第403話 神器
親方に言われた通り、三日後に刀を取りに向かった。バイトを入れてなかったので、ちゃんと取りに行く事が出来た。
「親方いらっしゃいますか?」
扉をノックして呼び掛けると、親方が出て来た。
「おう。来たな。上がりな」
「お邪魔します」
前と同じく一番奥の鍛冶場に案内された。そして、そこにある机の上には、一本の刀が置かれていた。その刀身は真っ赤だった。
「真っ赤な刃ですね」
「ああ、こいつらが勝手に変化した。過去の記憶か、お前が使っていた時の記憶か。どちらにせよ、血に対する記憶が強かったようだな」
「じゃあ、この刃は血だけで出来ているんですか?」
「いや、混ざっているという方が正しいな。基本的には金属で出来ている」
「なるほど」
軽く説明を聞きながら、刀の追加効果を見る。
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神器・神殺し:神も殺す事が出来る刀。【全能超強化】【万象斬】【致命斬首】【人特効】【竜特効】【神特効】【悪魔特効】【飢血】【神気】【不壊】
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何かヤバいものになっていた。
「これ……」
「ああ、本来の力は確かに解放したが、そこから大きく進化を遂げた」
「神器なのに、神を殺すんですか?」
「本当にな。まぁ、良くある事ではあるが」
「良くあるんですね……」
神器って、神聖なものとか神様から与えられたものってイメージがあるから、神様が自分を殺すものを与えたみたいな感じなっていそう。まぁ、これは親方が作ってくれたものだから、神様から与えられたものじゃないけど。
「まぁ、大体はそのままの意味だ。【万象斬】は、全てを斬る事が出来る。【致命斬首】は、人の首を刎ねた時に即死させる。特効系は、その種族に対するダメージが大きくなる。【神特効】に関しては、天使、精霊、神霊にも同様の効果を与える事になる。【神気】は、そのまま神気を帯びるというもの。【不壊】は決して壊れないというものだ。一番厄介なのは、【飢血】でな。これは、装備した対象と斬った対象から血を吸収し、吸収した分能力を上昇させるというものだ。装備している間は、常に血を抜かれる事になる。これが、人斬りと竜狩刀の本来の力……それがお前専用に進化したものだ」
「本来の力が、私専用に進化ですか?」
「ああ、人斬りと竜狩刀は、それぞれ人と竜を斬れば斬る程、その切れ味が上昇していく妖刀だ。お前が使用する前であれば、それぞれの能力がそのまま発現するだけで終わっただろう。だが、お前が使った事によって、二本とも新しい経験をしていった。お前は、今までにどれだけの血を吸ってきたか覚えているか?」
「いえ、数え切れない程としか言えません」
【始祖の吸血鬼】になって、二分の一の確率でスキルを獲れるようになり、吸血の回数は減ってきていたが、その前、特に【吸血】時代は試行回数を増やすために、かなりの回数吸血していた。もうその時点で、何回かなんて数え切れないわけだから、今となっては何も分からない。
「そのお前の経験も学んだんだろうな。こいつらは、お前に相応しい武器になろうとした。その結果、【飢血】という力に至ったわけだ」
「そうなんですね」
吸血鬼である私が使用した事で、吸血鬼が使う刀として生まれ変わったみたいな感じなのかな。師匠や永正さんだけじゃなくて、私も主として認められていたみたい。刀にそんな感情があるのかは分からないけど。
取り敢えず、神殺しを手に取ってみると、一気に血が吸い取られていく感覚がする。私の血液は無限にあるから、いくら吸われても問題ないけど、全く止まる気配がない。
「親方、この神殺し……」
「ああ、血を吸う速度は異常だ。俺も死にかけた」
さらっととんでもない事を言った。でも、実際、普通の人が持ったら、十秒も保たないと思う。
「というか、止まらないのですが……」
「無限に吸うだろうな。吸い取った血を使った攻撃も出来るだろう。そこら辺は、自分で試行錯誤してみると良い。俺も調べたいところだったが、持つ事が出来ないからな」
「なるほど。分かりました」
神殺しを血の中に仕舞う。血の中に入れていても、神殺しの【飢血】は止まらない。血の中にあるから仕方ないのかな。私としては困る事はないから良いのだけど。
「そういや、武器はこれしかないのか?」
「いえ、この二本もあります」
白百合と黒百合を取り出して見せる。親方は、ジッと二本を見る。
「ふむ……腕の良い職人が作ったな。魂が込められている。だが、まだ神器に至るには若いな。そっちの防具も同じだ。込められているのは、愛情に近いものに感じるが、良い職人が作っているな」
「そんな事まで分かるんですか?」
「何となくだがな」
愛情とかそういうものを感知出来るって、一体どうやって調べているのだろう。アカリが愛情を込めているのは当たり前だけど、それは私が恋人だから分かるってだけだし。まぁ、そんなゲームシステムを気にしても仕方ないか。
「その武器と防具、後はアクセサリーだな。それらは、作った職人が神器にする方が良いだろう」
「えっ、親方じゃなくても、神器にする事は出来るんですか?」
「当たり前だ。神器にする事自体は、極めた職人なら出来る。問題は、どれだけ神器としての力を表に引き出せるかだ。俺は大抵のものなら最大限まで引き出せる。今回は、それ以上になったがな。その武器と防具に関しては、俺よりも作った本人が適任だと感じる。まぁ、俺の感覚ってだけだから、本当に引き出せるかは分からんがな」
「へぇ~」
アカリでも神器は作り出せるみたい。多分、かなり努力しないと出来ないだろうけど、アカリなら、その努力は出来るだろう。それなら、その時まで楽しみにしておこう。
「これから先、ダンジョンやそこら辺でボロボロの武器を見つけたら、ここに持って来い。本来の姿に戻してやる。運が良ければ、神器に至るものもあるかもな」
「分かりました。その時はお願いします」
神器の隠れ里は、そこまでの頻度で来る事はなさそうだけど、割と重要そうな場所だった。何かあれば、親方を頼らせて貰おう。神殺しを受け取ったので、親方に頭を下げてから、神器の隠れ里を後にした。そして、そのままの足で刀刃の隠れ里に転移する。すると、師匠が温泉の方から、家に戻ってくるところだった。
「あら、どうかしたの?」
「刀が完成したので、師匠にも見せておいた方が良いかなと思いまして」
「律儀な子ね。気にしなくて良いって言ったのに。それで、どんな刀になったの?」
「これでです」
血の中から神殺しを取り出す。師匠はジッと神殺しを見る。
「神殺しって名前になって、色々な種族への特効を持つようになりました。それと、人斬りと竜狩刀の本来の力が合わさって、私専用に進化したみたいで、血を無限に吸収するようになりました。なので、師匠も触らない方が良いと思います」
「へぇ~、綺麗な刀身ね。それにしても神殺しね……神器になっても物騒な名前は変わらないのね」
「私も思いました」
「でも、良いじゃない。これなら、あなたを守ってくれそうだわ」
師匠はそう言って、頭を撫でて来る。本当に私の心配だけをしてくれている。ただ、さりげなく生気を取っていくのはどうかと思う。神殺しに血を取られていると言っても、吸い取る量は一定なので、身体から何か抜けていく感覚が増えれば気が付く。
「今日は、稽古をしていく?」
「あっ、いえ、今日はもう寝ます。明日も早いので」
「そう。またいらっしゃい」
「はい!」
今日は、これでログアウトする。神殺しの性能を確かめるのは、次の土曜日とかになるかな。
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