま血を操り雷神を縛り上げつつ、私の方に引っ張る。神殺しを突き刺して吸血し、雷神も倒した。この間、雷神による攻撃は、ライが全て防いでくれていた。
手に入れたスキルは、【根源(雷)】。まさか、イベントで根源を二つも手に入れる事になるとは思わなかった。次にセラフさんに会った時に驚かれそうだ。そういえば、根源の紙も持っているから、最低でももう一つは簡単に手に入る事になる。これは嬉しい反面、成長する事のないスキルなので、SPを稼げないという点で複雑な気持ちになる。
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【根源(風)】:風系統のスキルの効果が上昇する。控えでも効果を発揮する。
【根源(雷)】:雷系統のスキルの効果が上昇する。控えでも効果を発揮する。
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一番厄介な風神雷神を倒したところで、ウィンドウが出て来て、休憩時間三分が挟まるという表示が出た。どうやら、他のモンスターも既に倒しきったみたい。
「アカリ、大丈夫だった?」
「うん。皆が頑張ってくれたから」
紅葉さんによって叩き潰されたのが三体と植物が内部に浸透して内側から破壊されたのが二体、地面から生えた大量の石の杭で身体を貫かれたのが一体、フラムによって融かされたのが三体、恐らくメアとマシロの虚無によって身体の大部分を消失させられて倒れたのが一体で全て倒されている。植物については、エレクに乗ったアカリが突っ込んで植物の種を蒔き、ラウネが成長させて生み出したものらしい。かなり危険な事だったけど、エレクが上手く避けてくれたみたいだ。
高機動型戦闘アンドロイドは、清ちゃんの蛇が全部食べていた。胡蝶さんが清ちゃんの蛇の口に付いた糸を取っている事から、胡蝶さんが捕まえた事が分かる。というか、清ちゃんの蛇が強すぎる。
『うむ! 妾のやることがないのう!』
玉藻ちゃんは何も出来なかったらしい。まぁ、玉藻ちゃんよりも早く倒せる皆がいるから仕方ないのかな。玉藻ちゃんの活躍の機会は訪れるのだろうか。
「本格的に吸血する余裕がなくなるかな」
「休憩時間を挟むって事は、次の戦いへの準備時間って事だもんね。ハクちゃんの武器は大丈夫?」
「大丈夫。基本的に【不壊】が付いてる神殺しを使ってるから。厳しくなったら、【死神鎌】を使うけどね」
神殺しは基礎的な攻撃力が高いので、重宝するけど、早期決着を考えるなら【死神鎌】を使う方が良い。神殺しと違って、全ての対象への即死効果を持っているから。まぁ、HPを二割まで減らさないといけないけど。
三分間の休憩時間が終わり、第七フェーズが始まる。その瞬間に、玉藻ちゃんが尻尾でアカリ達を一箇所に寄せた。
『全員集まるのじゃ! ほれ! スノウもニクスも来るのじゃ!』
空を飛んでいたスノウとニクスも地上に下りて集まってくる。私だけは、別の尻尾で一人確保されたままだった。
『不味いのう。あの地域のモンスターがいるのじゃ。ハクは、ゴーグルを付けい。胡蝶、視界を塞いでおくのじゃ。あれを見たら、全員が錯乱してしまう』
『わかりんした』
どうやら黄昏エリアのモンスターが出て来たらしい。玉藻ちゃんが焦るわけだ。狂気状態になったら、戦いどころじゃなくなるだろうしね。
玉藻ちゃんは、九尾狐に変身すると、私を上に乗せた。
「皆は、ここで胡蝶さんの指示に従って。絶対に外に飛び出しちゃ駄目だよ」
皆にそう言ってから、玉藻ちゃんと一緒に飛び出す。メアとマシロは、多少の耐性があるけど、一緒に連れては行かない。あそこまでモンスターが来た時に備えて、皆を守れる人がいないといけないからね。
「玉藻ちゃん、どうやって戦いますか?」
『うむ。走りながら、奴等を稲荷寿司に変えていく。ハクは、ひたすら食べるのじゃ!』
「あっ……はい」
壮絶な戦いが始まる。全力で走る玉藻ちゃんは、エレクよりは遅いものの物凄い速度で進んでいった。そして、次々に黄昏エリアのモンスターを稲荷寿司に変えて私の元に投げてくる。それをひらすら食べていく。【暴飲暴食】のおかげで、するすると食べられるものの中々にキツいものがある。来世の分まで稲荷寿司を食べたところで、ようやく第七フェーズが終わった。
「ふぅ……美味しくてもキツい……」
『うむ。妾も、一度にその数は食べた事がないのじゃ。さすがは、ハクじゃのう』
「これで褒められても絶妙に嬉しくないですよ……」
『今度する時は、味変を考えてみるかのう』
「お願いします」
一人大食い大会を終えて、一度皆の元に戻る。ここから黄昏エリアのモンスターが交ざるとなると、かなり厳しい戦いになるけど、幸いな事にそうはならなかった。
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