第371話 可哀想な死神

 早速部屋の中を調べて行く。机の上には、沢山の紙が置かれている。それらを軽く読んでみる。内容的には、日記みたいだった。


「墓守の日記か」


 日記を簡単にするとこんな感じで書いてあった。


『墓に眠っているのは、かつての貴族が多いため、中にお宝が入っている事が多い。だから、墓荒らしが多くなる。その墓荒らしに対抗するために、墓守達も対応に追われて、憔悴する人が続出した。だから、我々無しでも墓を守れるように侵入者を追い払う装置を作ることにした』

『失敗した。我々が作り出した撃退用魔力波装置は、この墓地に狂気を満ちさせた。そのせいで墓守は墓地に入る者を全て襲うバーサ-カーとなった。私ももう正気を保っていられない。これを読んでいる者がいるのなら、早くここから離れろ。弱い者は飲み込まれるぞ』


 墓守が問答無用で襲い掛かってきたのは、この装置のせいらしい。装置がどこにあるか分からないから停止する事は無理そうかな。まぁ、このエリアの設定が分かった。こういうフレーバー要素も割と面白い。


「他には何かあるかな?」

『ここにある石が私の感じていた光みたい』


 マシロのところに行くと、仄かに光る石があった。名前は聖晶石というものらしい。


「どこかに採掘出来る場所はあるかな?」

『ここじゃない?』


 メアが指さすところを見ると、本当に採掘ポイントがあった。エアリーと交代でソイルを喚び、一気に採掘して貰う。進化したソイルの採掘速度は非常に早く、大量の聖晶石と他にも沢山の新しい鉱石や宝石などが出て来た。


「ありがとう、ソイル」

『うん……』


 十分な量の採掘が出来たので、ソイルを労ってあげてから、再びエアリーと交代する。


「それじゃあ、探索に戻ろうか」


 結局、ここにはフレーバーと採掘ポイント以上のものはないらしいので、墓地エリアの探索に戻る。モンスターから新しく得られるスキルはないので、皆に倒して貰いながら何かないか探していく。基本的に何もないので、本当に墓荒らしをするのが正解なのかもしれない。私にその気は無いけど。

 そんな探索の中で、一件の家を見つけた。小さな小屋だから、墓守の待機場所とかなのかな。その中に入ってみると、かなり荒らされていた。


『ボロボロ♪』

「だね。エアリー、地下室とかはない?」

『ないですね。ただの小屋のようです』

「そっか。マシロ、全体を照らしてくれる?」

『ええ』


 マシロが小屋全体を照らしてくれるので、小屋の中を隈無く調べる事が出来る。本系のものはなく、何かしらの情報に繋がりそうなものはない。ただ、小屋の壁に大槌が掛けられているので、墓守の家という事は分かる。

 何もないので、このまま探索を続けていき、ボスエリアを発見する事が出来た。マッピングも順調で半分くらい出来ているから、先にボスエリアを突破して、次のエリアへの転移を開けておくのもありかもしれない。

 ボスエリアへと転移すると、周囲を円形状にお墓が囲んでいる場所に来た。その中央にも一基のお墓が置いてあり、その上に大きな鎌を持った死神が浮いていた。名前は魂狩りの死神。魂狩りの死神の鎌には、黒い靄みたいなものが纏わり付いていた。


『えい♪』


 可愛らしいメアの声と共に魂狩りの死神が崩れ落ちた。


『身体の大部分が闇で出来てるから、簡単に拘束出来るね♪』

『相手の攻撃は、私が無効化しているから、姉様は食べちゃって良いわよ』

「ありがとう。エアリー、二人をお願いね」

『はい』


 エアリーに二人をお願いして、魂狩りの死神に吸血する。メアの言う通り身体の大部分が闇のようで、どんどんと体積が減っていき鎌を残して全てを吸い取った。

 魂狩りの死神からは【死神鎌】を手に入れた。


────────────────────


【死神鎌】:大鎌使用時MPを大きく消費して、一撃の威力を大きく上昇させる事が出来る。攻撃した対象の残りHPが残り二割の時、対象を即死させる。


────────────────────


 かなり強力なスキルだった。吸血で得られるスキルが無くなったら、基本的に倒すだけなので、そういう時に役に立つかな。まぁ、基本は一緒に動いている皆が倒しちゃうのだけどね。

 これで現状行けるエリアの全てのボスを倒す事が出来た。後はダンジョンの攻略とかが残っているかな。ただ、その前にSP問題を解消しないといけないので、レベル上げが先になる。まぁ、さらにその前に墓地エリアを隅々まで探索するのが先だけどね。


「それじゃあ、墓地エリアに戻って探索するよ」

『うん♪』

『ええ』

『はい』


 皆で墓地エリアを探索していったけど、結局皆の進化に繋がる力や街、宝物などは発見出来なかった。氷点下エリアもそうだけど、毎回私に都合良く何かが見つかるとは限らないし、次のエリアが追加されるって分かっているから、そこまで焦る必要はない。

 ちょっとだけ時間が余ったので、ギルドエリアでアカリのための素材を生み出していく事にする。アカリがいたら、アカリの作業部屋でやろうと思って作業部屋を覗くとアカリとメアリーが作業しているところだった。


「そっちの作業が終わったら、布の量産をお願いね」

『かしこまりました』


 メアリーが素材の量産をして、アカリが装備を作るって形になっているみたい。


『ハクお嬢様。おかえりなさいませ』


 扉の隙間から見ていたら、作業が一区切りついたメアリーが、こっちを向いて挨拶した。もしかしたら、ここに来た時点でバレていたのかもしれない。バレてしまったのなら仕方ないので、中に入る。


「ただいま」

「おかえり、ハクちゃん。そろそろログアウトする時間じゃない?」

「うん。ちょっと時間があるから、素材でも出そうかなって」

「そうなんだ。ありがとう」


 笑顔でそう言ってくれるアカリが可愛くて、思わず抱きしめたくなったけど、今は作業中なので我慢する。アカリの作業部屋でアカリのための素材を出し続けた。

 それから一週間と少しが過ぎていった。基本的にやる事は氷点下エリアでのレベル上げのみ。様々なスキルのレベル上げをひたすらにやっていった。まぁ、学校のテストがあったから、若干時間は削られたけど、テスト自体は問題なく終わったから良しとする。

 そして、学校も終わり冬休みが始まる。つまり、かー姉達との旅行がやって来る。

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