第408話 溶岩エリアのボス

 ヘスティアさんを迎えた後は、フラム、ニクスと一緒に火山エリアの探索をしていった。フラムの力は手に入れたから、マッピングが主になる。大体のマッピングが終わったところで、一旦ログアウトする。その後、夜に再びログインした時にカティさんに会ったので、【魔力弓】について聞いておいた。

 矢に魔力を通したり纏わせたりして威力の上昇を図れる武器らしい。専用の矢として【矢生成】で魔力から矢を作れる。その矢を使うと、さらに威力の上昇が見込める。魔力で出来ているから、魔力を通しやすいのかもと言っていた。ただ、結局のところ普通の弓では使えないスキルのようで、専用の弓を用意しないといけないらしい。血で再現するのは、ちょっと無理があるという事が分かった。

 そして、翌日。私は再び溶岩エリアに来ていた。取り敢えず、モンスターから得られるスキルはないので、普通に倒して行く。その時に使うのは、神殺しだ。ちゃんと使い慣れておきたいからね。血液で強化されているみたいで、基本的に一撃一撃が重い。ただ、まだ本領を発揮出来ていない。PvPか竜とかと戦ってみないと分からないかな。

 ただ、結構使いやすい。人斬りや竜狩刀だった時よりも手に馴染む感覚がある。私専用に進化したからなのかな。

 溶岩エリアの探索の方は、順調に進んでいる。溶岩湖の中の探索は無理があるという事でしていない。視界を溶岩の中に移してみたけど、それでも溶岩の中を調べる事が出来なかったからだ。視界が潰されている以上、探索のしようがない。フラムに連れて行ってもらったとしても、私自身が何も分からなければ意味がないしね。

 その代わり、ニクスが溶岩湖に飛び込んで鉱石を拾ってくれた。溶岩の中に入っても融けない鉱石だから、一体何なのだろうと思ったら、アダマンタイトというゲームでは有名な鉱石だった。最硬の鉱石で有名だった気がする。アカリのためにもある程度数を用意しないとなので、溶岩湖での採取をニクスに頼んだ。最終的には、私から生成出来るようになるだろうから、そこまでの量は必要ないと思うけど。

 そんなこんなで溶岩エリアの探索は、割と早めに終わった。調べる場所が少なかったというのが一番の要因かな。大きな収穫は、フラムの進化とヘスティアさんを迎え入れる事が出来た事くらいかな。

 溶岩エリアの探索を終えたところで、フラム、ニクスを連れてボスエリアへと移動する。溶岩エリアの次は、その向こうにある焦熱エリアの探索をしたいからね。

 溶岩エリアのボスエリアは、大きな溶岩湖だった。所々に足場があるけど、ほとんどが溶岩湖で満たされている。

 そして、ボスは溶岩湖の中にいる。


「面倒くさい相手っぽいね」

『引っ張り出すか? 多少だが、火を持っているみたいだ。拘束出来る程の火はないから、溶岩で無理矢理縛り付ける事になるが』

「それでオッケー。ニクス、物理的に止められる?」

『キュイ!』

「お願いね」


 フラムが溶岩湖からボスモンスターを引っ張り出した。ボスモンスターの名前は、溶岩の鉄鋼魚。頭や鱗が金属で出来ている巨大魚だ。溶岩に入っているからか、金属部分は赤熱している。

 フラムによって溶岩湖から顔を出す事になった溶岩の鉄鋼魚に【矮小化】を解いたニクスが飛び掛かり、その身体に爪を立てて持ち上げた。そこに飛びついて、念のために神殺しを突き刺して、身体を固定する。そのまま噛み付くと、普通に血が飲めた。金属で出来ているのは表面だけで、ちゃんと生き物らしい。熱い血という訳でも無く、普通の血だ。こういう血は結構久しぶりかもしれない。不味すぎて吐きたい。

 我慢しつつ飲んでいくと、溶岩の鉄鋼魚が暴れ出す。でも、ニクスとフラムによって、完全に拘束されているので、溶岩湖に戻ることは出来ずに倒す事が出来た。手に入れたスキルは、【溶岩遊泳】というものだった。


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【溶岩遊泳】;溶岩に入った時、防具やアクセサリーの耐久値が減らなくなる。また、溶岩による熱ダメージを大きく軽減する。控えでも効果を発揮する。


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 まさかの溶岩に入っても問題がなくなるスキルが手に入った。耐久値が減らなくなるのは嬉しいけど、溶岩エリアから焦熱エリアに探索の場を移すから意味がないかなと思いつつ、次のエリアに転移する。

 焦熱エリアに来た私は、真っ先にその熱気に驚いた。


「うわっ……あっつ……」


 溶岩エリアや火山エリアよりも遙かに熱い。地面そのものが発火しているのではと思うくらいだ。


「フラム。ここら辺に熱源ってある?」

『至る所にあるぞ。足元の地面も熱を発してる。それに、溶岩もあるみたいだな。後は、地面から火が噴き出している場所もある』

「……何か地獄みたいな場所だね。まぁ、いいや。取り敢えず、今日は帰ろう。アカリにお土産も渡したいし」


 焦熱エリアへ転移出来るようにした私は、火山エリアに戻って、ギルドエリアに帰ってきた。すると、ヘスティアさんがレインとヒョウカと一緒に畑を歩いていた。レインとヒョウカも楽しそうにしているので、ヘスティアさんと打ち解けているみたい。仲良くなっているのは良い事だ。

 そんな三人を尻目に、私はアカリの作業部屋に行く。でも、アカリはそこに居なかった。次に実験室にも行ってみたけど、そこにも居ない。となると、アカリが居る場所は、どこかしらのエリアかアカリエという事になる。最近攻略もしたいって言っていたし、エリアに行っている可能性は結構あるけど、アカリエにいる事に賭けて向かってみる。すると、アカリが受付で接客をしているところだった。

 割と親しそうに話しているけど、私の知らない人だ。常連さんか何かかな。若干胸がもやもやするけど、お客さんなら無下には出来ないから仕方ない。それに、アカリにはアカリの付き合いがあるしね。現実でだって、光の方が友達は多いし。まぁ、私が少なすぎるだけなのかもしれないけど。

 アカリに見つからないように、アカリエの横でしゃがんで待つ。アカリの接客が終わるまで五分くらい掛かった。話が盛り上がったのかな。お客さんが出て少ししてからアカリエに入る。


「いらっしゃいませ……って、ハクちゃん。どうしたの?」


 アカリは、私が態々アカリエに来た事に驚いていた。最近は、ギルドエリアでばっかり会っていたから当然かな。


「アカリにお土産があって探してたんだ」

「そうなの? じゃあ、工房に行こうか」


 アカリと一緒に奥の工房に行く。ギルドエリアに作業部屋を置いたとはいえ、こっちでも軽い作業はするみたいで、前に来たときのままになっていた。そこにあるソファに二人で並んで座る。軽くアカリに寄り掛かると、アカリも私に体重を預けてきた。


「どうしたの?」

「別に。これがお土産」


 アカリにアダマンタイトを見せる。すると、アカリは身体を大きく震わせながら驚いた。その拍子に、私の拠り所も失い、アカリの膝に頭を乗せる事になる。まぁ、この体勢でも良いか。


「溶岩エリアの溶岩湖の中にあったみたいで、ニクスが集めてくれたんだ」

「溶岩湖の中?」

「うん。つまり、溶岩でも融ける事のない鉱石って事だね」

「なるほどね……これは加工が大変そう」

「まだ要らない? 頑張れば【鉱石創造】で出て来ると思うけど」

「ううん。今の炉なら扱えるから、あると嬉しいかな。ヘスティア様に、またお礼を言わないと」

「ん? あっ、炉の火が【神炎】になってるから加工が出来るのか」


 ヘスティアさんが来た事で、炉の火は常に【神炎】になっているらしい。実際に確かめたわけじゃないけど、アカリがお礼を言わないとと言っているから、そうなっているのだと思う。


「うん。ちょっと調整をミスしたら、素材が台無しになっちゃうけど、見極めが出来るようになれば作業効率が上がるから、結構良いんだ。ハクちゃんのアクセサリーとか新調しようか。ハクちゃんが取ってきた素材が沢山溜まってるし」

「お願いしようかな」


 アクセサリーを外して、アカリに渡す。


「霊峰のブレスレットも改良するよ」

「えっ!? 出来るの?」

「うん。最近出来るようになったんだ」

「そうなんだ。じゃあ、お願い」


 残ったのは、師匠を喚び出せる妖命霊鬼の指輪だけだ。


「うん。じゃあ、次の土曜日のイベント前に渡すね」

「うん。ありがとう」


 その後、少しの間アカリに膝枕をして貰って過ごした。我慢出来た分、少しくらい甘えても良いよね。

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